23話 お盆を迎えるに、あたっての注意
祖母は、人の業と神の加護が重く圧し掛か《のしかか》るような家を守っていた。
それは、我を贄のように使う家であったが、祖母は我の命だけは守ろうとしてくれたと信じている。
お盆を迎える時は、気と身が引き締まる。
祖母に言われていた事。
「お盆の初日に人を恨んではいけない」
ご先祖様が聞いてしまい、恨んだ人の守護霊に告げに行くのだそうだ。
お前が守っている人間は守るに値しない。
守って生きながらえることにより、ますますの人からの恨みを受け、家や子孫に災厄をもたらすだろう。
と。
だからお盆の時期は、人の念が早く届いて、結果をも出してしまうんだよ。
やってはいけない時間と、やり方と、期間を教えてくれた。
ソレを聞いたのは9歳の頃だが…
疑問に思うのは、本当に止めるために言ったのかしら?
祖母は、厳しくキツク、激しい人で、分かり難い優しさも持ち合わせていた。
そして、精神の世界も現実の世界も、バランス良く利用していた人間である。
清濁濁を持つ人だったので、穿った見方をしてしまう。
祖母は実は、魂に染みをつけない人の呪い方を教たのではないかと。
だから、お盆の間は心が荒れないようにするのだ。
誰も、一応、死んでほしくはないからね。
いや、本当は殺したいのだ。
だからこそ、この日は読書がはかどるのであった。
憎み過ぎた夜に、鏡を見たら、普通の自分の顔だった。
それが、妙に絶望を感じさせた。




