19話 夢は夢でしかないけれど
それは、起きてしまえば「夢」であり、曖昧なものであるが、見ている時は現実なのだ。
遅い時間に遊びから戻る。
マンションの前の自転車置き場に、乗ってきた自転車を置いて建物に入ろうとした。
入り口横では、1階の飲食店のオヤジだろうか?
後ろを向いて掃き掃除をしている。
「こんばんわ~」
くらい言って通り過ぎる。
その時ツン。とシャツの後ろを引っ張られて、振り返ると小さな子供。5、6歳くらいかな?
半そでにカーゴの膝丈のズボンの男の子が泣いていた。
「どうしたの?ひとりなのか?」
しゃがんで、子供と顔を合わそうとするが、手で目をこすって泣きじゃるまま。
見ると裸足で、膝下から泥だらけで、腕もTシャツも泥が所々こびり付いている。
腕や手の泥は、白く乾いている。
この辺りに泥んこ遊びが出来るような場所はない。どこで汚したんだろう。
とりあえず、部屋に入れてお風呂に入らせようか。
着替えは甚兵衛がある。
それから警察に電話して、指示を仰ぐのが、今のコノ子にとっては良いはず。
お腹も空いているかも。
綺麗になって、ココアでも飲んだら落ち着くだろう。
そう決めてその子に言う
「じゃあ・・・」
(じゃあ、おばちゃんのウチで少し休もうか)って言おうとした瞬間、
「ダメだあああああああっっっっ!!!」
後ろを向いて掃き掃除をしていた爺さんが、(存在を忘れていた)イキナリ振り向いて顔を我の真ん前までろくろ首のように伸ばして叫ぶ。
!!!!!(飛び散る汗)
超、心臓バクバクで夜の自分の寝床で飛び起きた。
自分の部屋である。
夢である。
しかし、至近距離で怒鳴られた怖さが残って動悸が治まらない。
もしかしたら、ヤバかったのかも知れない。
もしかしたら、爺さんが助けてくれたのかも知れない。
でもさ、今のダメージは爺さんのです。
ああ・・・心臓に悪い。
昼頃に起き出した相方に話した。
「ふぅ~ん。今日そんな夢見るのはヤバかったんじゃない?」
そういえば8月の盆ですね。
夢は夢でしかないけれど、とりあえず爺さんに感謝
加えてお願い。
「次はもっとソフトに」
だって、左斜め前方2m付近から首だけが我の顔面の直前まで来たんだぜ。
泥だらけで泣きじゃくる子供を家に上げていたら、別の物語があったかもしれない。
でも、お盆の時期に泣いている子供は、悪霊でなくても面倒な事になったかも知れない。
そう、考えると、止めてくれた爺さんに感謝しなければならないのだが、あの恐怖を思うと、素直にありがたいと思えない。