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12話 飢えた影

関東の少し田舎に住んでいた時の事。

なんで、あの頃の若者は皆、不良だったのだろうか。

地域性もあったのかも知れないが、人種が見事に眼鏡真面目男子と不良しかいなかった。


不良は背伸びをし、男気を示そうと無茶なことをしては命を縮めていた。


 中学二年の頃、二つ上の人と交際していた。

その人はバイクに乗っていて、バイク乗りは少し行った山道に集まり「峠を攻める」のを楽しんでいた。


その近辺では有名な「峠」だったので、少々胡乱な場所で、バイク乗り達が集まりケンカでの怪我やら殺人やら、バイクや車での事故の中には死亡事故もあった。


カーブの先に枯れた花束や、たばこの箱が供えられた場所がいくつかあった。


その頃の男性先輩方は、皆バイクに乗っていた気がする。

そして皆、男は不良だった。そんな地域だった。時代だった。


その日も夕方からバイクの後ろに乗り、皆が集まる峠に着いた。

もう少し年上の人は車で来ている。


車に乗っている人で多かったのが、ファーストフードをテイクアウトして頂上で食べる。

というのが、格好良いとされていたようである。



峠の中ほどの開けた場所で、なんとなく人が集まっていた。


車で来ているカップルは、車の扉を開けてハンバーガーを食べている。


時間も夜の8時や9時で、我もお腹も空いていたので、ぼんやりとみていた。


街灯が車のライトなどで、ランダムに細長い影を落としていた。



車の二人は、お腹いっぱいになったのか、食べかけのハンバーガーとポテトを道路脇にばらまくように捨てた。


マナーが悪いとも思ったが、どうせ夜のうちに狸か何かが食べるだろうと思った瞬間。


街灯だと思った棒状の影が、捨てられたハンバーガーやポテトにさぁーっと集まり、おのおの細い腕が指が伸び、ポテトやハンバーガーの上をかすっていた。


もう、棒状ではなくなり、長い人影になったソレは腕も指も細く長いままに5、6人ほどの屈んだり、覆い被さるように食べ物を得ようと掻いている姿だった。


その光景に息を止め見回すと、お地蔵様があったり、枯れた花束や珈琲缶やたばこが供えるというには残酷な程に散らかっていた。



施餓鬼供養されてないんだろうな。


そもそも、家で供養されてないんだろうか。


家に帰れていないのか。



少し暗い気持ちになりながら、連れの相手に帰りたい旨を伝える。


その時、「お腹空いたから」と言っては絶対だめだ。との、妙な確信があった。


言ったら、あの影はこちらを認識して憑いてくる。


相手は軽く同意し岐路に着いた。



あの光景の真偽は不明だが、あそこ場所で物を食べるべきではないだろう。


捨てる前から、食べている最中から、何本もの電柱のように細い影になって、周りを囲んでいたのだから。



秋になり、影が伸びる時間になると、その時のおぞましい光景を思い出す。



なんで、タバコを供えていたのか分からない。

後から聞いたら、昔のテレビでそんなシーンがあったそうな。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは、怖いですね…… 食べている時から囲まれている。 それを考えただけでもう怖いです……
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