食べかけのパンケーキ
「母さん!朝ですよ!起きてくださ〜〜〜〜い」
拾ってからしばらくは大人しかったのに、今や、やれ起きろだの、ご飯食べろだの。
本当にうるさい子に育ってしまった。
「母さん。朝ごはんは、母さんがベリーたっぷりかけた大好きなホットケーキですよ!早く来ないと……冷めちゃうなぁ……」
尻すぼみにしょんぼりした声になる。
これは演技だとわかってる。
わかっているが、美味しいものは美味しいうちに食べたい。
ガバッと起き上がり、食卓へ向かう。
「あ!母さん、今日もお変わりなく美しいですね!おはようございます!」
朝から元気だな。と、思いながら私は席に着いた。
美味しそうなご飯の隣には、魔女新聞が置かれている。
朝ごはんを食べながら新聞をチェックするのは私の日課だった。
ヨレヨレで運ばれてくるはずの新聞は、ピシッと伸びている。今日も我が子は新聞にアイロンをかけたようだ。
一面には、「魔女長、憎き竜に襲われる」の見出しが。
あぁ、そろそろ、か。
私は、うるさくも立派に成長した我が子を見る。新聞を少し下げて、彼にはバレないようこっそりと。
我が子は私の前で食べているわけではなくて、台所の後片付けをやっている。
朝食はもっと早くに食べているのだろう。
奴らが、この子を探し出した。
竜たちが、生きていることに、気がついたのだ。本当に身勝手な奴らだ。
そして、それが魔女の手元にあることも……どこからか、バレたのだろう。
この子も、この新聞を読んでいるはずだ。
きっと、本当の、親の元に帰りたいだろう。
そんなことを考えていた矢先。
ズドーン!!
外からものすごい音がした。
こんな、「おはよう」はいらない……
竜の群れが瘴気を払うために森を破壊しながら進んできていると一瞬で察した。
私は……。
「私の……愛しい子。お行きなさい。」
「え、母さん!?……い、嫌です!!」
外からする音はどんどん近くなっている。
「わかるでしょ、もう邪魔なの。どこかへ行って。」
絶望的な顔を見て入れなくて、目をそらす。
そして、スウっと息を整える。
この言葉を発せば、もう、我が子は「我が子」と呼べなくなる。それでも、我が子のためには……
私は意を決した。
「契約、解除。」
その言葉とともに魔法で外へ放り出す。
契約の解除とともに、我が子に入ってた瘴気は薄れ始め、竜へ戻る。
最初見たときの二倍は大きくなっていた。
飛び方を忘れたのか、慌ただしく上空で翼をバタつかせている。
その時、迎えに来た本当の親に……首根っこを加えられ……連れて行かれた。
見送るつもりもない。私は、私は、気まぐれ……で、拾った……だけで……
「あぁ。あぁ。ああああぁ。」
竜の気配が過ぎ去って、魔女の森が自己修復を始めた頃。
私は自分の感情を制御することができず、大きな声で叫んだ。
あの子を大切にしてきたわけではない。でも、「愛しい子」に嘘はなかった。
−−−魔女の家に残ったのは、幸せな思い出と「食べかけのパンケーキ」




