コミカライズ11巻 発売記念SS
本日7月12日、コミカライズ11巻発売!!!
きっかけは食事の時間に犬人族のユンボがこんなことを言ったことだった。
芋が美味しい、腹いっぱい芋を食べたい。
当のユンボからすると、それは特に意味のない何気ない言葉だったのだが……それが騒動を引き起こした。
「そう言えばユンボが腹いっぱい芋を食べたいとか言っていたな……。
なら腹いっぱい食べさせてやろう、隣領でなら結構な量の芋が買えるよな?」
と、翌日のちょっとした時間に、なんとなくそのことを思い出したディアスが、そんなことを言い出してしまった。
「まぁ、芋くらいなら倉庫を二つ三つ埋め尽くすくらいの量を買うことも出来るわねぇ。
それだけの量でも……まぁ銀貨で買える範囲かしら」
と、エリー。
「……ユンボはなんだかんだ稼ぎ頭だ、そうして欲しいと言うのならしてやるべきだろう」
と、アルナー。
ユンボはそこまでの量を食べたいとは一言も言っていなかったのだが、何故だかそういうことになってしまい……ユンボが仕事で忙しくしている中、そのためだけの行商隊が出発してしまった。
荷馬車三台、それらの荷馬車と芋を守るために多くの護衛を引き連れ、銀貨の入った革袋を両手で抱えたエリーが指揮をとって。
それは結構な騒ぎだったのだが、ユルトの中で仕事をし続けていたユンボがそれに気付くことはなく……ユンボが事態に気付いたのは仕事を終えた10日後のことだった。
仕事を終えて両手を振り上げ伸びをしながらユルトから出ると……エリー達が荷馬車から次々に積荷を降ろしていて、広場に荷箱の山を作り出している。
あまりにも多い荷箱の数に、ユンボが一体何だろうか? と鼻を鳴らすと土と芋の匂いが漂ってきて……え? なんで芋? と、首を傾げながら荷箱に近付いて、蓋を開けて確認してみると中にはいっているのはやっぱり芋で……そして竈場からはもくもくと湯気が上がり、焼いて蒸して煮込んでと、様々な芋料理の匂いが漂ってきて……何なら広場近くに作られた焚き火でも芋が焼かれていて、各ユルトでも芋料理がされているようで……村全体が芋の香りに包まれていた。
「おお、仕事は終わったのか? お疲れ様。
ユンボが食べたいと言っていた芋を山程買い付けてやったからな……今日は好きなだけ、腹がはちきれる程食べて良いぞ」
そんな中、ディアスがそう声をかけていて……きっかけとなった発言のことなどすっかり忘れ去っていたユンボは、何のこと? と冷や汗をかきながら首を傾げる。
「うん? 10日かそのくらい前に、腹いっぱい芋を食べたいとか言っていただろう?
芋が美味しいとか好きだとか、腹いっぱい食べたいだとか……山盛りになった芋を見たいだとか、毎日芋だけでも良いとか……なんかそんなことを」
言ってない、言ってない、絶対そんなこと言ってない。
ディアスの言葉に必死にユンボは否定をし、首を左右に振るが、ディアスは照れ隠しのようなものだろうと取り合ってくれない。
いや、取り合ってくれたとして今更どうするというのか、既にそこに芋はあり、そして調理までが始まってしまっている。
村中が、村の皆がユンボのために動いてくれていて……そのことに気付いたユンボは、がくりと脱力し項垂れる。
……そして、ゆっくりと顔を上げて覚悟を決めた表情となったユンボは、早速出来上がってきた焼いた芋にとろけたチーズをたっぷりかけたものと、蒸した芋にたっぷりとバターを乗せた料理へと飛びかかり……予想以上に美味しいそれらを、本当に腹がはち切れそうになるまで堪能することになるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
今回もオマケ満載!
何故芋なのかも、単行本をお手にとっていただければわかる……かも?






