書籍11巻『碧海の旅人』発売記念SS
本日3月15日発売です!!
イルク村の家畜としては新参となるラクダ達は、白ギー程大人しくもなければ、馬程愛嬌のある家畜ではなかった。
とても賢いがその分だけ頑固で悪戯をし、特に意味もなく反抗をするなんてこともザラだった……が、そんなラクダ達も絶対に逆らわず、素直に言うことを聞く相手が何人かいた。
「……こいつら、ディアス様がいるとびっくりするくらいに大人しくなるんですよねぇ」
と、シェップ氏族の若者が言う通り、私がいるとラクダ達はとても大人しい。
他の皆からラクダに悪戯や反抗をされたという話を聞いて、まさかそんなことがと驚かされたくらいで……今みたいに私が厩舎に様子を見に来ると、途端に大人しくなり素直に言うことを聞く家畜になってしまうらしい。
私以外にもラクダ達が素直に従う相手がいて、それがアイセター氏族長のコルムだった。
ラクダ達がイルク村に来た頃からよく世話をしているからか、とても良く懐き、素直に言うことを聞いていて……3頭でもってコルムを囲んでコルムのことを徹底的に舐め回す、なんてことも良くしている。
コルムが言うにはそれはラクダ達なりの親愛の証なんだそうで……それをしてもらえるのはイルク村でコルムだけとなっている。
「いや、あれすっごく臭くなるし毛並みも乱れるから全然羨ましくはないんですけどね。
コルムさんもその後すぐに水浴びしにいってますし」
と、若者。
……うん、私も羨ましくはないかな、それは。
そしてラクダ達はアルナーやモントにも悪戯や反抗をすることはなく……その理由は、アルナー達に手を出すと厳しい躾が待っているからだろう。
アルナーもモントも家畜の躾には一家言あり、何かされたならすかさず背に飛び乗るか手綱を掴むかして、かなりの距離を走らせたり、過剰なくらいきっちりとした行進をさせたりとしてくる。
それに逆らえば更に躾が続くことになり、それでも逆らえば餌が減らされるなどの罰があり……そんなことを何度か経験した結果、二人に逆らわなくなったようだ。
シェップ氏族やアイセター氏族達もしっかりと世話をしているし、厳しい躾をしているのだが……犬人族に対しては今も逆らうことがあり、そんな風に相手を選んでいるのも、その賢さゆえなのかもしれない。
「……お前達、皆は気持ちを込めて世話をしてくれているんだから、あんまり迷惑をかけないようにな?
その毛並みが美しいのも、キレイな寝床でぐっすり眠れるのも、皆のおかげなんだからな?」
と、そんな声をかけてやると……私の前で大人しくしていたラクダ達は、歯を剥き出しにしての、なんとも言えない表情をする。
私の言葉が分かっているという訳ではないのだろうが、態度などで注意を受けていることは理解出来ているようで……最後には渋々といった様子で大きな鼻息を吐き出す。
そんな3頭のラクダ達の様子を見てシェップ氏族の若者達がそれぞれの手綱を握ると、大人しく……嫌な顔をすることなくそれに従い、のそのそと歩いていく。
そうして私から距離を取ると……そこで途端に駆け出したり、脚を止めたり、座り込んだりとし、手綱を掴んでいた若者達はそれに振り回されてしまい……どうやら効果は一時的なものだったようだ。
「……まぁ、気長にやっていくしかないかな。
いつかはアルナーやモントのように皆にも従ってくれる……はずだ。
だから……おい、そんな風に暴れるのは良くないぞ!」
と、そんな言葉を口にしてから私がラクダ達の方へと駆け出すと、ラクダ達は逃げ出そうとする……が、若者達に強く手綱を引かれたのと、逃げようとした先からアルナーがやってきたことで逃亡を諦め、大人しくなる。
そして私とアルナーに対しやたらと大人しいというか、すり寄るというか……媚びたような態度をとってきて、私とアルナーや同時にやれやれと首を左右に振るのだった。
お読みいただきありがとうございました
ラクダが活躍したりゴブリンが登場したりな11巻をぜひぜひ書店などでチェックしてみてください!






