コミカライズ52話 公開予告SS
本日18時頃、コミックアース・スターさんにて公開予定です
「そう言えばこの短剣、あんまり使ってやれてないなぁ」
ある日のこと、ユルトを掃除することになり、その手伝いをしている中、棚に飾ってあった岩塩鉱床で拾った短剣が視界に入り込み、そんな言葉が口から漏れる。
「ん? ベン伯父さんがたまに使っているぞ?」
すると同じく掃除をしていたアルナーが、そんな言葉を返してきて、私は「え?」と声を上げ、目を丸くする。
「ディアスが不在の時にモンスターが近寄ってこないようにだとか、メーア達を放牧させている時に獣が近寄ってこないようにだとか、色々と便利に使っているようだ。
まぁー……防御用というかディアス向きの道具ではないことは確かだな」
アルナーがそう言葉を続けてきて……私は「なるほど」としか言えず、更に目を丸くする。
「今後街道を解放するようになって人通りが増えたり、揉め事が増えたりしたらディアスが使うこともあるかもしれないなぁ。
何しろ指定した相手を遠ざけられる短剣なんだからなぁ……色々と便利なことは確かだろう」
更にそう言われて私はもう一度「なるほどなぁ」と、そう言ってから短剣を手に取る。
と、ちょうどその時、掃除のために開放していた天窓や入り口から虫が入ってきて……「ちっ」と舌打ちしたアルナーが掃除道具を振り回し、追い払おうとする。
普段なら虫よけの香を焚くなりして対処するのだが、掃除中に香を焚く訳にもいかず、なんとか道具でもって追い払おうとし……それを見た私はなんとなしに手にした毒の短剣に力を込める。
対象は虫。
今アルナーが追い回している虫をどうにか追い出せないかと考えて発動させたのだが……結果はなんとも意外なことになる。
まず毒の短剣が強すぎたのか、元気に飛び回っていた虫達がぽとりと床に落ちる。
「ん!?」
「お?」
それを見て私とアルナーがそんな声を上げる中、部屋の隅で掃除をしていたセナイとアイハンとエイマからも声が上がる。
「あ! 死んだ!」
「おー……むしだ」
「……ディアスさん、何かしました?」
そんな声を受けてそちらへと視線をやると、どうやらセナイ達は小さな棚を動かしての掃除をしていたようで……棚の裏に隠れていた虫が短剣の余波を受けて死んでしまったらしい。
……まさか他の種類の虫まで死んでしまうとは……。
というか、これ、上手くしたらすごく便利に使えるのでは……?
と、そんなことを考えていると、同じことを考えたらしいアルナーが私の両肩を力を込めた両手でもって掴んでくる。
「……ディアス、イルク村中のユルトと厩舎、倉庫も巡るぞ、とにかく全部それを使って周るんだ」
「……はい」
生活空間の清潔さに厳しいアルナーにとって、いつの間にか入り込んでくる虫は、絶対に相容れない……水と油といったら良いのか、とにかくそんな存在で、それを一斉に駆除出来る方法が発見されたとあって、その手と目に込められた力は尋常ではなかった。
そんなアルナーの言葉に逆らえる訳もなく……それから私はイルク村中をめぐり、毒の短剣の力を発動させていくのだった。
お読みいただきありがとうございました。
あの短剣初登場!






