書籍第9巻発売記念SS『アイハンとミツバチ』
本日4月14日、書籍第9巻発売です!
――――草原東の森の中で エイマ
ある日の昼下がり、セナイとアイハンと犬人族の護衛達と森の中へとやってきたエイマが、森の中に漂う独特のじっとりとした空気と、様々な草花から放たれ混ざりあった香りを堪能していると……ミツバチの巣箱のことをじぃっと見つめるアイハンの姿が視界に入り込む。
セナイは今、犬人族達と一緒に周囲を駆け回っているので珍しく一人きり、木の側に立ってただただじぃっと巣箱を見つめて……一体何をしているのだろう? と首を傾げたエイマは、そちらへと跳び寄って声をかける。
「どうかしたんですか? 巣箱に何か異常でも?」
するとアイハンはちらりとエイマの方を見てから、手をそっと差し出してエイマにそこに乗るように促してから、また巣箱に視線を戻す。
「すばこじゃなくて、みつばちをみてた」
ゆっくりと少しだけ舌足らずな様子でそう返したアイハンは、巣箱から激しく出入りを繰り返しているミツバチのことをじぃっと見つめる。
「ミツバチが好きなんですか?」
アイハンの手に乗り、そこから肩へと移動し、アイハンの視線に寄り添いながらエイマがそう返すとアイハンはこくりと頷く。
元気いっぱい、活発なセナイと比べてアイハンは大人しい子供だ。
それでも子供らしく遊びが大好きだし、駆け回るのが大好きだし、まだまだ無邪気さを残す年頃なのだけども……セナイと比べると大人しく、また利発でもある。
言葉にするのが苦手なだけであれこれと色々なことを考えているし、エイマの授業では誰よりも覚えがよく、時折気まぐれに試験のようなことをすれば常に満点を取る子で……そんなアイハンがミツバチをじぃっと見ているものだからエイマは、それにはきっと凄い意味があるのだろうと……予想もつかない思惑があるのだろうと思いこむ。
そうして一体どんな意味と思惑があるのかとあれこれと悩んでいると、アイハンがゆっくりと口を開く。
「みつばちがいっしょうけんめい、はたらくすがたがすき、みんなのためにがんばっておしごとしてる。
がんばれっておもうし、だいすきになるし、てつだいたくなる。
いるくむらの、みんなとにてる!」
「あ~~、なるほど~」
そう言ってエイマは頷き、それ以上は何も言わず考えず、アイハンと一緒になってミツバチの様子を見守る。
巣箱から出てきて、巣箱の入り口の仲間に挨拶をして飛び立って……そして花蜜を集めて腹を大きく膨らませた一匹が帰ってきて、それを入り口の仲間が歓迎して。
そうやって何百何千ものミツバチが飛び交い、働く姿をエイマとアイハンは、セナイが遊び疲れて戻ってくる時まで、静かに見続けるのだった。






