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領民0人スタートの辺境領主様 外伝集  作者: ふーろう/風楼


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33/121

コミカライズ3巻 発売記念SS

というわけで、本日コミカライズ3巻が発売となります!

応援よろしくお願いいたします!



 ――――ユルトの中で、ユンボ



 ユルトの中でユンボが、エルダンから届いた3冊目のコミックを両手でもって掲げてじぃっと見つめている。


 この3冊目までの物語はユンボがイルク村に来る前に起こった、ディアスを始めとした当事者達に話を聞くことでようやく描くことの出来た物語であり……ようやく、ようやく自分がイルク村に来るまでの話を形に出来たのだと、そんな達成感を抱いたユンボは、本が届いてからもうかなりの時間が経とうとしているのに、その達成感からか掲げたコミックから目を離せないでいた。


 話を聞くのが大変だった、聞いた話をまとめるのが大変だった。


 外でしんしんと雪が降り積もる中、ユルトの中にこもってじぃっと……身動ぎせずにじぃっと見つめ続けていると、すぐ側でコミックのページをめくるある人物が声を上げてくる。


「ははぁ、なるほどなるほど、ボクがここに来る前はこんなことがあったんですねぇ。

 ある程度話には聞いてましたけど、こうして絵で見るとまた違った印象がありますねぇ」


 そう言って長い尻尾をゆらりと揺らし……次のページをめくる大耳飛び鼠人族のエイマ・ジェリーボアにユンボは横目で、いつまでここにいるつもりなのだと、そんな視線を送る。


「良いじゃないですかぁ、少しくらい。

 ボクの身体だとこの大きさの本を持ち運ぶのはちょっとやそっとじゃないんですよ。

 ボクの姿をこうして表紙に描いている訳ですし? 何を思ったかアルナーさん達にボクそっくりの格好をさせた絵を描いて配ったりした訳ですし?

 少しユルトの中にお邪魔するくらいは、その分の料金だと思って受け入れてくださいよ」


 そんなエイマの言葉を受けて、ばふんと大きなため息を吐き出したユンボは、再びコミックへと視線を戻し……じぃっと見つめ始める。


「……ところでユンボさん。

 そんな悠長にしていて良いんですか? アルナーさんがこのコミックを見てまた怒っているみたいですけど……逃げる準備をしなくて平気なんですか?

 え? もう逃げるのにも慣れたから大丈夫? 備えてあるから大丈夫?

 ……いや、まぁ、良いんですけど、今は冬、外は一面の雪景色ですよ? ユンボさんの毛の色じゃぁ隠れるのには適していませんし、雪の中で逃げ回るっていうのも現実的じゃぁないんじゃないですか?

 何しろアルナーさんには雪を踏み散らす馬の脚と、視界に入り次第に射抜ける弓矢があるんですから……雪上での追跡劇はかなりの不利が予想されますよ?

 今のうちに隠れ場所を作っておくとか、埋められてしまった逃げ道用の穴を掘り返しておくとか、しておいた方が良いと思いますけど……?」


 そう言われてユンボは愕然とした表情となり……慌ててユルトの床布を剥がし、そこに掘っておいた、いざというときの為の脱出用隠し穴の確認をする。


 そこに穴があることは誰にも話しておらず見せておらず、アルナーどころかディアスさえもが気付いていなかったはず……なのだが、そこにあったはずの穴は綺麗に……わざわざしっかりと踏み固める形で埋められてしまっていて、改めて愕然とした表情となったユンボは、一体何故? と、そんな視線をエイマに送る。


「何故も何も……何度か逃げられたことにより、アルナーさんも学んだと言いますか本気になったといいますか……今回のような事態を見越して何人かの犬人族を干し肉で雇ったみたいですよ。

 犬人族さん達の鼻を敵に回してしまったら、そんな穴……あっさりと発見されちゃうに決まってるじゃないですか」


 と、エイマがそう言ったその時、エイマとユンボの耳に何者かがざすざす雪を踏む音が響いてきて……その音の主が、怒り心頭で大股で雪を踏み荒らすアルナーだと直感的に理解したユンボは、大慌てで立ち上がり……ユルトの壁に作っておいた穴から外へと脱出し、脱兎の如く有様で駆けていく。


 その姿を何も言わずに見送ったエイマは……、


「……何故地面の穴が塞がれていて、そこの穴は塞がれていなかったのか……そこに気付けたら良かったんですけどねぇ。

 当然アルナーさんは、そこで待ち構えてますよねぇ」


 と、そんな呑気な声を上げながら、コミックの続きを読もうと次のページをめくるのだった。


お読み頂きありがとうございました。


エイマコスの特典も中々のクオリティとなってますよ!!


挿絵(By みてみん)

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