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領民0人スタートの辺境領主様 外伝集  作者: ふーろう/風楼


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31/116

書籍版第4巻発売記念SS 『打倒ディアス大作戦』

本日書籍版第4巻が発売となりました!

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「ディアス様に戦いで勝つにはどうしたら良いか? だって?」


 領兵隊長であるクラウスが、毎日欠かすこと無く行っている訓練の合間、休憩の時間。

 そんな質問をマスティ氏族の若者からぶつけられて、草原に座り込んでいたクラウスは、顎を撫でながら「ふぅむ」と唸る。


 質問をした若者はディアスを害そうと考えている訳ではなく、あのディアスを超えるにはどうしたら良いのかと、それ程の強者になるにはどうしたら良いのかと考えているようで……その真っ直ぐな目を見つめたクラウスは、頭を掻きながら言葉を返す。


「勝つ、というのは難しいかもなぁ。

 あの戦争で誰も勝てなかったからこそ……誰にも、どんな手段にも負けなかったからこそ、ディアス様は今ここで領主様をしている訳だしなぁ。

 ディアス様の横に並ぶとか、力になるとかならいくらでもやりようがあるが、勝つっていうのはなぁ……」


 そう言ってからクラウスは、顔を上げて青空を見つめて……昔のことを、かの戦争のことを思い出しながら言葉を続ける。


「参考になるかどうか分からないが、あの人に勝とうとした連中のことを……帝国の連中のことを少し話してやろう。

 神出鬼没で、気まぐれや直感を頼りに戦場に現れたかと思えば、ジュウハさんの戦略に従って現れたりもして……一度そうやって姿を見せたなら、戦場を駆け回り荒らし回り、思う様に大暴れして、軍も士気も何もかもを破壊してしまうディアス様。

 当然帝国はそんなディアス様にどうにかして勝とうと……どうにか排除しようとした訳だが、そのどれもが上手くはいかなかった」


 正攻法での勝負は、そもそも帝国最強の、あの戦斧を所有していた最強の戦士が敗北しているので話にならない。

 数で圧倒しようにも、ディアスは数の差を全く苦にせず……その上気まぐれに、何の考えも躊躇も無く戦場を投げ出し、スタコラと逃げ出してしまうので揃えた数が無駄になったことも一度や二度ではない。


 ディアスの方に数を傾けすぎたせいで、他の勝てるはずの戦場で敗北することもあれば、揃えた数を壊滅させられてしまい、その後の戦況に尋常ではない影響を及ぼしたこともあった。


「なら搦め手で行こうとなる訳だが……暗殺、毒殺は直感で回避してしまうし、そもそも毒の魔法やら呪法は何故だか通用しない。

 買収、懐柔も一切通用せず、色仕掛けでなんとかしようにも……ディアス様は貞操観念が無駄に厳しいからなぁ、まるで通用しないんだ。

 更に俺やジュウハさんがそういった搦め手を防ごうと手を打っているし……現地の人達、周囲の村や町の人達なんかも、ディアス様にいなくなられちゃ困ると味方をしてくれる」


 ディアスが買収できないのであればと、クラウスやジュウハにまでその手が及ぶこともあったが、それは全くの悪手であり、ディアス本人を買収しようとするよりも悪い結果を生むことになった。


 特にジュウハへの買収工作は最悪で……裏切る素振りを見せながら金をせびられ女をせびられ、散々に振り回された上で利用されて、大きなダメージを負うことになる始末だ。


「……そもそもジュウハさんはディアス様よりも数倍……いや、数十倍は頭が良いのに、なんで工作が通用すると思ったんだか。

 ディアス様という存在に目がくらんで、視野が狭まっていたのかも知れないな。

 ……で、そうやって追い詰められていった帝国は、ある日にとんでもない馬鹿な策に打って出たんだ」


 ある日ある時、捕虜を集めて人質とし、ある砦にディアスを呼び出した帝国軍。


 その砦には帝国の技術の粋と、山程の資金と、馬鹿げた資材をつぎ込んで作ったある兵器があり……その兵器でもってディアスを討とうとしたのだ。


「その兵器がどんなものかというと……魔法使いを何人も集めて、その魔法使いたちの魔力を集約して、集約した魔力を爆発させて、その爆発力で兵器の中に詰め込んだ瓦礫や鉄くずなんかを発射する、というものだった。

 無駄に仕組みが複雑で、砦を丸々利用しなくちゃいけない程に大きくしなければ威力を発揮してくれなくて……。

 その兵器を作るくらいなら他の武器防具を量産した方がマシ、そんなことに魔法使いを何人も集めるなら普通に戦場に配置した方がマシ。

 兎に角非効率で、人材資材を無駄にするだけの存在だったんだが……帝国はそれでも、そうしてでもディアス様を討ちたかったという訳だな」


 そう言って空を再度見つめて、遠い目をするクラウスに、周囲の犬人族達がわっふわっふと声を上げて、ディアスは一体その兵器をどう攻略したのか教えてくれと、興奮気味に声を上げる。


 そんな犬人族達に対してクラウスは、至って冷静に淡々と言葉を返す。


「どうもこうもない、正面からの突破をした……それだけさ。

 兵器を見るなり一人でまっすぐに走っていって……発射された瓦礫や鉄くずをあの戦斧で打ち払った。

 流石に全てを受けきることが出来ず、多少の怪我を負ったり、あの戦斧も欠けたり壊れたりした訳だが、壊れた先から謎の力で修復するあの戦斧ならなんてことは無い。

 瓦礫を戦斧で受けて壊れて、壊れた先から直してまた受けて……あの戦斧はそんな風に優秀な盾でもあるって訳だ。

 そうやってディアス様が兵器の真正面、あと一歩という所まで駆けていくと、帝国はそれを待っていたかのように、近距離での最高最大の威力の一撃を放った―――んだが、それすらも結局あの戦斧に防がれてしまった」


 帝国の全てを込めたとも言えるその威力を受けて、さすがの戦斧も粉々に砕けることになった……のだが、それでもディアスは柄だけとなった戦斧を振り上げて、振り上げながら戦斧を修復し、修復しながら戦斧を振り下ろし、その一撃でもって兵器を粉砕してしまった。


 ……結果として帝国は砦一つと、膨大な資金と資材と、最新技術の情報と、多くの魔法使いを捕虜にされるという形で失うことになり……それが致命傷となって敗戦へと繋がったのだとクラウスは考えていた。


 そしてそんな武勇伝を聞かされた先程の若者を含めた犬人族達は、話の趣旨を理解しているのかいないのか、そんなディアスのようになるぞ、ディアスを超えられるように頑張るぞと、興奮しながら懸命に訓練に精を出すのだった。

 


お読み頂きありがとうございました!


特集ページでは冒頭、書き下ろしっぽい部分の試し読みも出来ますし、何枚かの挿絵も見る事ができますので、ぜひぜひチェックして頂ければと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうディアスさん一人でいいんじゃないですかね。 というセリフが一体何度、あの戦争ではつぶやかれたことでしょう……。 逆に、出てこられたらもうその戦場での負けが確定する帝国首脳陣の苦悩は察し…
[一言] もう別の戦場に足止めしてる隙に 別の場所で勝って全体で見たトータルでの 戦略勝ちするしかねーな。勘で阻まれそうだけど
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