コミカライズ63話 無料公開告知SS
新形式になって無料公開と先読み公開がある形となったので、今月から都度更新、多分月2回くらいの更新でやっていきます
――――ディアス達が隣領旅行中のイルク村で セドリオ・バー・センジー
センジー氏族の長、セドリオは自分達のユルトの中でそれを見つめて困り果てていた。
隣領領主エルダンから贈られた砂糖菓子、エルダンやその妻、そして未来の子供を象ったそれを受け取ったは良いものの、どう食べたら良いものか、答えが出なかったのだ。
そのまま齧り付く? それとも切り分ける? エルダンの姿をした砂糖菓子を?
どちらにせよ、あまり良い絵面にはならないことは間違いなく、たまらない砂糖菓子の匂いを嗅ぎながら、どうしてもそれを食べるための行動に移れていなかった。
いっそ切り分けた状態で渡してくれたら良かったのに、そのままの状態で一族全員にと渡されてしまっていて……クッションの上に腰掛けたセドリオは、腕を組んで首を傾げてどうしたものかと頭を悩ませる。
センジー氏族の大人達もまた同じような反応を示していたが、唯一違ったのは子供達だった。
子供達は砂糖菓子の甘い香りにやられてしまって、ちょっとした興奮状態にある。
なまじ普段から砂糖菓子を食べて、その美味しさを知っているだけに我慢が出来なくなっている。
いくら隣領が砂糖の名産地とは言え、高価は高価、手に入りにくい品だったのだが、それをディアスとアルナーは、子供や老人を優先して配ってくれていた。
自分達も食べたいだろうにそれでも子供達の笑顔を見たいからと優先してくれていて……砂糖の味をすっかり覚えた子供達は、じりじりと祝いの砂糖菓子へと近づいていく。
セドリオはそれを見て、止めるべきかとも思ったが……いっそ、子供達にまず食べてもらってから残りを分けた方が良いかもと、そんなことを考える。
子供達なら遠慮も何もしない、ただ目の前のそれを砂糖菓子と考えて食べてくれるはず。
……ただし、全てを食べてしまうのはダメだ、自分に託された祝いの菓子なのだから皆で食べなければ。
「長として命じる、皆の分を残すように」
ディアス達と交流し始めたからか、流暢に喋れるようになった口でもってそう言うと、一瞬ビクリと体を震わせた子供達だったが、すぐに食べて良いとの許可が出たと察して、砂糖菓子に飛びかかって……ちゃんと皆の分を残せるようにと砂糖菓子の端っこだけを取って、皆で分け合い食べ始める。
砂糖以外にも色々なものを混ぜてあるらしいそれの味は中々悪くないようで、子供達の顔はすぐに笑顔となり……そしてセドリオは残された砂糖菓子を見て真顔となる。
手足を引き裂かされた結果というか、残骸というか、そんなものがそこに残されていて……逆効果だったかなと冷や汗をかいたセドリオは、婦人会に所属している女性が持ってきてくれた料理用の棒と鍋でもって、残された残骸を無心で砕いて大きさ的にも見た目的にも食べやすい状態にしてから、子供以外の皆に平等に分けるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
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