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リベリアを抱えて校舎の中を駆ける。

強化された俺の運動能力はかなりのものだった。

廊下を駆け抜け、階段へ向かう。

跳躍すると、踊り場までを僅か……ひとっ飛び。

「嘘だろ、おい」

思わず驚嘆の声が漏れるが、

「来るわよっ!」

鈍く、重い足音が背後から響く。

「……っ!分かってるよっ!」

階段の入口から白い仮面の巨躯が覗く。

見上げてきているその気配に、原初的な恐怖を煽られる。

再び階段を飛び上がり、計二歩で二階に上がりきった。

「逃げてるだけなの!?」

「それ以外に今何ができんだよっ!」

廊下を走る最中も、背後から響く足音は消えない。

振り返れば、捕まる。

そして、それが意味するのは……死。

「……もう一階…………登るか」

「ふぇ!?何か言った?」

「上登るからな、あと!腰はもう大丈夫か?」

「多分……」

リベリアを走りながら背中に回す。

「ふぁっ!?」

「しっかり捕まってろ!」

腕を振ってより加速する。

それに気付き、リベリアは回す腕をきつく締め、脚を腰に回してきゅーっと締め上げる。

「よっ、ほっ、」

階段を跳ぶのも慣れた。

難なく三階に到達した。

俺がここに来たかった理由はたった一つ。

さっきリベリアを助けるために鬼の腕を蹴った時。

感触は人間とさして変わらなかった。

「ならっ!」

廊下を全力で走る。

チラリと背後を確認すると、鬼もしっかりと付いてきている。

なかなか捕まえられないからか、苛立ちの様な感情を感じなくもない。

「リベリア、舌噛まないように、口ちゃんとつむっとけ!」

俺のやる事を察したのか、リベリアはぎゅーーっと力を強める。

廊下の突き当たりの窓に向かって、全力で飛び込む。


パリィイイインッ!!


空中でリベリアを、前に抱え直す。

「ばっ、ばばば…」

顔が近くなりリベリアの均整のとれた美しい顔を間近で見る。

真紅の瞳の目尻には涙の粒が浮かんでいる。

助けて、やらないとだけど……やりすぎたかも。

それに、俺は落下しても多分大丈夫だけど、リベリアは即死するだろう。

空を仰ぎながら落下する中、リベリアを上へ放り投げる。

目を見開き、リベリアが叫んだ。

「バカぁああああっ!!!!!」

鬼も俺たちに続いて割れた窓を突き破り、落下してくる。

着地し、上から降ってくるリベリアをキャッチする。

全身を使って衝撃を受ける止める。

力なくポカポカと叩きながら

「ばっ……ばかぁあぁ…………」

と言ってくる。

「助かったんだからいいだろ」


ズドンっ!!!


鬼が着地も出来ずに地面に激突する。

土煙と、降り注ぐガラスの中からは、鬼が這い出てきた。

見ると、左脚と、両腕が有り得ない方向に曲がっている。

右脚だけで体を擦りながら寄ってくる。

これは……怖いな。

「ひっ!」

それを見たリベリアが恐怖の声をあげる。

うん、無理もない。

俺は細心の注意を払いながら鬼に寄る。

首に腕を回し、一気に締め上げる。

この首……へし折ってやれば、死ぬはずっ!

「……ふんぬっ!!!」

ボキン……

嫌な音が響いた。

腕を離すと、首は力なくダラリと地面に落ちた。

リベリアを見ると、その瞳は恐怖に染まっている。

俺だって怖い。

でも、殺らなきゃ殺られると……体が、心が、本能が告げているから、出来た。

それだけじゃない、俺に対する恐怖も、含まれてるはずだ。

「……あ、その。怖い、よな」

「……何よ今更。別に……征が助けてくれなきゃ死んでた訳だし……感謝してる」

ニッコリと微笑んだリベリアの顔は、華のように美しかった。


「で、学校を出るのはいいけど、これ……」

靴に履き替えてリベリアと外に出る。

リベリアが見せてきたのはツイッターだ。

ツイートは「鬼ごっこ」関連で溢れ、瞬く間にトレンド入りしていた。

そんな事をしていられる状態ではないはずなのに、……よくいじるな。

「……これは」

その中に、俺たちが見た事のない映像があった。

動画を再生する。

それは虚空を映したもので、カメラワークは何かを探してずっと動いている。

音声は、神の声だ……!

『あー、そういえばギフトなんだけどね。一つはみーんなにあげるよ。でもね、強い鬼はギフトを持ってるんだ。それを殺せたら、そのギフトをプレゼントしちゃうよ!』

そんな、俺たちの所では語らなかった事を話していた。

いや違う、動画の中で時計が見えた。

そこで動画を止めて確認すると、丁度俺がリベリアを助けて、鬼ごっこしてた時だ。

良かった……大事な情報を逃す所だった。

昇降口から出て、学校を後にする。

学校に残る生徒はほとんどおらず、みんな自宅の方へと走っていった。

俺がリベリアを助けている間に。

だから、学校は平日の昼間とは思えない程の静寂が包んでいる。

「とりあえず、着替えるか。動きやすいやつにしないと、キツイだろうし」

「そうね……。あ、こんな状態なら、お店とか機能してないだろうから、盗んじゃう?」

イタズラに笑いかけるリベリア。

「あぁー、そうするかっ!」

リベリアの意見に賛同する。

スポーツショップにでも行けば、いい服があるだろう。

ふたりで街のスポーツショップへと歩き出す。

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