脅しとプレゼント 3
めっちゃ遅れてすいません!?ごめんなさい!!
「え、ナニコレ?」
液晶タブレットに表示されていたのは自分の簡易的な情報と「報復者」と記された謎の単語だった。
「俺いつの間に仕事人になってるの?」
「いや、そういう意味じゃないからそれ。・・それはね、君たちの身を守るために目覚めさせた能力だよ」
「能力?」
「そう能力だ、元の世界では元手が無かったがゆえに使えなかったが常識では測れない人智を超えた力だ。言い忘れていたが今から行く世界では熊や狼なんかの肉食獣に加えて元の世界で伝説や童話でしか登場しないような生物が多数生息している。そんな場所に何も持たせずに送り込んだら君達みたいなか弱い一般市民を送り込んだらすぐ死んじゃうからね」
「物騒なこと言うなよ・・。伝説っていうとドラゴンとかスライムとか?」
「あー、まあだいたいそんな認識であってると思うよ。さて君の目覚めた能力の効果だけどえーと・・」
そう言って神は指で丸を作りその円を通して覗き込むように凍馬を見る。
「うわあ、ピーキーだな。えーっと、君の能力は簡単に言えば傷を負えば負うほど身体能力が向上する能力だね」
「・・使いにくすぎない、それ?」
「いや、これはこれでいいよ。理論上どんな相手にも対等に渡り合えるからね。まあ、実感しにくいだろうからちょっと実践してみようか」
そう言って神は指をパチンと鳴らすと机を押し退けて岩がにょき、と生えてきた、
「さあ、この岩を砕くんだ!」
「無茶苦茶言うな!?人が素手で岩を砕けるはずないだろ!?」
「・・まあ普通ならそうだよね。さてここで能力の出番だ」
「いや、俺の能力って・・え、あ・・・」
一瞬体が軽くなったと感じ、違和感を覚えた左腕を見るとそこにあるべきものが無くなっていた。ただそこからは血が出ておらず痛みもなく、現実感が感じれなかった。
「そう傷を負わなければ発動しない、だからちょっと腕をもがせてもらったよ」
「あ、ああ、・・・あああ■■■■■■■■■■■■――!???」
神がいつの間にか弄んでいた自分の腕を見たとたん痛みが、涙が、血が噴火するかのように溢れ出てきた。声にならない声を上げ、机を吹き飛ばしながら痛みにのたうち回る。自分に何が起きたか分かってしまったが故に痛みはどんどん増していく。その時、神が呟いた
『黙れ、動くな』
決して大きな声でも、威圧に満ちた声では無かった。だが静かに穏やかに発されたその声だけで凍馬の狂乱を停めた。
「さあ、能力のテストだよ。岩を殴ってみて」
淡々と告げられた言葉に凍馬は反応することが出来なかった。先ほどの神の言葉で停められたのはあくまで腕を失ったことによる狂乱のみ、意識は霧がかかったように朦朧とし切断面から発され続ける燃えるような痛みによってなんとか意識を保っていた。
「早くしてよ、じゃないともう一本もいじゃうよ?蹴りで破壊できるんだし」
「・・分か、った。だから、ちょっと待って・・」
軽い調子だったがその言葉からはこのままだと本当にまた腕をもぐという凄みを感じた。
だから凍馬は立ち上がった。表情はぐちゃぐちゃ、足は頼りなく震え、痛みで今すぐ倒れそうだった。それでもなんとか岩の前で構えをとった。
「さあ打つんだ、しっかり打てよ。上手くいかないなんて許さない」
神の応援(脅し)を受け、カチリとスイッチが入った。震えは停まり、視界がクリアになっていく。拳に余計な力は入れず、脚と腰を捻る。歯車がはまるように動きが噛み合い、力を増し、先(拳)に伝えていく。そしてインパクトの瞬間、思いっきり拳を握りしめ、
「ハッッ!!!」
文字通り全力を持って岩を殴り付けた。
-パァンッ!!
まるで車が衝突したかのような音と共に思いっきり前につんのめった
「!!??・・え、嘘だろ・・・」
つんのめった凍馬は上部が吹き飛んだ岩の上に倒れこんでいた。凍馬の想像では自分の拳は砕けていたはずだった。しかし現実では岩は爆破されたのごとく吹き飛び、凍馬の拳には傷ひとつなく痛みもない。ふと周りを見回してみると教室の隅の方に壁にぶつかりひしゃげた机が何個も転がっていた。
(そういえば腕持ってかれたときに転がって弾き飛ばしたんだっけ?)
机はそれこそ車に潰されたかのように歪みきっていた。凍馬は今までからは考えつかないような力を手にしたことに背筋が寒くなった。
「さあさあ!分かったかい?これが君の手に入れた能力だ。もっともっと傷つけばそれこそ指先ひとつで人を破裂させられるほどになるかもだ。・・まあとりあえず腕直すよ、そろそろ血流しすぎてヤバいだろうし」
そう言ってパチンと神が指を弾くとつくしみたいに腕がニョキニョキと生えてきた。
「うお!?トカゲみたいだな・・」
「実際には腕なんか生えてこないから気を付けるように、けど多少の傷なら治りは早くなるよ」
治った腕は違和感なく凍馬に馴染んでいた。しかしそれと同時に先程よりも自分の体が重く感じた。
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「さて、私からあげられるものはこれぐらいかな?そうだねー、後は質問タイムといこうか。時間は5分、答えられる範囲でならいくらでも答えるよ」
そう言って神は砂時計を取り出しひっくり返そうとする。
「え、ちょっ、待って!」
「待ったなーいでーす!ハイ、スタート!」
凍馬の必死の静止も聞かず神は楽しそうに砂時計をひっくり返す。
「えーっと、あー、うー!」
咄嗟に必要そうな質問など出てきはしない、結局最初の質問は無難と言えば無難な質問をすることにした。
「なんか武器もらえないの?このままじゃほとんど丸腰なんだが・・。・・おい!何で目を逸らす!?」
神様は凍馬のした最初の質問を聞いて全力で目を逸らしていた、
(やっば、武器渡すの忘れてた・・)
次回でチュートリアル終わりです




