プロローグ
海に浮かぶ小さな、それこそ半日歩けば回りきれるほど小さい島、そこで二人の男が激しく闘っていた
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!!!」
「はああああっ!!」
片や狂ったような奇声を上げ苦痛で顔を歪めた青年が手甲で殴り掛かり、片や毒でも吸ったのか青い顔をしながら今だ覇気のある声を出しおおぶりな日本刀を振るう男、二人は目にもとまらぬ速さで剣戟を繰り出していく。
足の踏み込みだけで地面が割れ刃がぶつかり合う余波で空気が震える、おおよそ人間が起こしているとは思えない超人に見た戦いだった。
ただその戦いを続ける二人には決定的な違いがあった、事実青年は数合打ち合って体ごと弾き飛ばされた。
「ハァ・・ハァ、・・・おれ・・の勝ちだ、だからもう・・」
毒の影響か血を吐き出しながらもほぼ無傷の男は勝ちを青年に告げ武器を下ろす。
一方青年はいたるところに傷を負い弾き飛ばされたせいで、傷は男の刀によってつけられたものばかりではなく限界まで酷使された肉体が今までのツケを払うかの如く崩れ始めていた。
しかしそのような状態にもかかわらず青年はそんな痛みなど感じていないかの様に立ち上がろうとする、しかしやはり無理があったのか口から血を吐き出し脚の皮膚は裂けていった、そのまま体を支えれなくなり地に片手をついた
(まだ・・まだ立とうとするのか)
男は青年から襲撃を受けて三度戦ってきた、己の全力を持って戦い撃退してきたのだが、その度に男は思った『勝った気がしない・・』と。
「かかかか勝ちちっ?ま、まだ俺はぁ負けけてっな、い!!・・・そ、そうだ、負けてない・・ま負けられないいぃぃんだよおおおおお!!」
興奮のせいか、それとも何か別の要因か呂律が回ってなかった。
(・・もう殺すしかないの・・足が!?)
青年を限界と見切り殺害すら選択肢に入れようとしたとき突然片膝をついた・・・いや、片足が地面とともに溶けていた。
それは前に一度見たことあった・・・共に行動していた同僚の教師を一瞬で溶かしきった悪魔のような液体、それよりは溶ける速度は遅いが足はどんどん飲み込まれており男はもう助からないことを悟った。
「グウウウウ・・・、そう・・か手から、地面を通じて・・・」
「・・・種が、分かって、も・・もう遅い・・・」
立ち上がって流暢といかないまでも今までとはうって変わった様子で話し始めた青年、それを見て驚きを顔に浮かべるもすぐに納得した表情をした男。
「そう、か狂っていたように見えて、実のところは演技か・・。おかしいなとは思ってたんだ、狂ってるやつが、ここまで人を追いつめられる「いや、俺は間違いなく狂ってるよ」のだろ・・は?」
いつの間にかすぐ近くまで来ていた青年が男を見下ろしながら告げる。
「俺は間違いなく狂ってますよ、先生。でなかったら一緒に学生生活を送ってきたクラスメイトや先輩、先生。友達や好意を寄せてきた相手、無関係な女子供まで関係なく殺せるわけないじゃないですか。間違いなく俺は狂ってますよ」
青年は下半身のほとんどが溶け動けない自らの教師の頭をつかみ自分の目線まで持ち上げた。
「だからね先生、今から俺はあなたを殺します。下半身を溶かしたようにあなたの頭を溶かします、恨み言があるなら今どうぞ」
そう言うと青年は教師の言葉を待った、教師はその言葉を聞きもう殆ど力が入らないだろう手で青年の腕をつかみ一言だけ言った。
「・・お前、は・・ハァ、ハァ・・・いつか、その選択を・・後悔する・・・ことになるぞ」
「・・ご忠告、感謝するよ。じゃあねもう二度と会うことはないだろう」
そのまま籠手から溶解液があふれ、そこには元から何もなかったかのように教師の頭は溶けていった。
教師が死んだ後、青年は突然足が千切れ倒れこんだ。流暢に話していたが実のところ酷使しきった肉体はもう限界であり一歩も動くことはできなかった。
(くっそ、動けねえ。もし、だれかここに来たら・・)
するとそんな青年を包みこむかのように辺りが光で満ちていった。
光が弱まり、目を開けるとそこには一見少女とも少年とも取れそうな存在が嬉しそうに目の前に立っていた。前に会った時とは明らかに姿が違うが、初めて会った時と違い生物のランクが上がった青年にはあの時感じられなかった文字通りの意味での化け物じみた力を感じ取れた。
(間違いないこいつは・・・・)
「やあやあ、おめでとうまさか君が優勝するとはいかに私といえども予想はできなかったな~」
(あの時俺たちを異世界に送り込んだ・・・・・神だ。)
「じゃあ願いを言うといい、約束通り私が可能な限りの願いを一つだけ叶えてやろうではないか」
投稿をやめていた間あまり書けなかったので次更新できるのがいつか分かりませんが、次も見てくれれば嬉しいです。