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クラス転移。〜もらったチートは建築士!?〜   作者: 瀬戸浩也
横川輝明たちのクラス転移。
4/16

だから、彼ら五人は戦闘に向いていない……と思っている。

「まあ、明日からは早くなるだろうし、寝よう」


 という形で、俺たちは明日に向け睡眠をとることになった。

 教室のドアの鍵を閉め、窓もガムテープとかで壊されないように補強する。

 これで魔物の対策になるのかいささか不安だが外で雑魚寝しているよりは幾分ましだろう。


「……寝辛れぇ」


 クラスメイトの誰かがつぶやく。確かに机に突っ伏して寝るのはなれないと寝づらいかもしれない。

 俺は基本的に休み時間は寝ているのでそういうことはない。

 べ、別に友達いないとかそういう理由で寝ているのではない。これはアレだ、人間の三大欲求、つまり人に必ずある欲望に従って寝ているだけだ。


 だが、机で寝ることになれている俺でも今夜は寝られそうにない。

 それは全員がそうみたいで、眼を開けると、寝られないのかみんな思い思いに能力を確認してる。

 ……まあ、何が起こるのかわからない状況なのだ。これが当たり前なのだろう。


 俺も周りに従い、能力の再確認をする。


 俺の能力は魔力という項目を消費して発動する以外にも、手作業でどうにかするという手段がある。しばらくは魔力なしでどうにかするしかないみたいだ。


 建築はその名のとおり、整地は建築とは対称的に地面などを削り取る。

 なんというか、普通に使える能力だ。戦闘向きではないが、どれも生きていくうえで便利なものだろう。


 だが俺はハズレ能力とか役立たずとかいわれ馬鹿にされてる。

 まあ、もともとぼっちで底辺だった評価がさらに低くなっただけだ。気にすることはない。

 しかし、笠島のあの態度には不安を覚えずにはいられない。いつか弱い能力者を独裁者のように縛り付けそうだ。


 そんなことを考えていると廊下側……今は廊下は存在していないが、もともと廊下があったところのほうから藤井がこちらに来た。


「横川くん」

「あ? なんか用か?」


 藤井が俺の席に腰掛ける。もともと、この席の主は最初は机で寝ようとしていたのだが、やはり寝心地が悪いのか今は窓側の暖房によしかかり眠っている。

 まあ、そんなことはどうでもいいとして、一体どうしたのだろうか。


「その……これからどうすればいいのかなあ?」

「まあ、死なないようにするしかねえさ」


 不安げにたずねる藤井に俺はそう答える。


「やっぱり……戦うしかないのかな……? 私、怖いよ……」


 藤井が今にも泣きそうな顔ですがるようにきいてきた。一度だけ少し立ち直ったが、やはり異世界にきて、あの怪物を見てそうとうまいっているのだろう。戦うことに……いや、ここにいること自体に恐怖しているように見える。


「なにいってんだお前?」

「……え?」


 ならば、こんなときにかける言葉は同情の言葉でも慰めの言葉でもだめだ。一時的には気が和らぐかもしれないが、そんなものはただの嘘っぱちの安心。いつか壊れてしまう、そんな気がした。


「戦わないといけないなんて誰が言った? 逃げるのが悪いって誰が決めた? 怖いのなら逃げればいいし、戦いたくないのならほかの人に任せればいいだろ。必ずしも真正面から向かわないといけないなんていう道理はねえよ」

「それでも……みんなにわるいよ……」


 バツが悪そうに藤井が言う。


「死なれた方が迷惑だ。戦うのが怖いならずっとここに引き篭もってろ」


「そっか……」


 藤井はうつむく。顔が見えないのでどんな顔をしているのかわからない。

 ……言いすぎたか?

 しかし、数秒後吹っ切れたような笑顔を見せた。


「……ありがとう」

「……結構ひどいこと言ったつもりなんだが」

「ううん、私のこと思って言ったことなんだよね?」


 ーーいや、それは違う。俺はそんな気遣いが出来るやつではない。そこまで器用でもないし、そもそもそんなことする理由がない。


「馬鹿か、これはアレだ。お前に死なれて少しでも効率が下がるのが嫌なだけだっつの」

「あはは、そういうことにしといてあげるよ。じゃあおやすみ」

「……ああ」


 藤井は自分の席に戻っていった。その後ろ姿は先ほどの触れれば壊れそうな、危うさを感じるものではない。

 どこか強ささえ感じられた。

 何を思ってのことかは知らないが、吹っ切れてくれて結構だ。

 願わくば俺が働かずしてことが済んで欲しい。


「さて……」


 どうせ寝付けないのなら能力の確認でもしておくか。

 笠島は信用できないし、他の奴らにしても同じ。チカラに魅せられた奴と付き合うのは得策ではない。

 ほとんど誰もあてにならない今、自分で保身できるようにするしかない。

 建築の能力を試そうと、外で一軒の小屋を想像し、念じる。

 しかし何も起こらなかった。魔力が減った様子もない。

 ……材料が足りないのか?

 近くの木を魔力を使い、何本か整地するように設定する。

 木は突然発光しだし……消えた。


 それからさっきと同じように小屋を建てられるように念じる。

 すると、設定した場所が発光し、あっという間に小屋が出来ていた。


「……時間にして数秒もかからなかった。もしかしたら、結構応用できるかもしれねえな」


 上手くいけば戦闘にだって使えるかもしれない。

 ようやく見えてきた希望に俺は安堵する。


「……寝るか」


 おそらく忙しくなるであろう明日に備え、俺は寝るために教室へ向かった。



 ◇◆◇



 あれから数時間たち、日が昇ってきた頃。

 俺たちは早く起きていた。理由は、拠点作りと戦闘をするためだ。

 俺みたいな戦闘に役に立たなさそうな能力持ちは拠点を作ることになっている。


「じゃあ狩りに行くよ!」


 笠島は相変わらず調子に乗っていた。今日から狩りに行けるので相当浮かれているみたいだ。

 戦闘向きな、発動も早くて敵を攻撃できそうな能力の連中が率先して狩りに行く環境……完全にゲーム感覚だな。

 しかし、こんな軽率な行動をして大丈夫なのだろうか?

 まあ強い能力者ばかりが募っているので大丈夫だとは思うが。


「ここに残る人たちはちゃんと仕事やっておくんだよ?」


 なにか上から目線で言われたような気がする。正直仕事残してバックれたいが、もう少し様子を見ておこう。

 笠島を含めたオタクたちは我先と戦場へ向かっていった。そして他の戦闘員も不服に思いながらもその後をついていく。

 食料や素材の調達に必要なことなので仕方なく……という感じだろう。その割には笑顔だったような気もしたが。まあ、どちらにせよ俺が行かなくていいのは嬉しい限りだ。働くのは最低限で十分。


 残されたのは俺含め五人、藤井と神崎……あとは知らない奴だ。

 藤井は転移持ちだが、無理を言ってここに残ったみたいだ。転移には制限があってあまり役に立たない、みたいなことを言ったらしい。まあ、あの精神状態なら妥当な判断だとは思う。


 この五人の間に沈黙が流れる。一人一人が何やら思いつめているみたいだ。


「こほん! じ、じゃあ自己紹介含しようか?」

「……なぜクラスメイトなのに自己紹介が必要なのでしょうか?」

「……」

「……悪かったな、覚えてなくて」

「……誰?」


 神崎の質問に藤井はこちらを流し目で見てきたので取り敢えず謝る。それで三人は理解したみたいでこちらを見ていた。

 しかし、藤井以外は俺を覚えてないようで首を傾げている。まあ、友達いないから忘れられても仕方ないだろう。だ、断じて悲しくないからな?


「君はもう少し友達作る努力をしようか」

「余計なお世話だ。それができればもうとっくにやってる」


 藤井を含めた四人が苦笑いをする。なんだよその反応は、傷つくぞ。

 話は逸れてしまったが、藤井によって自己紹介に戻った。


「……俺は横川輝明、能力は建設と整地だ」

「二つ持ちかよ……。凄えな」


 能力が複数あるのは珍しい……らしい。二つ持っている人はこのクラスでは俺含め三人ほどしかいない。

 まあ、これは後に言うことにしよう。

 俺だけは、笠島に称号しか紹介されなかったので二人は驚いている。藤井は知ってるからか反応してないし、神崎はいつもの無表情だ。


「私は藤井咲加、能力は転移です」

「僕は神崎守、能力は解析です」


 まあこの二人は知ってる。なにせ藤井はよく話しかけてくるし、神崎は学年トップ。有名にならないはずがない。

 他の二人も知ってるみたいだ。


「俺は速水はやみかおる、能力は錬成だ。よろしくな!」


 この男、どうやらリア充というものに該当するみたいで物凄くフレンドリーだ。物語に出るのなら主人公になれることだろう、爆発すればいいのに。


「わ、私は風見かざみしずかといいます。能力は結界です。よ、よろしくお願いします」


 背が低い女の子がどもりながら自分の名前と能力を言う。守ってあげたくなるのはなぜだろうか?

 速水も温かい目で風見を見ていた。お前は父親かよ。


「じゃあ拠点建てっか?」

「いや、その必要はねえぞ」

「「えっ」」

「横川くん、それはどういうことですか?」


 風見と速水が驚いたように振り返り、神崎が理由を尋ねてくる。


「お前らは楽できるっつてんだよ。……いいか? 今から見せることは誰にも言うなよ? 万が一にも言ったら……」


 今の俺はどんな表情をしているのだろうか。少なくとも笑顔ではある。

 それもここにいる全員が「うわぁ……」と引くくらいにはイイ笑顔だったはずだ。


「分かったな?」


 もはや、悪役じみている俺の問いに四人はこくりと頷いた。

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