彼らの冒険は幕を閉じ、彼は新たな想いを胸に。
今回、詰め込みすぎた感が否定できない。
でででででも仕方ななないよね!僕の文章力じゃこれが限界なんだよ!
本拠地から一番近い砦。北の砦の防衛を任されてから数日が経った。もちろん速水たちとは連絡を取れてないし、風の噂を耳に挟んだわけでもない。
ただ、自分のところに来ないでくれ、と祈るばかりの日々。
出発する前、笠島が言っていた言葉を思い出す。
『あ、そうそう。砦の中には入らないほうがいいよ。じゃないと、命の保証はできないからネ』
言葉の真意はわからない。ただ、それがただの虚言ではないことは本能で感じ取れた。
あそこまで豹変した笠島は、一体なにをするのかわからない。砦の中に入れば、おそらく俺の命はないだろう。
「はぁ……」
あれからはと言うものも、俺は無気力に毎日を消化していた。
笠島の傘下にはいったことに後悔しているのか、はたまたあいつらという存在を失って絶望しているのか。
自分の心のはずなのにわからない。
『心理というものは、思考のものさしで測れるものではない』
どこかの漫画でそんな言葉を見たような気がする。
まさにそれは、今の俺の状態だった。
「なんで、こうなったんだろうな」
深いため息とともに、無意識に弱音が溢れる。
理由は全て、分かっているはずなのに。あいつらを助けたかったから、そうだったはずなのに。俺が本当にそう思っていたのか分からなくなってしまう。
いつから自分はこんなにも弱くなったのだろうか。
以前の自分ならば、こんなことさえ気にしなかっただろう。
こうなったのも、全部笠島のせいだと思って仕舞えばきっと楽なはずだ。それに、裏切った理由もあいつらは分かっているはず。だけど、それでも彼らを結果的に裏切ったという事実は胸を締め付けた。
「……責任、取るしかないか」
俺のつぶやきは、誰に届くこともなく、風でかき消された。
***
俺は砦の塀の近くの小屋で惰眠を取っていた。
どうせ、ここには誰も来やしない。仕事なんてサボってしまおう。
俺は無駄な仕事はしないのが一番だと思っているからな! それに、笠島の監視はあるが、実際ここにはいないので、あいつのいう通りにしてやる道理もない。
薄い布っきれを床に敷き、仰向けに転がるがなかなか寝付けない。
今頃あいつらはなにしているのだろうか。
特に風見が心配だ。あの天使を泣かせたら速水はぶっ殺す。
神崎は、いつも通り理屈とか並べてそうだ。
藤井は、まあうん。多分元気にやってるだろう。
……あれ? ひょっとしなくても俺いなくても大丈夫そうじゃね?
やめよう。これ以上考えたら鬱になりそうだ。
まあ、あいつらならきっと、絶対生きているに違いない。御都合主義的な何かで。
そう思いながら寝返りをうつ。耳を地面につけたからか、聴きなれぬ音に気づいた。
「足音?」
おそらく人数は三、四人くらいといったところ。
「一体誰だよ。こんな早朝から」
一応ここの警備が俺の仕事だ。愚痴を吐きながらも、体を起こし外へ向かう。
早朝だと思っていたが、太陽はもう真上まで上がっていた。
そして、足音のした方向へ意識を向ける。
誰かを確認するのにたっぷり数秒使ったところで、俺の思考が停止する。
「……よう」
そこには、俺が今一番会いたくない人物がいた。そいつはぶっきらぼうに会釈する。
「帰れ」
一秒でも早く目の前の人物から離れたい一心で、俺は小屋へと戻ろうとする。
しかし、振り返るとそこのは土でできた壁が立ち塞がっていた。どうやら、帰してくれるつもりはないらしい。
「お前を連れ戻しに来た」
真っ直ぐな瞳に思わず目をそらしてしまう。思わず、その甘い選択に乗ってしまいそうになる。
だけど、そういうわけにはいかない。
「帰れと言ってるだろ」
「!?」
速水の周りを気でできた杭が取り囲む。すべて、矛は速水に向いていた。もちろん俺のスキルで作ったものだ。
「なんでだよ! 俺たち仲間だったじゃないか!」
「……その言葉は確か笠島のときも聞いたことがあるな。無条件で人を信じるとか頭疼いてんじゃねえの?」
ズキリ、と胸が痛んだ。
できれば、速水たちの仲間に今すぐにでもなりたい。
今更あいつらに合わせる顔はない。それに、笠島は危険すぎる。俺が戻れば、こいつらと一緒に笠島を倒しに行くことになるだろう。こいつらを行かせるわけにはいかない。
これは俺のわがままだということは分かっている。それでも、こいつらを失いたくなかった。
「いい加減馬鹿なお前でも分かっただろ? 騙されてたんだよお前は」
「……!?」
自分の心とは違う言葉を発するのは、意外にも簡単だった。
俺の答えは間違っているのだろう。仲間を裏切るなんて最低だ。
こいつらのこころに枷をつけるくらいなら、最低な俺が辛くなる方がいい。
「もう一回言う。帰れ」
「……ことわ、る」
必死に絞り出したようなは掠れた声で速水が言う。
「お前の両足を折ってでも連れて行く」
どうして、そんなに辛そうな顔をするのか、俺には分からなかった。
速水が一本の剣を錬成する。俺が剣を作ってもらった時と同じものだ。そして杭を斬りはらう。
戦ってでも止めるつもりらしい。
俺もしまっていた剣を取り出す。
剣を構え、双方睨み合うのが数分続いた。どちらも動けないでいる。
そして、俺の心情を表すかのように、冷ややかな風が吹く。
その瞬間、速水と俺は地を蹴った。
「うおおおおぉぉおおお!」
「はぁぁぁあぁああああ!」
雄叫びとともに俺は剣を振り下ろした。
***
数時間もの間、俺たちは剣を打ち合っていた。。いや、実際は数十分だったかもしれない。
互いの体はもうボロボロで、立っているのすら辛い状態だ。
俺と速水は体を引きずりながらも剣を打ち合う。
速水は俺を連れ戻したい一心で。一方俺は、速水たちを巻き込みたくない一心で。
そしてとうとう、決着はついた。
「か、は……」
共倒れという形で。
互いに体力は無くなった。速水は意識を失っている。かくいう俺も、体を全く動かせない。
動いてくれと必死にもがくが、ピクリともしなかった。
体がどんどん冷たくなってくる。意識が遠のいて行く。
もう、ダメだ。速水、やっぱり俺はお前らに頼らねえといけねえみてえだわ。
「すま……ん」
そして、ありがとう。
その言葉は口から出すことは叶わず、俺の意識は沈んで言った。
***
目が冷めれば、俺は教室にいた。自分以外に誰もいない。
「おめでとう。合格だよー!」
「……は? え?」
教室の入り口から、クラッカーを持った笠島が入ってきた。そして、パァンという破裂音とともに、クラッカーの中から紙吹雪が飛び出す。
何が何だかわからずに、素っ頓狂な声を上げる俺。
そもそも俺って、死んだんじゃなかったっけ。
「あ、どーも。わたくし神ともうしまーす」
「は、はあ……」
いきなりキャラが変わった笠島にどもってしまった。というか何言ってんのこいつ。笠島ではないとは思っていたが、神は絶対違うだろ。
「えーと、これどういう状況っすか?」
「ん〜? ああ、これね。ほら、僕って神じゃん?」
いや、神じゃん? って聞かれても……。
「せっかく人を作ったのに、どんどんねじれた方向に育っちゃったんだよ。だからね、僕はある人物を探してたんだ」
「そ、そうですか」
ある人物と言われても分かるわけがない。というか、こいつ誰。すごいギャップでもはや誰かわかんないんだけど。
いや、そんなことはどうでもいい。それよりも聞かないといけないことがある。
「速水たちは無事なのか?」
「ん〜、まあ、死んではないね」
よかった。安堵の気持ちでついため息が出る。
あいつらの安否も分かったことだし、俺の今の状況について聞いてみるか。
「そこだよそこ」
「は?」
何言ってんのこいつ。なんかあん時の不気味な笑顔じゃなくて、普通のイケメンでイライラするんだけど。
「君は自分より速水くんたちの心配を第一にした。こんな人間はそうそういないよ」
「はあ……そうっすか」
「僕はこんな腐った社会の中『どんな状況下でも優しくいられた人物』がいるのか探していたんだよ。まあ、君はだいぶ捻くれてたみたいだけど。合格ラインぎりぎりだったよ」
合格して意味あるのかよ。てか、俺が優しいわけねえだろ。むしろリア充には辛辣だよ俺。
「数々の実験の中、異世界という危険な場所で自分以外のことを第一に考えていたのは君が初めてだったよ。まあ、文句を言うとすれば、『自己犠牲なんかしてかっこいいと思ってるの(笑)』だね」
笠島はそう言いながらケラケラと笑う。
「自己犠牲カッコ悪いよー」
「うっせ」
教卓をバンバン叩きながらバカ笑いする神。殴りたい笑顔というのはこれを指すのだろうか。うん、きっとそうだろう。
「それで、ルールとしては、君の願いを一つだけ叶えることになってるんだ。金銀財宝、超能力、魔力相続。どれでも選んでいいよー」
「……そうだな。じゃあ、『お前が異世界に送った人間を元の世界に返すこと及び、お前がもうこんなことをしないこと』でいいか?」
そう言うと、神は「それじゃ二つになっちゃうよ」と首をかしげる。
「じゃあ、言い直す。『今俺が言った願いを叶えること』。これが俺の願いだ」
「うわっ。ずっりぃー」
「なんとでも言え。俺は強欲なんだ」
神は困ったような顔を見せるが、「ま、いっか」と開き直った。いいのかよ……。
「君は、卑屈で捻くれていて腐ったような人間だけど」
「おい」
「それでも、優しい心を持っていると分かって僕は嬉しいよ」
優しい心、ね。
俺は別に自分が優しい心の持ち主だと思ったことはない。俺なんて捻くれ者が優しいわけがない。
だけど『心理というものは、思考のものさしで測れるものではない』。俺がそう思っているだけなのかもしれない。
神が言うのならばこんな捻くれ者でも優しくあれたのだろう。
「じゃあそろそろお別れだね。記憶は消させてもらうよ。寂しいかい?」
「バカ言え。お前にはいい思い出がない」
「ま、そうか」
それじゃ。その声とともに教室は歪み始め、どんどん白くなっていく。
たとえ、記憶がなくなっても、俺は不器用で捻くれてて優しいままでいれるだろうか。
そんなことを想いながら、ゆっくりと目を閉じた。
「また寝てる……少しは友達作る努力しないの?」
「そうだな……。ま、いつかな」
END
今回、最終回でした。詰め込みすぎて無理矢理な終わり方でしたが、自分の書きたかったエンドをかけて満足しております。
横川輝明を応援してくれた方、ありがとうございます。
できれば次回作とかも見てくれれば嬉しいかなーなんて思ってみたり。
この作品を読んでくださった皆様方、本当にありがとうございます!