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クラス転移。〜もらったチートは建築士!?〜   作者: 瀬戸浩也
典型的なプロローグのようなもの。
1/16

意図せずして、彼ら彼女らは異世界に召喚される。

 異世界転移ものは初めてです。

『このごろ、全国で集団失踪が相次いでいます。幅広い年層で失踪者が出ていますが主に中高生から行方不明者が出ている模様です。警察によるとーー』

「行ってきます」


 ニュースが入っていたテレビを消し、俺は家を出る。そして脇に置いてあった自転車のスタンドをあげペダルをこぐ。


「寝みぃ……」


 俺は欠伸をしながら、通い慣れた通学路を通り学校へと登校する。

 なんて言うのだろうか、俺の日々は変わりばえの無い平凡そのものな日常だった。


 普通に学校に行き授業を受け、家に帰って寝る。そんなサイクルで日々を潰していた。


 友達がいない俺にとっては刺激なんて無縁なものなのである。


 だが、不思議とこんな日常が嫌だと思ったことはない。刺激は欲しいと思うことはあるが、多分あったとしても面倒なだけだ、と諦める。


 ……俺、中学生で刺激を諦めてるよ。もっと希望もとうよ。


 さて、俺の名前は横川輝明よこがわてるあき、友達がいない以外はほとんど特徴のない唯の中学二年生だ。

 身長は中肉中背、顔も平均的だと自分では思っている。

 学力は……まあ地理以外は基本的にいい方じゃないだろうか。


 部活はやっていない。やっても部内でのコミュニケーションが取れると思えない。それにやる気もない。

 なにか部活をしているのは青春の一ページになるのかもしれないが、そんな面倒なことに時間を使いたくない。友達のいない俺には青春なんて無縁なのだ。


 自転車置き場に自転車を置き教室に入り、席に着く。そしてもう一度欠伸をする。


 教室に入ったからといって、自分に話しかけてくるやつは殆どいない。

 いつものように各自でグループを作り喋っているので俺に話しかけることはしないのだ。


 喋る友達もいないし、やる事もないので机に突っ伏して少し睡眠をとることにした。昨日は夜まで小説を読んでいてあまり寝れていないのだ。


「また寝てる……少しは友達作る努力しないの?」

「あ?」


 五分ほど仮眠を取っていると誰かに話しかけられ、顔を上げる。


 今俺に話しかけてきたのは藤井咲加ふじいさいか。小学校からの顔見知り。ただし友人ではない。


 容姿端麗成績優秀、性格も良く友達も多い、クラス内では仲の悪い人を探す方が難しい。そしてクラス委員長を自主的にやるほどの徹底っぷり。絵に描いたような完璧超人。

 たまにこうして話しかけに来る。


 何故ボッチな俺にこんな奴が話しかけているのだろうか、と疑問に思ったことがあるが結局わからず考えることをやめた。


 ただ分かることは、こいつが俺に惚れているなんていうラノベ的展開はないということだけだ。俺も勘違いしていた時期があったがそこは割愛させていただく。


「寝ていることの何が悪い。眠いから寝る、睡眠は人間の三大欲求だぞ。当たり前だろうが」

「あーはいはい、またいつもみたいに睡眠時間削って小説でも読んでいたのは分かったから」

「悪かったな」

「けど自分から行動しないといつまでたっても友達できないよ?」

「……ほっとけ」


 高頻度で同じクラスになる縁って奴があるだろ?

 そういう縁で割と幼馴染って呼べるくらいの長い付き合いのあるやつ。

 それがこいつだ。


 ただし、勘違いしてはいけない、こいつは友人ではない。ましてやそれ以上でもない。


 よくこいつと親しげにしているところを羨ましがられることがあるが、そんなことは一切ない。これはアレだ、おそらく友達いない俺に同情してやっていることなのだろう。


「悪りい、朝礼まで寝る」

「え、ちょ、あと十分しかな……聞いてないし」


 こんな感じにいつも通り俺は平凡な毎日を過ごすのだとこの時の俺はそう思っていた。



 ◇◆◇



 四限目、誰もがお腹を空かし昼休みはまだかとひそかに自分の弁当に思いをよせ、集中力を切らしている頃。


「この公式を当てはまると、このようにーーー」


 数学の教師の説明をノートにまとめ、練習問題を解いていると、チャイムが鳴る。授業が終わったのか、と思い時計を見るがまだ十二時、あと授業は二十分続く。


「なんかあったのか?」

「授業免除か? ラッキーだぜ!」

「いや、そんなはずは……」


 教師が授業免除ではないと否定する。じゃあ一体なんだ?


《おめでとうございます。君たちは選ばれました》

「なんだ!?」


 誰もが不思議に思っていると、スピーカーからどこか機械的な声が響く。機械から出ている声だから、というわけではない。もとから感情が存在してないような、そんな声だった。


 内容に違和感を感じる。今のは何か景品が当たったような言い回しだった。こんな抽選で当たったと言っているような放送は学校ではしない。


 教師もこれが異常だと思ったのか、内線電話で職員室に連絡を入れようとする。しかし、繋がらなかった。


「うおっ!? なんだこれ!?」


 何やら絵文字のようなものが教室の中央からこぼしたインクが広がるようにゆっくりと浮かび始める。


「誰かのいたずら?」

「なによこれ!?」

「ひぃッ!」


 文字が浮かび切ったのか広がるのをやめた時には円形の……魔法陣のようなものになっていた。

 そしてそれは地面から浮かび上がり、閃光を放つ。


「うおっ!?」

「ま、まぶしっ」

「ヒィィィィ!」

「お、おちつーーー」


 教師の下田が何か言おうとするが、言い終わる前に俺の意識はプツンと切れた。


《それではゲームを始めます》



 ◇◆◇



「んん……」


 目を開けると、机に突っ伏していた。いつの間にか寝ていたみたいだ。あれは夢だったのか……

 これは下田先生に怒られるな、と思いながら顔を上げる。

 そこにあるのはいつもと変わらぬ見慣れた光景ーーではなくクラスメイト全員が気を失っているところだった。

 クラスメイトだけではない、下田先生も黒板の下の壁に寄りかかり気を失っていた。

 一応窓側の席も確認するが、起きている人はいない。


 ふと、違和感を感じた。


「おいおい、嘘だろ……」


 窓の外を見てみると、コンクリートで出来た建物ではなく、森のようなものが見える。

 四方が森に囲まれ、この教室があるところは広場のようなスペースだった。

 どういう状況かは理解できないが、教室ごと森の中に移動したみたいだ。


「ん……教室……?」


 声のした方を見ると、クラスメイトが次々と起きだすところだった。


「……夢?」


 外の様子に気づいていないのか誰かがそう呟く。しかしそいつの考えもすぐに改めることとなった。


「何処だここ?」

「そ、そうよ! 何処よ!?」

「落ち着け……」


 意識を取り戻した下田先生が窓のあたりを見つめながら答える。しかし、こんな状況で落ち着けるわけがない。ぶつけられることのできない恐怖のはけ口は下田先生にいく。


「落ち着いていられるわけがねえだろ!」

「そうよ! 気づいたら森の中にいるのよ! 意味わかんない!」


 確かにそうだ。意味不明な放送がなり、RPGの魔法陣のようなものが現れ気づいたら見知らぬ場所。落ち着いていられるわけがない。


「念のために点呼を取る。荒井ーーー」


 下田先生が出席番号順に点呼をとっていく。


 この間に状況の整理をするか。

 今自分の持っているものは、カバンの中に生徒手帳に勉強道具、体操服に五千円入った財布。あと最近買ってもらったスマホだ。


 服装は授業の時と変わらず学生服。


 一応スマホを確認するが、圏外だった。アンテナが一つも立っていない。相当山の奥へと来たみたいだ。


「なんなのよ一体!」


 クラスメイト、荒井が机を蹴り飛ばす。どうやら相当に参って錯乱しているみたいだ。


「落ちつけと言っているだろう!」


 生徒達の点呼を終えた下田先生が大声を張り上げ注目を呼びかける。


「何が起こったのかは私もわかっていない。だが、こんな状況で、こんな状況だからこそパニックになっても良い事なんて無い。みんな冷静に状況に対処するんだ」


 確かにそうだ。大勢がいるところで冷静さを欠くと周りまで混乱し最悪の場合被害がでる。

 荒井はまだヒステリックに陥っているみたいだが、その他のクラスメイトは一旦落ち着きを取り戻した。


「……なんでしょうか、これは」


 一人の男子生徒、神崎かんざきまもるが呟く。振り返ってみると彼の手にはカードのようなものが握られていた。

 なぜ彼がそんなものを、と不思議に思い何も入っていないはずのポケットを探ると彼の持っているものと瓜二つのカードが出てくる。


 そのカードには自分の名前が載っていた。


 ステータス

 名前 横山輝明 

 称号 開拓者

 能力 建設 整地


 ……能力? 称号? なんだそれは。

 そう疑問に思っていると、電子音のようなものが頭に響き視界にウインドウのようなものが出てくる。


「能力の……説明か?」

「うおっ、なんだ!?」

「今頭の中で音が……」


 どうやら意識すると出てくるものなようで、他人に見えないウインドウのようななにかが他のクラスメイトも見えているみたいだ。


 一度、能力の説明のウインドウを閉じるように念じる。ウインドウはあっさりと消えた。だが、すぐにには別のウインドウが出てくる。


 横川輝明 Lv1


 レベル? ゲームかよ……

 ウインドウを下にスライドしてみると、細かいステータスまででてきた。レベル1なだけあって貧弱なステータスだが。


「なんだよ……これ」


 俺のつぶやきに答えるものはいなかった。それもそうだろう、誰もがこの状況を把握していないのだから。


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