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zip.32 一つの騒動の終わりと

それから、数日が経過した。

屍人の群れの騒動も一応の終結をみて、町から逃げていた住人たちも、ちらほらと戻り始めていた。とはいえ、戻って来るものはまだ少数であり、町が元の活気に戻るまでは、もう幾ばくかの時間が必要であった。


今回の事件を解決し、生き残った冒険者には、全員高額の賞金が授与された。

そのおかげで、寂しくなっていた雄也たちの懐具合も、一応の安寧を得たことになる。


そのお金を元に準備を整え、コーケンの町の近くにある、異空ダンジョンに挑戦しようかとも考えたのだが、今回の騒ぎで疲弊した体調を回復させてからの方がよいという意見が出て、ひとまずはリョトウ村に戻ることにしたのであった。



コーケンの町の墓地。名も刻まれていない共同墓地の墓に、アイリスが花をささげて、死者の冥福を祈る。あの事件のあと、小さな頭蓋骨と漆黒の鎧の破片は、町の墓地に埋葬されていた。町を恐怖に陥れた奴らをなぜ埋葬するのか、と、住民や、仲間を失った冒険者たちから反対の声が上がった。

「こういう場合、きちんと埋葬しないと、また化けて出ることになりますよ? そうなることを防ぐ為にも、形式って大事だと思いますけど」

そんな彼らに、そういったのは他ならぬアイリスである。現役のシスターの言葉ということもあり、反対の声は小さくなり、共同墓地への埋葬となったのであった。


「さて、それじゃあ他に用事はないな? だったら出発するぞ」

墓地から出てきたアイリスが馬車に乗り込むと、御者をしているロッシュが、皆に声を掛ける。アイリスが墓参りをしている間に、帰り支度は終えており、あとは馬車で数時間かけて村まで戻るだけである。

村に帰る馬車の荷台には、ヌシとなりつつあるスピカが座っている他、家具やら食料などが積まれている。今回の報酬で、生活必需品などを買い足した結果であった。

荷台に乗ったアイリスに、スピカがすり寄る。最近馬車に乗っているとき、アイリスの膝枕で横になることの多いスピカであった。定例となったそんな光景を見たあと、リセラは馬車の傍を歩きながら、雄也に声を掛ける。

「そういえばさ、リョトウ村で骨休めすることは決定として、休みの時に雄也に頼みたい事があるんだけど」

「頼みごと?」

「そう。もうしばらくしたら、コーケンの町も賑やかになるだろうし、そのときに買い物に付き合ってもらいたいんだけど。たまには、二人きりで、ね」

「買い物か……わかった。でも、二人きりは難しいんじゃないか? アイリスとか、普通についてきそうだけど」

「んー……やっぱそうよね」

ま、アイリスならよいか。と、リセラは呟きながら、それじゃ、その時になったらよろしくね。といって、雄也の肩をたたいた。



コーケンの町を出て街道を進み、馬車はリョトウ村に向かう。

根拠地に着いた雄也たちは、新しい冒険に出る前に、しばしの休息をとることにしたのであった。




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