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zip.24

リョトウ村の郊外の空き地―――雄也たちは、とりあえずの建物として、いくつものプレハブサイズの小屋を密着して建てた、長屋風の建物を仮の住処とすることにした。

それぞれの部屋の大きさは6畳程度であり、食事場所、浴室、空き部屋(倉庫)、ロッシュの部屋、スピカの部屋、雄也の部屋、リセラの部屋、アイリスの部屋と、8つの部屋がある。その食事場所で、昼食をみなでとりながら、雄也たちは今後の方針を決めようとしていた。テーブルを囲んで椅子に座る一同を見渡し、まずはロッシュが口を開く。

「さて、ひととおり生活できるようになったわけだが、いま俺たちは、若干の問題に直面している。それがなにか、嬢ちゃんたちは分かるか?」

「問題? んー……ひょっとして、お金が心もとないことかしら」

「正解だ、リセラの嬢ちゃん。安く手に入れたとはいえ、土地の値段はそれなりのものだし、その前に馬も買った。建物や馬車の荷台を雄也が作ってくれたおかげで、借金するほどの出費はしなかったが、懐が寂しくなったのは間違いない」

「ふうん……アイリス、具体的にはどのくらい拙そうか分かる?」

リセラに話を向けられ、アイリスは、そうですね……と呟き、顎に指を当てながら考え込んで、返答を口にする。

「いきなり明日からのご飯に困る、なんてことはないですけど、数ヶ月間働かなかったら干上がっちゃうレベルですね。当面は、クエスト報酬の一部等を貯金に回して、有事の際に使える資金作りは、する必要があると思いますよ」

「ふーん、なるほど。じゃあ、クエストを探しにコーケンの町に行きましょうか? せっかく根拠地が出来たけど、本格的にお金を稼ぐなら、コーケンの町に数泊して、クエストをこなした方が実入りがよいでしょうし、この家を利用するのも、ちょくちょく、って感じになるのかしらね」

「まあ、そうだろうな。コーケンの町や近くの異空ダンジョンで集中して稼いで、休みたくなったら、この家で休むってことで良いんじゃないか?」

リセラの言葉に、雄也も賛同し、こうして、雄也たち一行は根拠地から出て、コーケンの町に出稼ぎに行くことに決めたのであった。

それで話は終わりかと思われたが、その前に、ロッシュが再び口を開いた。

「と、そのまえに、留守にするときの防犯対策とか考えないとな。正直、モンスターよりもこの村の奴らの方が、危ないと思えるからな」

「そうね。まず、『私有地に付き立ち入り禁止』の札を立てるのは当然として、侵入者を迎撃できるトラップも仕掛けておこうかしら。もちろん、死なない程度には加減をするつもりだけど」

ロッシュの言葉に、リセラは楽しそうにそう賛同する。

「いや、そこまでする必要はあるのか? 盗られて困る貴重品は、この家の地下にでも隠し金庫を作って入れておけばいいだろうし、そもそも、冒険者の家に空き巣に入ろうなんて発想を持つ人間は、そうそう、いないんじゃないか?」

「甘いわね、雄也。この村の人間は、ずうずうしい奴らが多いもの。あたしたちが家を留守にしたら、勝手に上がって、物を持っていくに決まってるわ!」

どれだけ信用無いんだよ、などと雄也は思うのだが、いきなり押しかけてきて、金よこせ、土地よこせ、などと言っていた村人たちを信用できないという、ロッシュやリセラの心情も間違いではないのであった。

(まあ、そのあたりは、おいおい時間をかけて歩み寄るしかないんだろうな)

雄也自身は、村人に悪感情をそこまで持っていないが、ロッシュやリセラはハッキリと敵愾心を持っているようだ。スピカはロッシュの傍を離れようとはしないし、当分は、雄也とアイリスが、村人とのコミュニケーションをとる役どころになりそうであった。


宿泊費を1日でも浮かせるという考えから、雄也たちは、その日は出発の準備を行い、翌日の朝にコーケンの町に向けて出発した。

なお、雄也たちの私有地には、リセラの物理トラップが多数仕掛けられたのだが、それがどうなったかは、また後日の話である。



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