表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

zip.16

コーケンの町に着いて2日目。

王都ベイクへ向かう護衛クエストの続きの為、雄也たちはシマショー商会の倉庫を訪れた。

倉庫には馬車が6台。行方不明になった2台の馬車の補充にと、商会のほうで新たに用意したようである。

コーケンの町から王都へ輸送する小麦、肉、その他もろもろが詰め込まれており、さらに、近場のリョトウ村をはじめ、行く先々の村々でも、物資を加えて王都ベルクに到着する予定であった。

護衛する面々は『鉄酒』『紅』と雄也たち『割れない卵』であるが、今回の編成に異議を唱えた者達がいた。

「減った馬車を増やしたのは構わん。じゃが、それならば護衛の人数も増やすべきじゃないか?」

「別に、頭数を増やせとは言わないさ。商会にも都合があるだろうからね、だけど、新しく増やした2台分の護衛料は、水増ししてくれるんだろ?」

ドワーフのギノルスは護衛の人数を増やせと、女戦士アイギーニは、報酬を増やせと、それぞれ商会員につめよっていた。

「やれやれ、あまり出かける直前に、揉めないで欲しいんだがなぁ」

「だけど、あの二人の言い分も分からなくもないわよね。てっきり、ここまで護衛してきた馬車4台をそのままかと思ったら、1.5倍だもん。人手か報酬か、増やしてもらってもよいとおもうけどなぁ」

言い合っているアイギーニ達を見て、ロッシュがそう愚痴ると、傍にいたリセラがそう反論した。

「まあ、確かに俺たちにしてみればそうかもしれないが、商会の立場からすれば、厳しいところだろ。行方不明になった物資の補填やらなにやら、出さなきゃいけないところで、俺たちに出す報酬を増やす余裕はないだろうな」

だから、諦めてさっさと出立準備に取り掛かった方がいいのにな、と、ロッシュはそんなことを言いながら、雄也のほうを見る。

言い争いで、出立準備が進んでいない『鉄酒』『紅』のグループと違い、雄也は御者のデンチーと共に、積んだ物資のチェックを行っていた。雄也と一緒に、アイリスも出発準備を手伝っている。

「雄也さん、あちらの馬車のチェック、終わりましたよ」

「ありがとう、アイリス。これで、馬車のチェック自体は終わりって所か」

「いやはや、助かりましたよ。物資の最終チェックも終わりましたし、これでいつでも出発できますね」

「ええ。とはいえ、まだまだ時間がかかりそうですけど」

そういって、雄也はいっこうに進展を見せていない、お話し合い、の現場に視線を向けた。

「ですから、私たち商会としては、皆様方全員を一まとめとして契約を結んでいたのです。ですから、行方不明で欠員が出たとしても、王都までは御三方のパーティで護衛を完遂してもらわないと困ります」

「そんな契約、聞いてないよ。そもそも、ここまでの道中であたしたちがバラバラに行動してても、何も言わなかったじゃないか」

「ええ、それでも充分、護衛任務は務まるかと思ってましたので」

「だが、実際はこの体たらくじゃ。一まとめというくくりなら、馬車2台を失った時点で、わしら全員のクエストは失敗ということになる。ここまでの護衛がただ働きになるのが嫌なら、せめて王都までは何とかしろ、か。ふん、減った人手をそのままに送り出して、また行方不明が出なければよいがな」

言葉という武器で皮肉の応酬をする様子を、雄也たちは遠巻きに見て溜め息をついた。


結局のところ、護衛役の補充も、報酬の上乗せもなく、6台の馬車を護衛して王都ベイクまでの道のりを出発したのは、それから数時間後の午後のことである。

今回は安全を第一に、6台の馬車を『鉄酒』『紅』『割れない卵』の三つのグループが一緒に守ることになり、移動速度もゆっくりである。

「ったく、しみったれた仕事だね、こりゃ」

集団の前方を守るのは、『紅』の面々であり、アイギーニはまだ不満げなようすで、馬車の隣を歩いている。

一方、最後尾は『鉄酒』が守ることになっており、雄也たち『割れない卵』は、6台の馬車の中央付近を守る手はずとなっていた。


「今日は遅い出立ですし、この調子だと、今日はリョトウ村に泊まることになりますかな」

6台ある馬車のうち、前から3番目の馬車、その御者のデンチーがそう言って、道の先を見る。王都へ繋がる山道は、今のところは緩やかに、稜線に添って続いていたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ