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幼女「にぃに、ごっこ遊びするんよ」

作者: じゃけ

ふみ「夏休みなんよー!」



清「そうだな」



さや「おにー、どっかつれてけよー!」



清「めんどいからやだ」



ふみ「むー!せっかくバイトお休みなんだから、おでかけするんよー!」



さや「そうだよー!こんなゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴしてるととーにょーびょーになっちゃうぞ!」



清「古文単語覚えれそうでいいじゃないですか」



ふみ「わたしたちがわからないことは言わんのんよー」



さや「ばつゲームはプールつれて行くのけいだ!」



清「お前ら浮き輪ないと泳げないだろ。膨らますのめんどいから却下」



さや「じゃあ公園」



清「暑い」



ふみ「ジャスコ」



清「突然の死」



さや「おにーひまだよー!ひまーひまー」ジタバタ



ふみ「ひますぎて、にぃににもふもふこうげきしちゃうかもなんよ!かみの毛でもふもふ!かみの毛でもふもふ!」



清「チクチクかゆいからやめなさい。トランプとかなら、やってやらんこともない」



さや「おにーおとなげないからやー」



ふみ「にぃにがストックシャッフルしてるの、わたしたちきづいてるんよー」



清「……」



ふみ「そうだ!にぃに、ごっこ遊びするんよ!」



清「ごっこ遊び?なにごっこよ」



さや「うーん……、お馬さんごっことか」



清「お馬さんごっこ?ストーリーどんなんよ」



さや「おにー馬がちょーきょーを重ねてエリザベス女王杯をめざすおはなし」



清「競馬かよ??しかも最終目標が地味すぎるだろ!第一エリザベス女王杯は女馬しか出走できないし」



ふみ「……ふみをちょーきょーするん?」



清「いや、しねーから。お馬さんごっこは却下で」



ふみ「じゃあ、家族ごっこするんよー」



清「家族ごっこか……」



ふみ「はいやくを発表するんよ。お父さんやく、にぃに」



清「……まぁ、順当だな」



ふみ「お母さんやく、さや」



さや「まかせろ!ぼせいあふれるあたしのぼでぃーでおにーをメロメロにしてやるぜ!」



清「仮にお前に母性があるのであれば、母性の定義が変わってしまう」



ふみ「ふみ、ばぶちゃん」



清「懐かしい言い方するなwww赤ちゃんのことな」



ふみ「よし、はいやくもきまったし、はじめるんよー!」





清「ただいまー」



「…………」



清「あれ……?さやー、ふみー?」



「」オギャーオギャー



清「なんで返事しないんだ?おかえりくらい言ってくれてもいいだろ」



さや「アハハハハハ!アハハハハハハハハハ!!」



ふみ「オギャーー!オギャァァー!!」



清「何やってんだ!!そんなにふみを振り回してちゃ危ない!!」



さや「もうどうだっていいのよ!」



清「何てことを……!」



さや「…………」



清「……一体、何があったんだ?」



さや「うふふふ……!おしまいよ。もうこの家はおしまい!!」



さや「……ほらぁ、見てぇ清さん」



清「……」



さや「この部屋、もう家具も食器も何もない。冷蔵庫も、戸棚の中も空っぽ。清さんどうしましょう?今晩のご飯がないわ……。私たちの『ふみか』でも食べちゃいましょうかねぇ!!」



清「だからやめろって!!

……っ、だからどうしてこんなことになったんだ!」



さや「株よぉ……。知り合いのトレーダーに勧められた銘柄を買ったら、ひと月でこのザマ」



清「俺に相談もしないで……!」



さや「あなたの貯金も、定期預金もみぃんなパァ。はぁ……、昨日までの日々は幸せだったわ……。一瞬だけど、資産が7000万を超えたのよ。一寸先は闇とはよく言ったものね」





ふみ「カットなんよー!!」



さや「あー、疲れた。とくに顔が」モミモミ



清「……」



ふみ「にぃにお疲れさまなんよ。お水でも飲むんよー」



清「……ストーリーエグくね?」



さや「そうか?おもしろいじゃん」



ふみ「今のしちょーしゃは普通のさくふうでは満足してくれんのんよ。みんな刺激をもとめてるんよ!」メラメラ



清「株の話とか、いったいどこでおぼえたんだよ……」



ふみ「細かいことは気にせんのんよ」



さや「おっ、これ次の台本?」ペラリ



ふみ「そうなんよー!」



さや「」フムフムオォオスゲーマジカヨ



ふみ「ほら、はやくにぃにも読むんよ。お父さんにぃには後編からキャラが立つから、しっかり台本よんでセリフ覚えんといけんのんよー!」



清「」ペラリ



清「俺めっちゃセリフ多いじゃないか!」



さや「メインキャラなんだからあたりまえだろ?」



ふみ「むしろ、今までろくなことしか言えてなかったことにおどろくべきなんよー」



清「……」



ふみ「よし、準備はいいんね?じゃあ、にぃにのセリフから始めるんよー!」





それからの庄野家は、形容するなら地獄。奈落の底に突き落とされたような日々が続いた。家を訪ねて来る何人もの金融に殴打罵倒され、長年勤めていた会社にも連絡が行き、仕事をクビになり、家賃25000円のボロアパートに引っ越すことになった。




手元に残ったのは8桁を超える借金のみ。




清「いらっゃいませ。お弁当温めますか?」




そして、俺はコンビニでアルバイトを始めた。店長に嫌味を言われ、年下のバイトにこき使われる。一ヶ月、ひどいときには朝10時から早朝5時までを週6で働いて給料は18万。前の職場の半分にも満たない給料から、借金返済のため14万が引かれる。



清「……ただいま」



さや「あっ、おかえりー」ゴロゴロ



清「……晩飯」



さや「はぁ?何言ってんの?あんたが作るに決まってんじゃん」



清「……」



清「出来たぞ」



さや「えぇー!またチャーハン??」



清「……文句あるなら食うな」



さや「……へぇ、そんなこと言っていいんだ?」



清「……」



ふみ「……ふぇえ、オギャー、オギャー!」



さや「よしよし、起きたのね」



さや「はやくしてよねー、お腹すいたー!」ドン



清「……」イラッ



さや「あたしがいないと、この子はどうなるのかなー。あんたはずっとコンビニいるし、ご飯もオムツも出来ないしぃ~♪」



清「……」



さや「ほら、こんな不味いメシ食えないからさぁ、さっさとコンビニ行ってくる!あんたの小遣い月に3000円だけど、カップ麺くらいなら買えるっしょ」



清「……」イライラ



さや「さっさと行けよ!!ふみのおっぱい出なくなったら、テメー責任取れんのかよ!!」



清「……セブンプレミアムでいいか?」



さや「バカじゃないの?カップ麺っつったらラ王っしょ!ラ・オ・ウ!」



清「……」



さや「黙るだけならゴキブリでも出来ますぅ~!行けっつったら行けやゴラ!!ゴキブリ以下かテメーは!!」



清「……」ガチャッ



さや「おーよちよち。ふみもあんなやつ嫌いだよねー。このまま帰ってこなかったらいいのにねー♪」



清「……」ハァ



清「」ウィィン



清「これ、お願いします」



さや「あれ?き→よ→し→さんじゃん」



清「……」



さや「何してんの?こんな時間に。ようすけさーん!今日きよしシフト無いよね~!」



ふみ「無ぇ無ぇ。は?きよし何で来てんの?」



清「普通に買い物です」



さや「あっそ、ツマンネ。お会計281円になりまぁ~す」



清「……千円から」



さや「テメー釣り銭のこと考えろよ!それでもコンビニ店員かよ!!小銭無ぇんならここ来んじゃねーよ!!」



清「……すみません」



さや「そんなんだから、前の会社クビになんだよ」



清「……あの、箸もらえますか?」



さや「」チッ



さや「はい、あざしたー」



清「……」ウィィン



清「ただいま」



フォン、ゴッ!



清「……」ポタポタ



さや「遅ぇよ!!カップ麺買うのにいつまでかかってんだよ!!!」



清「……」カチッボッ



清「ぞうきん……」フキフキ



清「ほら、出来たぞ」



さや「……ふん」



清「(礼も無しかよ……)」



さや「」ズゾゾゾ



さや「ごち。ごみよろしく」



清「……」ハァ…



別に今日が特別といったわけではない。あの日から毎日、庄野家はこんな感じである。



……正直、もう疲れた。



出来ることなら、このまま消えてなくなりたい。痛みもなく、朝起きたらぽっくりみたいにあっさり逝きたい。



でも俺が消えてしまうと、さややふみまで路頭に迷わせてしまう。一児の父として、大黒柱として、それだけは絶対に避けなければならない。


今の俺の生きる糧は、皮肉にも少しづつ減ってゆく借金。今月末にまた、大きな引き落としがある。それを乗り越えれば、また一歩完済に近づく。楽しかった、幸せだった日々に歩みよることができるのだ。





ふみ「カットなんよー!にぃに、さや、お疲れさまなんよ!」



さや「おにーお疲れ!いい演技だったぜ!」



清「」シクシク



さや「……おにー、泣いてるのか?」



清「……うるせー」グスッ



さや「おいおいおにー。これはおしばいなんだぞ。わりきっていかないと」ペチペチ



清「うるせーうるせー!」チューン



ふみ「にぃに、いい子なんよ。さやもふみも、ほんとはあんなこと思ってないんよ。ちゅーんせんのんよー」ヨシヨシ



清「……」コクリ



さや「おぉ、さすがは慈母星を持つようじょ」



ふみ「それじゃあ、次のシーンいくんよー!」



そして、今日も俺はコンビニへ向かう。最近、あの口の悪かったバイト2人組が来なくなった。タバコが高校にバれ、停学処分とともにバイトを強制的に辞めさせられたらしい。



少しづつ職場の雰囲気が良くなったような気がする。他のバイトの人とも少しづつ話せるようになってきた。



さや「清さん、お疲れさまです!」



清「あぁ、お疲れ。今から休憩?」



新入りの子だ。



さや「そうです!いや~、今日ホント大変……」



清「これくらいで音を上げてたら、明日の福楼祭を乗り越えられないぞ」



福楼祭とは、毎年3月下旬に行われる秋の実りを願うためのお祭りである。



さや「……やっぱ、福楼祭の日って忙しいんですか?」



清「この町は若いヤツが多いからなぁ。客も多いし、ガラもよくない」



さや「あぁあああぁあ何でシフト入れちゃったんだろあたし……」



清「しかも、たまにとんでもないヤツがくる。去年は、エヴァンゲリオン初号機と碇シンジくんが揃ってご来店なさってだな……」


さや「ええええっ!どういうことですかそれ!?」



ふみ「清さん、そろそろお願いします」



清「タイミング悪いなぁ」ポリポリ



さや「お疲れさまです!頑張ってくださいね!」



清「あぁ。ありがとさん」



さや「よかったらまた、初号機の話聞かせてください!」キラキラ



清「おう」




清「ただいま」



さや「……」



清「メシ、作るから」



さや「……」



清「」トントンジャーカンカン




清「できたぞ」



さや「メニューなに?」



清「ピカタとコンソメスープ」



さや「……」



清「……」



さや「」モグモグ



清「」モグモグ



さや「……ごちそうさま」



清「おそまつさま」



最近の1日は、こんな感じで流れてゆく。少しづつだが、家族というものを取り戻せているのではないかと感じるようになった。



明日は福楼祭、そして大きな借金の引き落としの日だ。



清「ラッシャッセー、アザラッシター!ラッシャッセー、アザラッシター!」



さや「ラッシャッセー、アザラッシター!ラッシャッセー、アザラッシター!」



ふみ「よし、そろそろ2人休憩行っちゃおうか!」



さや「はーい!」



さや「……想像を絶してますね」ゲッソリ



清「去年経験して慣れたつもりでいたけど、やっぱキツイのはキツイな」ゲッソリ



さや「……あああっ!!」



清「どした?」



さや「今週のメインレース……、ソシアマゾンが負けてる……!」



清「競馬やるのか」



さや「あたしはやらないんですけど、大学生のカレピッピが」



清「カレピッピw」



さや「大勝負するって言ってたのに……。うわぁあかわいそう……!早くバイト上がって慰めてあげないと」



清「……まぁ、ギャンブルには気をつけな。適度に遊ぶ分にはいいが、ハマりすぎると地獄を見ることになるぞ」



さや「はい!よくいって聞かせます!カレピッピに!」



清「www」





ふみ「カットなんよー!」



清「……なんか、好転してきたな」



ふみ「きゃくほんのちからなんよ!」フンスー



清「てかお前ら、一体1人で何役出来るんだよ」



さや「ほら、あたしたち才能あるから」



ふみ「もうじき子役のお仕事がくるんよ!そしたらいそがしくなって、にぃにのもとからはなれていくんよー」



清「」



ふみ「じょうだんなんよー。ちゅんせんのんよー」



さや「まったく、おにーはあたしたちがいないとダメダメだからな」ウンウン



清「おまえら、今日のおやつは肝油一個な」



ふみ「わぁぁぁあ!にぃにごめんなんよー!」



さや「かんゆ一個じゃぜんぜんはらのたしにならねーじゃねーか!」



ふみ「さや、早くにぃにのごきげんをとるんよ!」



さや「マァー」スリスリ



清「奇声を発しながら近づくんじゃない」



さや「ほれおにー、ここに横になりなさい。ひざまくらで耳かきでもしてあげよう」



清「おまえらあざとい」



ふみ「……おやつはくれるんね?」



清「今日はぽたぽた焼きです」



さや&ふみ「よろこびのマァー!」





ふみ「よし、お疲れさん!それじゃあ清さん上がっちゃおう!」



清「了解です!お疲れ様でした!」



ピークが早めに終わり、俺は11時に上がることが出来た。福桜祭である今日は、朝まで帰れないつもりでいたので、かなりうれしい。



軽い足どりで家路につく。今日みたいな日は、自然に鼻歌が零れてくる。サビの手前で背後からの足音に気づき、音量を弱めた。まったくタイミングの悪い。これも鼻歌あるあるの一つであるのだが。



ふみ「……おみゃー、庄野清さんかいの」



清「そうですけど……」



ふみ「ワシは、ミュウミュウファイナンスの者じゃ。お前もよう知っとるじゃろう」



清「(いつもの借金取りか)何の用です?」



ふみ「」バキッ



清「ーー!!」ドサッ



ふみ「わりゃあ、何しらばっくれとんじゃボケェ」



清「……何のことです?お金ならちゃんと「とぼけたことぬかすなやドアホォ!」バキィ



ふみ「引き落とし日を覚えとったことだきゃあ褒めちゃろう。じゃけど肝心の金がにゃーいうことはどういうことなぁ!!のう!!」



清「……ですから、何を言われてるのかさっぱり。お金ならちゃんと口座に入っているはずです」



さや「ほぅ……。おみゃー、ええ度胸しとるのぅ。まぁええわ。今日はもう遅ぇけぇとりあえず引いちゃる。明日朝一番で銀行に確認しに行けぇ」



清「はぁ……」



さや「……もし、ワシらに返す金がなかったら、わりゃあ覚悟しとけよ」



清「」ガチャリ



清「いつもと変わらない家の風景」



清「やっぱり、あの借金取りの確認ミスだろう。もしくはバイト先からの入金が遅れたか」



清「……ん?テーブルの上に紙が」



東京 第11レース

桃花賞

3枠4番 ソシアマゾン号

単勝 325000円



清「うぁあぁああさやぁぁぁぁあああ!!!!!」



さや「ひぁ……!」



清「……テメー、これはどういうことだ」



さや「……な、なんのこと」



清「この馬券だ!!」



さや「……!」



清「」ドガッ



さや「痛っ!」



清「もう一度だけ聞く」



さや「」ブルブル



清「こ れ は ど う い う こ と だ」



さや「……ちょっ……、と、ふやそうとして」



清「」ゴッ……ゴッ……



さや「いつっ……!きよ……し……!やめてぇ……!」



清「」プルルルップルルルッ



清「もしもし?ミュウミュウファイナンスの方ですか?大変申し訳ないのですが、今からうちの家に来ることって可能です?はい、はい。お待ちしております」



さや「なん……で、きんゆう、よぶ……ひあぁっ!」




さや「痛い……!おねがいやめ……」




清「」




さや「ごめんなさい……!ごめんなさい!ごめんなさい!!」






ピンポーン



清「」ガチャリ



ふみ「おう、来ちゃったぞ。なんの用なぁ」



清「申し訳ないのですが、諸事情で借金が返せなくなっちゃって」



ふみ「……おみゃー、自分が何を言うとんか分かっとるんか?」



清「これからの返済プランの相談をしたいな、と思って」



ふみ「相談?どういう相談なぁ」



清「とりあえず今月の支払いは来月の末まで待っていただいて、来月から毎月ミュウミュウファイナンスに30万づつお支払いする、ということに」



ふみ「……おみゃー、それ出来るんか?おみゃーの毎月の給料なんぼなぁ?」



清「18万です」



ふみ「じゃろうが。毎月30万言うて、残りの12万はどっから湧いてくるんなぁ。しかも、おみゃー他のとこからもぎょうさん借金あるじゃにゃーんか?」



清「ええ。なので、こいつに稼がせようと」



さや「」ビクッ!



ふみ「……ほぅ、なるほどの。ちょっと電話ええか?」



清「どうぞ」



ふみ「もしもし、人妻デリヘル『パイナップル牧場』さんですか?」



さや「!!!」



ふみ「毎度お世話になっております。新しい子を1人お願いしようとおもいまして。はい、出勤は今日ーー」



清「」コクリ



さや「やだ、やだよ?きよし、ウソだよね?こんなの冗談だよね?」



ふみ「今日からで。はい、はい。ありがとうございます。では、今から向かいますので。はい、失礼しますー」



さや「きよし、私バイトするよ?ご飯もちゃんとするし、洗濯も掃除も、もちろんふみの世話も!」



清「うぜぇ」



さや「……!」



清「お前はもう少し、金の重みを知ったほうがいい」




ふみ「と、いうことじゃ。ほれ、行くぞ」




さや「やだっ!やだぁ!!行かない!!風俗なんかいやぁ……!きよし……!たすけ」バタン




清「……」






清「おいふみ脚本んんんんん!!!」



ふみ「あのままあっさりハッピーエンドなんて、しちょーしゃは絶対まんぞくせんのんよ。ここでどんでん返しを入れるのが、ふみ流なんよ!」



清「てかさや!お前なんでそんなに平気なんだよ!なんでこの状況で変なヨガみたいなポーズしてるんだよ!!!」



さや「つかれたからストレッチだよ。つーかふつーだろ?おしばいの内容でぎゃーぎゃー騒ぐなんてがきかよ」



清「お前らプロすぎてついて行けねぇよ!!!」



清「てかいいの!?お前、風〇嬢になったよ!?」




さや「そんな細かいこと気にしてちゃ、人生生きづらいぜ」




清「何でそんなに達観できるんだよ……」




ふみ「にぃに、とりあえずさやの夫の役はおわりなんよー。にぃにには、次の章から別の役をやってもらうんよー」




清「あー、何か嫌な予感がする」




ふみ「これ、つぎの台本なんよ」




清「どれどれ……」ペラペラ




清「風〇の客じゃねーかぁぁ!!」




さや「ごちゃごちゃ言ってても仕方ねーよ。そろそろスタンバろうぜ」




清「なんかお前たくましいな」




さや「おにーは、シャワー浴びる派?浴びない派?おにーだけ浴びて、あたしは浴びずに香りを……」




清「そっちのスタンバイはしなくてよろしい!!」




さや「芝居ってのは形から入ってくもんだろ?もっとプロフェッショナルにいこうぜ」




清「なんだろう……。俺が間違ってるのか?」




ふみ「そこまでのスタンバイは必要ないんよー。二人の気持ちができたら、はじめちゃうんよー!」




さや「あたしはいつでも、じゅんびばんたんだぜ!」




清「やだなぁ……。すっげぇやだなぁ……」




清「なぁ、お前ら。今からジャスコ行かねぇか?」




ふみ「もう手遅れなんよー。はじめちゃうんよー!はいきゅー!」





清「」ソワソワ




ピンポーン




清「!」ガチャッ




さや「……お待たせしました。人妻デリヘル『パイナップル牧場』の、サキと申します」




清「やぁ。待ってたよ。上がって上がって」




さや「……失礼します」




清「その辺適当に座ってよ」




さや「(部屋、散らかってる)」







清「新入りさんなんだって?」




さや「……はい」




清「キミ、随分幼く見えるけど、ホントに人妻なの?」




さや「これが証拠です」ユビワキラーン




清「どれどれ」




さや「」ビクッ




清「……そうだね。年季の入った接合部の黒ずみ。結婚6年目といったところかな?」




さや「!!」




清「そうなると俄然、君の幼さが興奮の手助けをしてくれる。人妻なのにセーラー服のコスプレをしてくれているところもたまらないなぁ」ジュルリ




さや「」ボロボロ




清「泣かないでよ。サキちゃんのそんな顔見てると、おじさん興奮してきちゃうじゃないか」




さや「ぃっ……!」ボロボロ




清「さぁ、ベッドへ」




さや「……」ビクビク




清「早く」




さや「……はい」ズビッ




清「借金か」




さや「え……?」




清「君が僕と添い寝してる理由だよ」




さや「……」




清「」ナデナデ




さや「っ……!」




清「いい反応だ。添い寝するだけで一晩15000円じゃもったいないよ」





さや「」ブルブル




清「どう?本番やって、もっとお金稼ぐ気はない?」




さや「……いえ、主人もいますし」




清「本番アリなら、これだけ出そう」ゴホンユビ




さや「……お金の問題では」




清「尽くすタイプのいい女だね。ご主人が羨ましい」




さや「……」




清「……おやすみ」




さや「……おやすみなさい」




蒸し暑く、ジメジメした布団の中で、私は人生で1番永い夜を過ごした。






ふみ「ぅおぉおつかれさまなんよー!!」




さや「おつかれっす!」ケロッ




清「うぅう……」




さや「添い寝サービスのおみせだったんだな」




ふみ「そうなんよー!さすがのふみも、一線はこえないんよー!」




ふみ「あれ?にぃにどうしたんよ?」




清「心が……辛いです」




ふみ「しょせんおしばいなんだから、あんまり考えこまんのんよ」




さや「おにーはトーフハートだなー」ケリケリ




清「もう言い返す気力もないわ」




ふみ「さぁ、もうちょっとでクランクアップなんよ!2人とも、がんばるんよ!!」







さや「……」ガチャッ




清「おかえり」




さや「……ただいま」




さや「ふみは?」




清「まだ寝てる。昨日は夜泣きがすごかった」




さや「そう。お疲れ様」




清「朝めし、作ってあるから」




さや「……」コクリ





清「ほら、味噌汁」




さや「……出汁、変えた?」ズゾゾ




清「よく分かったな。いりこにしてみた」




さや「おいしい」




清「どうも」




さや「えぐっ……、ぐすっ……」ポロポロ




清「どうした?やっぱり口に合わなかったか?」




さや「ううん、ちがうの」




さや「私って幸せ者なんだなって」




清「え……?」




さや「私のせいで、前の家もなくなっちゃったし、生活も崩れちゃったし、清の持ってた信頼も裏切っちゃったけど」




さや「それでも、清は私たちのために一生懸命働いて、家族を立て直そうとしてくれた」




さや「……きよし、ありがとう。こんなお嫁さんで、ごめんなさい」ポロポロ




清「」ヨシヨシ




さや「ふえぇ……」ボロボロ




清「色々あったけど、やっぱり俺はお前のことが嫌いになれないよ」




清「2人で一生懸命働いて、ふみが小学生に上がるまでには借金全部返そうな」




さや「……うん!」モフー






ふみ「かっとぉ!これでクランクアップなんよー!2人とも、ほんとにおつかれさまなんよー!」




清「まぁ、最終的にはハッピーエンドになったのか」




さや「あーつかれた!おにー、早くおやつのよういしろよ」




清「へいへい」




清つぽたぽた焼き




ふみ「にぃにありがとうなんよー!いただきますなんよ!」




さや「いただきまーす」モクモク




ふみ「やっぱりろうどうのあとのぽたぽた焼きは最高なんね!」モクモク




清「そうだな」モクモク




さや「ごち!」




ふみ「おなかいっぱいなんよー」




清「おそまつ」





ふみ「おなかもふくれたし、さや、にぃに、もっかいごっこ遊びするんよ!」




さや「まってました!こんどはどんな舞台なんだ?かんごくか?らすべがすか?もしかして、や○ざか?」




ふみ「台本をみてからのおたのしみなんよ!」ダイホンテワタシ




さや「おっ!おお!そうきたか!さすが、ふみのセンスはへんたいだな!」




ふみ「にぃにもはやく、台本読むんよ!」




清「」




ふみ「ねたふりせんのんよー」ユサユサ




さや「ぬらしたタオルを持ってきた!これをがんめんにかけよう」




清「やめい!」




さや「あっ、おきた」チッ




清「もうお前らとはしばらくごっこ遊びをやりません」




ふみ「そんなこと言わんのんよ!ほら、今回もにぃににいい役をよういしたんよ!実験に溺れるマッドサイエンティストの……」




清「もう少しマシな設定にしなさい!!」






おしまい


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