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世界の崩壊で愛を誓う

作者: 白桃太郎

思いつき短編小説3です。

「突然だけど」

「うん」

「世界はあと3分で滅亡します」

「……え」

「これは誰も知りません。あんただから教えてあげるんだからね、勘違いしないでよね」

「勘違いどころか何かの間違いな気がするんだけど……」


 僕は、魔女と一緒に暮らしている。いつからいたのかわからないけど、物心がついたときには既に隣にいた。名前はリリー。

 僕は生まれてからだから…20年間と2ヶ月と10日間一緒に暮らしていることになる。その間、すべての面倒はリリーが見てくれていた。両親も親戚も友達も何もかもがいない僕の「おはよう」から「永遠におやすみ」まで、一日の話し相手は彼女だけ。

 何でいるのか、いつからいるのかもまったくわからないし聞いても誤魔化されてしまうだけ。僕はそれでもいいと思っているけど。

 ほしい物はすべて魔法。人を生き返らせたり死なせたりする以外は、願えばなんでも叶う。そんな漫画のような話が現実にあるんだから驚きだ。何一つとして不自由がない。僕はネット世界に篭っていればいいだけ。

 考えてみれば外に出たことは一度もない。カーテンすら開けたことがないので部屋は一日暗いままだ。僕が住む一軒屋の隣には大型マンションがあるので陽の光は一寸も入ってこないし。


 そんな僕に転機が訪れたのは今日。11月3日の台風が今にも近づいてくるということで街中が対策を取っている真っ只中。


「実際にくるのは台風なんだけど……」

「うん」

「台風と同時に震度20の地震がきます」

「え、いきなりインフレしすぎじゃない」

「世界では大戦争が始まり、新種の殺人ウイルスが蔓延し」

「設定詰め込みすぎでしょ」

「最後には宇宙が爆発します」

「世界規模から宇宙規模デスカ!」


 残り2分。

 いや、別に何もあせってはいないんだけど。別に死んだっていいし。

 ただ、リリーがいないのが寂し…ん?

「それって、リリーの魔法じゃ無理なの?」

「うん、だって自然災害じゃないもの」

「え?それって……」

「そう、誰かの…ってか私のお友達ね」

 リリーの友達……つまり魔女。

「大方、この世界に退屈したからポイしようとしたってとこでしょうね」

「そんな簡単な話でいいんだ……」

「まぁ、漫画のようにルールとかないから。で、残り1分だけどどうする?ひと狩行く?」

「いや、起動したらもう終わりでしょ」

「人狩だって」

「次元が違うよ!」

「私片手剣の盾と刃持つから剣もって」

「柄しかないじゃん!どう戦うんだよ!」


 実際そんな話を信じてはいない。

 リリーはいたずら好きなのでまたいつものようにドッキリーとか言うんだろうな。言ってくれるんだろうな。



 『緊急ニュースです!!世界で第三次世界大戦の開戦が…』



「ほら、始まったぁ」

「うぇぇ!?マジなの!?」

「だから言ったじゃん。せっかく3分前に教えてあげたのに」

「いいい…いつからわかってたの!?

「地球の歴史が始まったころからかな」

「なんで3分前に言ったの!?」

「ごっめーん、私物忘れ激しくて」

「物忘れとかってレベルじゃないよこれ!!」

「あ…てかなんかめまいする…強めの」

「地震だよぉぉおお!強めのめまいってなんだ!」

「あ」

「こんどはなにさ!」

「ガイアが私に『絶賛爆発中なう』と囁いている…」

「ガイアこの野郎!!しかもリアルガイアじゃん!!」


 やばい、間違いなく死ぬ。

 もうダメだ。まぁいいや。どちらの感情も浮かんでくる。

 よぉし、最期だからリリーにこれだけは伝えておこう。



「リリー、君に言いたいことがあるんだ」

「告白以外でお願いします」

「わかった、君がす……えっ?」

「だって、君からの告白は君が小さいころに、君から受けているんだもん」

「な…なんて?」

「おばさん大好き」

「それでいいんだ!!いろいろおかしいけど!」

「だから私は君といるんだよ。君が私を好きでいてくれている間は、私は君の側にいる。」


 やばい、泣きそう。

 死にたくないって思っちゃうじゃないか。


「リリー、ありがとう、大好き」

「うん。これからもずっと側にいてくれる?」

「いいよ、死んでも幽霊になって側にいる」

「わかった」



 その瞬間。

 あれだけ揺れていた地震がピタッとやんだ。



「あれ?」

「ダーーーリン!!愛してるよ!!」

 げぇ。リリーが抱きしめてきた。どういうこと?

「これはねぇ、ダーリンが私に愛を誓ってくれると魔法が溶ける仕組みなんだ!」

「は?」

「ダーリン気づいてた?この世界はねー…私たちしかいないんだよ」

「え?でもネットは通じるし、テレビだって…」

「……やっぱりダーリンわかってない。それは、2100年1月10日までの世界を私が再現したの。その日、本当に今みたいなことがあって、ダーリン死んじゃったんだ。それで悲しくなった私はダーリンを創り出したの。私たちがいるこの世界はすでに世界が滅亡したあとの世界なんだ」

「で…でも!魔女は人を生き返らせることが」

「錬金術で、創り出したんだよ」

「そんな漫画みたいな話信じられないよ!」

「魔法だって、漫画みたいじゃない?」


 ……あ、あぁ……なんかよく意味がわからない。

 ようは僕はリリーのおもちゃってことなんだろうか。

 いや、きっとそうなんだろうな。

 でも、それでもいい。 

 リリーがいてくれるなら。



「ダーリン。ごめんね。でも、ダーリンに過去を知ってほしくて」

「いいよ。もう。でももうネットもつながらないのか…」

「ごめんなさい、退屈な世界だよね」

「ううん、リリーがいるからそれでいいよ。僕らの世界はもともとこの家だけなんだし」

「ダーリン!!」



 これでめでたしってことでいいかな。




「実は夢オチでしたなんて言ったらキレる?」

「むしろリリーを斬るね」




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