やっかいな依頼
今日はここまでで。
このサイトのノベルは結構読んでますから、
レベルが上がっていくとか多技能チートとかはやりませんし、
ハーレムも作りませんが、何か人と違った新しいアイデアは
やってみたいです。どうせ主人公は死なないんだから力なり
仲間なり、運なり展開なりがチートになってしまうのすら、
避けてみたいんですが、そんな技量はありません。
いっそスパロボみたいに殺すか改造して後継機を出すのもありかもw
「初めまして。わたくし、内閣情報室資料室別室の三条と申します」
家に招き入れると、座ってもらってお茶を出す暇もなく、眼鏡の男
が名刺を差し出してきた。わたしを外で待たせるとは何事だと言わん
ばかりの雰囲気全開だ。急な来客に気がついたフィオナが慌ててお茶
を入れに行く。工藤の家は、直径十数メートルのドームハウス、家の
中に何部屋もあるわけはなく、風呂トイレ以外に大きなリビング
キッチンがあるだけだ。寝室は、ドーナツ状の広いロフトとなる。
実にシンプルで物がない家である。実はこの家、半球状のドーム
ハウスではなく、球状で残りの半球は地中に埋まっているのだが、
外観上どころか、階段を隠しているので屋内に入ってさえ気付かれない。
まるで津波対応のシェルターのようだが、本当に彼は何に対して
備えているのだろう。話がそれたが、当然、応接室なぞあるわけない
し、工藤自身も必要と思っていない。実際、世捨て人の家にいるか
そんなもの?
「三条さんですか。随分室々したややこしい部署ですね。
で、そちらのご夫婦は?顔色が悪いようですが
大丈夫なんですか?」
「こちらのお二方は、今回依頼する遺品回収のご遺族にあたります
久遠夫妻です」
壮年の男性が、頭を下げる。
「久遠宗一と申します。こっちは妻の惠と申します」
となりのご婦人も頭を下げる。しかし、二人とも顔色が悪い。
「では、お二人にかわってわたしの方から依頼の説明をさせて
いただきます。工藤さん、1ヶ月前に起きた修学旅行バスの
転落事故をご存じですか?」
「白山のやつですか?テレビで見ただけですけど覚えてますよ。
俺も大学時代にツーリングで何度か走ったことがあるんで
よく覚えてますよ」
「このお二人の御令嬢 久遠静さんは、事故に遭ったあの白峰
学園の生徒でしてね。あの事故の被害者のおひとりなんです
よ。今回のご依頼は彼女の遺品の回収をお願いしたい」
「あの事故の被害者の遺品?あの事故は、被害者の学生の遺体
こそ見つかってないようですが、手荷物等は全てバスの中
から発見されたと聞いてますが?遺品ぐらいあったのでは?」
三条は口に出すのを少し躊躇いつつ、答える。
「ご両親のお話ですと、静さんは久遠家先祖伝来の御護刀を肌身
離さず持っていたそうです。回収していただきたいのは、その
御護刀なんですよ」
「肌身離さずって、それ遺体を探せっていってるようなもんです
よね?あれだけ警察が探し続けてもただのひとりの遺体も
見つかってないですよね?状況からいって、遺体のひとつでも
見つかれば他のクラスメートの遺体も見つかるか手がかりには
なりますよね?内閣情報室が動くぐらいの圧力がかけれるなら
自衛隊でも何でも使ってもっと大規模に探せばいいでしょうに」
「意地悪なことをいうのは止めてください。それで解決するなら、
もうやってますよ。あなたに依頼を出すという時点で、そんな
手段で解決できることでないことではないことを我々が理解
していることはお分かりください」
「その先は、わたしの方から説明したほうがいいですかね」
「ねこさん、まだいたんだ?」
「わたしのことおまけかなにかと思ってません?今回の依頼は、
久遠家のことを知った皇室の方々から、うちの方に相談された
ことから始まってるんですよ。寧ろ無関係なおまけは三条先輩
の方です。わたしが直接の雇い主ですから忘れないでください」
工藤は黙って眼鏡かけ直す仕草をする三条のほうを見る。
「偉そうな態度で、内閣情報室資料室別室から来たなんていうから
おとなしく聴いてたんだけど、おまけだったんだ。ずいぶん
おまけのほうがでかいんだな。ビッグワンガムかってーの」
「古いの知ってますね。今ならブレイブガムでしょ?」
「例えがマニアック過ぎるだろそれ」
「岡山はカバヤのお膝元ですから、よくみかけるんですよ」
「じゃ、やっぱ霊的存在なのか?ひとクラス丸ごと喰っちまう
なんて大怨霊じゃねえか!どこのどいつが引っ掛けてきたの
か知らんが、そんな危険な存在と関わりたくない!帰れ!」
「霊的残留物は一切見つかってませんから、大丈夫と思います
よ?たぶん?」
「たぶん?かよ!じゃあ、なんで俺んと こきたんだよ!」
「そりゃ、異世界絡みだから決まってんじゃないですか!」
芦屋寧音子は、胸を張って自慢げに言い切った。
この女どこまで工藤の秘密を知っているのだろう?