創造神エリス
「相談があるんだって?」
工藤は、真っ白い空間を訪れる。そこにいるのは青いロングドレスを
身に纏った若く美しい女性だけ。あるものは宙に浮かぶ青と白と茶と緑に
彩られた直径1メートルほどの球体だけだった。
「人間のくせに相変わらず、憎まれ口きくのね。そうですよ、
どうせ私はできない子ですよ!」
「まあまあ、これ東京土産のおいしいケーキですので、機嫌直してください」
「ケーキなんかでわたしは堕ちないんですからね!でも、ケーキはちょうだい!」
ちょろい女神である。
「で、相談ってなんだ?最新の勇者召喚については今フィオナが解析中だ。
俺もこのあと調査にパンゲアに入るつもりだけど?」
「そっちはお願いするわ。わたしも手伝うし。相談はね?、大陸改造のことよ」
「ようやく決心がついたか」
「土地がもったいないけど中央に大きな湖を造ろうと思うの。どうかしら?」
「いいけど、なんで海じゃなくて湖なんだ?真水はどうする?土を水に
物質変換するのか?」
「単純に海水から分離させるけど?」
「そんなサイズの湖なんぞ造ってたら、海水を真水に分離した段階で残った
海の塩分濃度が上がり過ぎて、海の生物が死滅するわ!素直に内海にしろよ。
それに、海抜が急に下がるのもまずいだろ。どうせ北端南端は、未到達
なんだから大陸を南北で真っ二つにしてやるよ。それと作業は俺がやるから。
お前にやらせると天地創造とかやらかして大陸移動とか沈めたりするから、
地震に津波、火山に海面変動、おまけに大規模気候変動まで引き起こすから
人類どころか魔物まで死滅して微生物ぐらいしか残らん」
「し、仕方ないわね!まあ、お任せするわ」
この女がこうまで言われて反論しないとは、ホントに影響とかは考えていなかった
らしい。
「あと内海というか大陸の中央に島とか造らんからな。神の島とか考えないように。
素直に海流と気候設定だけしてくれ」
「そっちの相談ごとは、以上でいいか。じゃあ、俺の方からの確認な。フィオナから
聞いてると思うが総勢26名の集団勇者召喚の件についてだ。まだ、召喚されてない
って聞いたんだけど、パンゲアの魔力が活性化する満月の晩が召喚日だから、次は
いつだっけ?」
「1ヶ月先よ。昨日の満月は、デシカに頼んで勇者召喚させて妨害してやったから。
邪法は所詮邪法。正統勇者様には敵わないのよ」
「勇者呼んだんだ?」
「もう十分に異常事態発生中ですからね。本当の意味での勇者召喚にふさわしい事態だわ。
安心して、ちゃんと本人の承諾を受けての召喚だから。危機解決後には地球のもとの
時間軸に記憶は消させてもらうけど戻すし、こっちで死んでも同様にする。歳は取らない
し、チートスキルもわたしの加護つけてあげたし、デシカの協力体制もバッチリのはずよ。
おまけに彼、平成仮面ライダーの主人公みたいに背が高くてハンサムでちょっと抜けてる
ところがある見どころのあるいい子よ。いつまでも中世風の勇者ってのは古いのよ!
時代はヒーローを求めているのよ!」
どうやら正式な勇者を召喚したようだが、実質色物くさい予感がする。手間のかかる子
じゃなければいいが、まず間違いなく変身スキルは実装していそうである。仮面ライダー
なら、バイクを移動に使ってもついて来れるからいいかとしか考えていない工藤であった。
「今回の集団エセ勇者は、勇者召喚するために故意に地球で事故に会わせて死ぬ状況に
追い込まれている。精神支配の解放条件はわかっているし、俺の都合もあるんで今回は
勇者召喚はしてもらわないと彼らが時空の狭間を漂うことになるんで困る。それじゃあ、
全員回収する準備をしなきゃならんので、行ってくる。お邪魔したな」
そう言い残すと、工藤は『パンゲア』に降り立った。