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白い世界で




 意識が飛んでいる。

 しばらく真っ白な空間を漂っていると、ちらほらと記憶がちらつく。

 ああ、今気づいた。これは初めて能力を手に入れたときのことか。


――七年前。

 あんとき俺はまだ能力も無い平凡なヒーローにあこがれるガキだった。

 そんときクラスでいじめが起きた。

 いじめた奴の主犯格は親がヤクザの組長だった。

 だからだれも逆らえなかった。

 最初は俺の友達が狙われた。

 その時はよく俺とそいつともう一人の友達でよく遊んでいた。

 最初の標的の友達は、物を壊され、つばを吐きかけられ、殴られ。

 一週間もするといじめられた俺の友達は学校に来なくなった。

 次はいじめられていたそいつと仲の良かった俺の親友が狙われた。

 そいつがいじめられて一週間ったた頃に俺が先生に言おうといった。

 俺は先生に言った。

 そしたらそいつのいじめはなくなるどころか増える一方。

 先生に抗議した。なんで助けてくれないんですか、と。

 先生は言った。助けたら私が酷い目にあうから、と。

 警察にも行った。

 ヤクザは警察も掌握していた。

 警察も助けてくれなかった。

 そのまま一カ月たった。

 俺はそいつになんでお前は転校しないんだ、と聞いた。

 そいつは、たぶん僕が居なくなったら心冶がいじめられるから耐えるよ、と言った。

 なら俺も転校するから、と言った。

 そいつはそしたら他の人がいじめられちゃうじゃん、と言った。

 自分を助けてくれないものを守ろうとしたのだ。

 俺はそこまで聞かされて分かった。

 自分も結局そいつを助けてはいないではないかと。

 他力本願のまま願うだけ。

 こんなんじゃただ見てるだけの奴らと一緒じゃないか。

 次の日、いじめられてる友達を俺は助けに行った。

 そいつは驚いたような顔をして、次にとても悲しそうな眼をした。

 そいつは、なんで来ちゃったの? と言った。

 俺は、我慢できなかったから、と言った。

 次の日から友達は助かった。

 標的が俺に変わったから。

 俺は物を無くされた。

 だから俺は反撃をした。

 物を取った奴らをたこ殴りにした。

 次の日、最初にいじめられてた奴が学校に来た。

 家にヤクザの人がいっぱい来て脅してくるのだという。

 今学校を不登校になったら若のせいになってしまうではないか。

 若が学校にこいと言っている、といったらしい。

 そう言って学校に行かされた。と最初にいじめられた奴は話してくれた。

 その日からいじめの内容はかわった。

 俺の友達を使うのだ。

 親がどうなるか、家がどうなるか、と言って脅して心冶を殴らせるのだ。

 心冶は周りの奴らを殴り倒した。

 その日からまたいじめの内容は変わる。

 本人なんていじめない。

 周りの奴らに火の粉が言った。

 俺は拘束されて友達二人が殴られるのを見させられた。

 俺はやめろと叫んだ。

 だれも止めない。

 だれもやめない。

 みんなへらへら笑うだけ。

 ヤクザの息子も。

 ヤクザの息子の取り巻きも。

 先生も。

 クラスメイトも。

 俺はそこで気付く。

 悪いことやった方が幸せになれるのだと。

 いじめれば憂さ晴らしができる。

 それを協力すれば標的にならない。

 それを黙認すれば被害は来ない。

 これが――この世界。

 

 俺は親父に話した。

 親父は、そうか、と一言だけ呟いて、その後お袋と仕事に行くと言って出て行った。

 その次の日、お袋は帰ってこなかった。

 もう帰ってこないのだと分かった。

 次の日、親父の後を尾行して出て行った。

 向かった先は仕事場ではなくヤクザの息子の家――ヤクザの本家だった。

 そこで俺は見た。

 親父が、返してくれ、と頼んでいるのを。

 それは、お袋の死体だった。

 俺は、びっくりして声をあげてしまった。

 そこにいた全ての瞳が俺の方を向く。

 俺は難なく捕まった。

 そして親父に対する人質として。

 俺を人質に交渉――いや命令が下された。

 

「息子を殺されたくなかったら自殺しろ」

 

 俺は、やめろと叫んだ。

 親父は最後にこう言った。

 絶対に悪に屈するな。お前は悪い事はしていない。悪いのは世界だ。

 そうして親父は自分で首に刃物を当てた。

 親父の首からは大量の血が出て行った。

 もう――親父は動かなかった。

 

 その後、俺はヤクザの家に奴隷以下の立場で住まわされた。

 毎日殴られ、蹴られ、飯もほとんどもらえず、ただただ生きて殴られる日々。

 それが半年続いた。

 そんな中、俺は死を考えた。

 その時自分の中の何かが変わって――能力を得ていた。

 次の日、そのヤクザの家は滅んだ。

 今は人も家も残ってはいない。

 文字通り滅んだ。

 俺が滅ぼした。

 俺はその後警察に保護された。

 警察は、助けられなくてごめんなさい、と言った。

 それは奇しくも最初に会って助けてくれと言ったのを無視した警官だった。

 そいつは説明する。

 あなたは人を殺したけど正当防衛だから罪には問いません。

 と言っていた。

 そして今更になっていじめの事実を明るみにして先生をさばいた。

 その光景は、私達はあなたを苦しめたものを裁きました。だから殺さないで。と言ってるようだった。

 

 それから俺は孤児院に入れられた。

 そこでも悪に見えるものはあった。

 だから裁こうとした。

 だから能力を使おうとした。

 そしたら今日から家族になったみんなが止めてくる。

 

 結果的に孤児院は解散になった。

 そこを姉さんが救ってくれた。

 俺は迷惑をかけてばかりだった。

 そこで初めて自分の行動を思い返す。

 友達の忠告を聞かず、被害を拡大させ、結果的に親が死んだ。

 親が死んだ結果、俺は捕えられた。 

 結果、能力を手に入れて、俺はたくさんの人を殺した。

 その時思い出す。

 あの警官は俺に脅えていた。

 なんだ。

 俺が――


 ――悪だったのか。


 俺はもう人を殺さないと誓った。

 能力は変わった。

 人を殺さず、自分の中の正義を押し付ける能力に。

 だからその能力には正義だと――英雄(ヒーロー)と言う名前にはしなかった。

 その能力は弱くなった。その事に後悔はなかった。 

 今度は人を殺さないで止められると思ったから。

 その後助けられない人がいた。自分の弱さのせいで。

 そして今も助けられずにくたばろうとしている。

 

 

 これが俺の人生か。

 

 俺は、いじめを見過ごしていたような頃と何も変わって無いじゃないか。

 

 それでは、親父もお袋も死んだ意味がない。

 俺が正義を貫こうとして二人は死んだ。

 親父はそれを知りながらもその生き方を変えるなといった。

 だからまだヒーローを目指せていた。

 いや、過去形なんかにするんじゃない。

 俺を生んでくれた両親の遺志を無駄にしないためにも。

 多額の借金を背負ってまで俺を養子にしてくれた姉さんのためにも。

 不甲斐ない俺をいつだって支えてくれたこの世で一番の家族のためにも!


 サボってんじゃねーよこの糞野郎()!!!


 瞬間。俺の視界は白く染められた。

 

 


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