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天草 嗣郎

 リーダーのテレポートで明の叔父さんのところに来た。

 でも。ここは異常だ。

 潤の能力のサーカス場が出現し敵を逃がさないようにしている。

 見えるのは朱音と長身で髭を生やし、スーツで隠されているが筋肉質なのが分かるバランスのとれた身体。そして髪の色は金色。おそらく明の叔父さんだ。とても四十代半ばには見えない。

 しかし潤の姿はどこにもない。共同戦線を張る時は仲間には見えるようにしてある。

 だから潤の姿が見えないはずはない。

 明の叔父さんと戦ってるのは朱音だけだ。満身創痍という体で、いたるところにかすり傷がある。

 朱音は何も攻撃が当たらないだけの身体能力を手に入れる能力のはずだ。

 おそらく、攻撃にカウンターを狙いに行って失敗している。その時に攻撃をいくらかもらってしまっているのだ。

 よく見てみると、朱音は能力を使って危険を回避しつつカウンターを当てる。

 すると明の叔父さんは当たった個所に右手を当てる。それだけで傷が無くなる。

 これは恵の能力。

 この光景を見て、俺は驚き過ぎて動けなかった。

「ふむ。さすが『MARS(マース)』の能力者達だ。能力も使い勝手がいい」

 冷静な声に対し、激高した声で叫ぶ朱音。

「ざけんな! あたしの家族を返せ!」

「出来ない相談だ。なんで手に入れた力を返さなければならない?」

「あたしの家族だからだよ!」

 そう言って朱音は駆け出す。手には潤が残したであろうナイフが握られている。

 朱音の高速の動きにマッチした武器だ。朱音はナイフで左腕を切りつける。

 しかし代わりに腹をけられて吹っ飛ぶ。

「おい! 大丈夫か朱音!」

「おっ! 心冶じゃん。元気っぽいな。てか遅い!」

 朱音がシニカルな笑みを浮かべながら減らず口をたたく。

「そんな場合じゃないだろ! 何があったんだよ!」

「この私が説明してやろう。片桐 心冶君」

「てめえ! 何した!」

「せかさんでも説明してやる。私が天草 嗣郎だ。天草と呼べばいい。今お前の仲間を二人ばかり取り込んでな。能力がどういった物か試していたんだ」

 あくまでも冷静に答えてくる。今はそれが腹正しい。

「リーダー。潤が取り込まれるならよほどの手練れだ。朱音と明を連れて逃げろ!」

「嫌だね! 俺もはらわた煮えくり返ってるんだ! 帰れるか!」

「『朱音と明を連れてテレポートを使って逃げろ。戻ってくるな。波城 涼司』」

 俺はリーダに明と朱音を連れて帰らせる。抵抗するならもしもの時のためにしこんどいたエネルギー(たいか)を使うまでだ。

「てめ! 心冶! ふざけんな!」

 文句を言いながらも体は勝手に動くリーダー。朱音のもとにテレポート後、明に触れその後姿が消える。 

「明は大事な道具だ。連れてなど行かせん」

 リーダーが消えた後に気づく。明の姿があり続けている。

「幻覚をかけて君達のリーダーには幻覚だけ連れて行ってもらったよ。さっきの女には逃げられたがね」 

 能力に対する耐性が無い明やリーダーじゃ取り込まれて終わる。朱音は満身創痍で戦える体ではない。

 しかもリーダーはその目的を幻覚とはいえ果たしたから戻ってくることすら出来ない。

 俺一人が残るべきだった! ちくしょう!

「明! 出来るだけ逃げ回ってろ! それで暇があれば援護をしてくれると助かる!」

「りょ、了解!」 

 そう言って明は遠くに逃げ出す。

「天草さんよ! 初対面だけどさ、遠慮なくボコらせてもらうぞ?」

「貴様の能力では傷一つ負わせられまい。それに貴様の仲間の能力を取り込んだこの私に触ることができるとでも? 昔の貴様の能力ならまだしもな」

「言ってろ!」

 俺は肉体のリミッターを外す。そして正面から突っ込む。

 しかしそれでも動きについてこられてしまう。

 右手で顔面を打ちつけようとすると、相手の右腕で幻覚が実体化し、大剣となって切りつけてくる。

 それを交わして下段の足払い。それを天草に幻覚で鎧を創られてガードされる。

 その後も攻撃を繰り返す。鎧には攻撃が届くがダメージは伝わらない。

「ふむ。道化師 潤の能力は使い勝手がよい」

「てめえ吸収した能力は一回しか使えないんじゃ無かったのかよ!」

「いや、能力を吸収した場合は取り込んだエネルギーを使い終われば使えなくなる。しかし能力者ごと取り込めばエネルギーは尽きないからな。この身体能力も能力者を取りこんで手に入れた」

「てめえ! どこまでふざけてるんだ!」

 俺は攻撃を続けながら罵倒する。しかし向こうは涼しい顔でさらりと流す」

「ふざけてなどいない。人はいろいろなものを奪いながら生き続けているものだ。奪う対象が人間になっただけだ」

 俺は全力でかかと落としを頭に入れようとする。しかしかわされて床を強く打っただけで終わる。

 決め手が無い。リミッター解除した俺の動きと、天草が取り込んだ身体強化能力者の力はつりあっている。しかし敵は元々持っていた能力に潤の能力、恵の能力を持っている。

 こちらに不利な要素しかない。

「離れて! メリューサよ! 力を貸せ!」

 明が叫ぶのと同時に俺は離れる。

 そして明の能力で天草が石になる。ぴしぴしと完ぺきに石になる。

「やったの?」

「いや! 恵の能力で回復される! それと俺にはそういう攻撃は効かないから俺もろともやっていい」

 天草は淡い光を出すと石の状態から戻る。

「ふむ。あれは少し危ない。次はかわす事にしよう」

 もう警戒されてる。同じ手は食わないか!

「ではもうそろそろ本気を出していいかね?」

「っつ!」

 天草の声とともに天草の幻覚があふれ出す。三十体以上か! まだ透明化できるほどの熟練度は無いらしいが分身だけでも厄介だ。

「明! 気をつけろ! 後、さっき俺が倒したヤマタノオロチを出せ! 焼き払う!」

「了解!」

 ひび割れがいたるところに走り始める。そこから首が――

「そんなものださせるはずが無いだろう?」

 出てくる前に天草は左手で出てきていた首を触る。

 それだけでヤマタノオロチは奪い取られる。

 さらに明は今無防備になっている。そこに天草が到達する。

「お前も俺の中に入れ。蛇の能力をもらおう」

「え?」

「明ー!!」 

 そして明も天草に取り込まれる。

 そして天草は満足したように手を握ったり開いたりしながら満足そうにうなずく。

 待ってろ! 絶対に救出してやる! 

「ちくしょう! 何か方法は無いのか!」

「無いんじゃないかね? 私ならギブアップしている」

「うるせえ! 諦めんの速いおっさんと一緒にするな!」

「私は諦めるのは苦手でね。不老不死を願ったらかなってしまった。たった今」

 明もいず、仲間もいず、相手は何個も能力を持っている。

 俺は……立ち向かう手段が思いつかない。

 人を取りこんではいるが殺してはいないらしい。こんな時に使えないなんて、ホントにヒーローでもなんでもないダメ人間じゃねーかよ!

「で、君は私に倒されて能力を渡せ。私の中で永遠に生きられる。もっとも時は止まっているがね」

「ごめんだ! 誰がそんなとこ行くか! 馬鹿も休み休み言え!」

 そう言って俺は突っ込む。明の能力は近接では使えない。ならば使えるのは身体能力強化と天草自身の能力、潤の能力に限られる。

 それくらいならば対応はできる!

「ぶっ飛べ!」

 そう言って天草に回し蹴りを放つ。しかし右の後頭部をとらえたと思ったら幻覚だった。

「こっちだよ心冶君。君には広範囲攻撃が無いようから幻覚だけで十分戦える」

「うるせえ!」

「君は何回うるさいといったのかね? それしか言えないのか?」

 俺は何度も何度も天草に詰め寄って攻撃するが一発もかすらない。俺が殴るのは全て幻覚だ。

 そして俺が攻撃しに行くたびに天草からの反撃を食らう。腕に、足に、胴に、攻撃した拳に。

 それでも何とか耐えて何度も攻撃する。

「っざけ!」

「隙だらけだな。朱音とかいう女のがまだ強かった」

「がっ!?」

 俺は振りかぶった右腕を振り下ろすより前に腹をおもいっきりけられて吹き飛ぶ。

 呼吸すらできない。

「もう終わりかね? まだ全然疲れてもいないぞ? まあに三人のアスリートを取り込んだお赤毛でもあるがね」

 肺の中の空気がすべてなくなる。

 頭を打ちつけて視界がぼやける。

 反論するだけの思考も止まっている。

 反撃するだけの体力も残っていない。

 たった一撃くらっただけで。こんなのを朱音は何度も食らっていたのか……。

 また俺は何も出来ないのか? 

 ああ……いつかと同じだ。親父達が死んだ時と……。

 意識が別の所へ行く。

 ……俺はそれを止められない。


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