ヤマタノオロチ戦決着
ヤマタノオロチが完全に炎を吐き終わると、そこには何も残っては無かった。
しかしそこにあるのは敵意の無いヤマタノオロチ本体だけ。
俺はもうすでにそんなところから降りているからな。
「はあ~。危なかった。さすが伝説の怪物だよな。最初に首どうしぶつけてなかったら間違いなく対価が足りなくて死んでた」
俺はヤマタノオロチから降りて明の方を見る。
「は? なんで? 炎の中にいたよね? なんで生きてるの?」
本当になんで生きてるのって顔されてるんだけど俺。
「生きてちゃ悪いかよ。俺はあんな炎ごときじゃ死なないよ」
俺は確かに逃げ場も無くヤマタノオロチの上に乗ってたさ。
でも、ダメージそもそもをなくしちまえばかわす意味すらない。
俺は最後に自分の意思でヤマタノオロチに炎を出させた。
それなら俺の能力は発動する。俺が自分の意思でやらせたりやった事なら全て俺の能力は適応される。
つまりあの最後の炎は俺の、ヤマタノオロチを使ったヤマタノオロチと自分に向けての攻撃。今全く動かないヤマタノオロチは俺のルールの支配下にあるからだ。
「ヤマタノオロチ! 焼き払いなさい!」
「蛇の神様かなんか知らないけど俺のルールの中に捕らえたからお前じゃ動かせないよ」
「じゃあ石にしてあげるわよ! メリューサ! 力を貸しなさい!」
明のブロンドの髪が蛇にに代わる。
そして俺の方を全ての蛇が見てくる。
「朱音とかから聞いてない? 俺って能力が直接かかわってくるような能力が効かないんだ」
「う……そ。じゃあ蛇達よ! あいつにかみつけ!」
その声とともに小さい蛇がヤマタノオロチが出てきたみたいな穴の小さいやつから這い出して来る。
「『全て焼き払え。ヤマタノオロチ』」
俺がそう命じるとヤマタノオロチはこの部屋いっぱいに炎を巻きちらす。
そこには小さい蛇も俺も明もいたが問題無い。俺の能力が適応されるからな。
「これでお前の小さい蛇も俺の支配下だ。ちなみについでにお前も支配下に出来たぜ?」
そういうと明も諦めたように手を挙げた。
「はあ。完全敗北じゃない……」
「まあしょうがないよ。相手が俺だもんな」
戦ってる年季も違う。しょうがない事だよ。
「で、お前はどうしたいんだ? 両親を助けてもらいたいっていうのは分かったけど助けた後どうしたいんだ? さっきの口ぶりだともう会わないみたいな感じだったけど?」
「……だって。私も叔父さんに脅されて何回も他の人に不死身にして殺したりとかしてたのよ? 不死身だからって許されることじゃないわよ」
「そんなもん関係無い。漫画とかで使い古された言葉だけどさ、お前がなにしたかなんて関係無い。俺が聞いてるのはお前がどうしたいかだよ」
そういうと明は笑いだす。
なんのしがらみも無いようで、なんの気遅れも無いような笑い方で。だけどそこにバカにするような響きは無い。
「ホントに使い古された言葉ね。もっと言い方なかったの?」
「うるせえよ。ほっとけ。俺はリーダーみたいに天然ジゴロじゃないんだよ」
「すねないでよ。すねても特に可愛くも無いから」
「ひどくね? 助けに来たのにその言い草」
そういえば肝心の答えを聞いてないな。
「で、お前は何がしたいんだ? 早く答えないと能力使って無理やりお前の秘密暴露させるぞ」
「正義のヒーローが脅しねえ。世も末だわ」
「まだヒーロー見習だよ俺は。だから多少融通は利くんだよ」
「そういう事にしとくわ。……私わがまま言うわよ。いい?」
「早く言えよご主人様」
「そういえば奴隷なんだっけ? 忘れてた」
「不本意ながらな」
さっきまでの笑顔ではなく真面目な顔で言ってくる。
「私は両親を助けたいけど、一緒には暮らしたくはないわね」
「なんでだ? 両親がいなくなった俺としては羨ましい限りだけど?」
はっとしたような顔になっている。でも明は願いを言うのを止めない。わがまま言っているんだろう。さっきの宣言通り。
「私は両親を助けるために手を汚したりもしたけど、あんまり好きじゃないのよ」
普通の会話の中に両親が出てくるから好きなもんだと思ってたけど違うのか。
「なんでだ?」
「もともと私は蛇を召喚したり操る能力持ってたのよ。普通の蛇ならね。小さいころ金持ちって理由でいじめられてた時にお母さん達にも相談できないでさみしくて自殺しようとした事があるのよ。その時小さいころ私にまだ構ってくれてたお母さんが蛇の話を聞いてそういう友達でいいから欲しいなって思ってね」
「それで叔父さんに利用されて監禁されて能力が強くなって今に至るのか」
「大体そんな感じ。だからすごい嫌いなわけでは無かったけど、監禁されてるのに助けに来てもくれないような人達なんて嫌いって思っちゃってね」
「捕まってるんだから助けになんてこれないだろ?」
そういうと少しいぶかしげな視線で見てくる。
「まだ気づいてない?私が監禁されたのは約一か月前で、ニュースで天草財閥の社長夫妻が無くなったってやり始めたのは二週間前。おかしいと思わない?」
あれ? そういえばそうだ。このタイムラグって事は……。
「二週間近くもお父さん達は私がいない事に気付かなかったのよ。でもそれは仕事で忙しいからだろうけど、もう私はお父様達を好きにはなれないわよ。まあしょうがない事態だから私絵の人質としてだろうけど殺されないようにはしてあげるって感じかしら」
「そういう事情か。ならしょうがないかもな。無理強いもしねえよ」
「ありがと。で、どうするのよ作戦とか無いの?」
そういえば割と話しこんじゃったな。
後二人倒さなきゃいけないのに。
「とりあえずもう一人倒してからいく。柊って男だ」
「その必要はないぜ! 俺がもう倒してきた!」
いつのまにか何故かびちょびちょの柊を持ったリーダーが立っていた。
「リーダーいつの間にいたんだよ。全然気付かなかった」
こんな見るからに変人オーラ出してる奴を気づかないとわな。
「『俺はリーダーみたいに天然ジゴロじゃないんだよ』あたりかな! で、ジゴロって何だ?」
結構前から聞かれてたな。
というかはずかしっ! なんかかっこつけてたところまで聞かれてんじゃん!
俺が羞恥に顔を真っ赤にしている横で明はリーダーに質問していた。
「そういえばうちの両親をハイジャックから助けたのってリーダーさんですか?」
なんだその初耳の情報。寝耳に水だな。
「そうだけどあの時はあの叔父さん猫かぶってて監禁してるなんて気付かなかったんだ! それでニュースやってておかしいなって思って、またこの屋敷に心冶と朱音以外の奴で侵入したら明ちゃんの両親に会ったんだ! それで少しだけ話をして依頼を受けた瞬間に叔父さんに明ちゃんの両親が連れてかれちゃったから助けなきゃいけなくなって、それでこの仕事をやる気になったんだよ! ちゃんと言いきったぜ!」
一息で言う必要はないだろ! まあ大体の事情は分かったけど。
「リーダー。なんで明を監禁されてるって知った瞬間に助けなかったんだ?」
「明ちゃん気づいてないだろうけど別次元にいたから! さすがに別次元にはテレポートできないしな!」
は? 別次元?
隣で明も目を丸くしているようだ。
「は? 時間の感覚ありましたよ!?」
「叔父さんだって止める事が出来るんだからすぐ動かせるでしょ! で、パーティーがあって顔見せとかしてたから襲撃して逃がしてたんだよ!」
「そうだったの!? 異次元体験なんかしてたんだ私。ホントびっくりだわ」
「そりゃびっくりするよな。実は異次元に居ましたって言われたら。で、一つ気になるんだけどさ。なんか柊っブルブル震えて可愛そうなんだけど」
柊はびちょびちょの体を両手で抱き締めて震えている。
「ああ、こいつにルール追加してやれよ! じゃないとあったかいとこにも連れてけないぜ!」
人をこんな可愛そうな姿にしといて元気なリーダーだった。
とりあえずヤマタノオロチを使って燃やす(?)それで対価は十分なのでルールを与える。
「『私利私欲のために能力を使うな。柊』それとサービスで余った熱エネルギーの一部は熱に戻しといたから。これで寒くないだろ」
「……ありがとうよ。お前等のリーダーはホント鬼だぜ。無間地獄ってああいうの言うんだな。もう笑う元気もねえよ……」
なんだこの悲壮感あふれる奴。人格変わってね?
口笛を吹きながら視線をそらしてる奴に話しを聞いてみる。
「……リーダー。何したんだ?」
「とりあえず深海に放り込んで窒息させて炎になって逃げようとしたところをまた海に戻して、また死んで復活して炎になったところを半分だけ水につけて無力化して持ってきた!」
「「むご!!」」
リーダーは親指を立てながら言ってくる。
それに対して俺と明は同時にツッコム。
そんなすがすがしい顔してどんだけむごいんだよ……。
なんか柊のが被害者じゃん。
「ドンマイ柊。元気出せよ。悪い事するとこんな事になっちゃうから気をつけろよ?」
「そうよ頑張って! 正しく生きてればいい事あるって!」
明まで応援している。だよなどこから見ても被害者柊だもんな。
「ひゃはは! 優しさが目にしみるぜ……。もうあれがトラウマになって悪事なんてできねえよ。ルールで縛られなくてもよかったぐらいだよ」
「……なんか俺が悪い雰囲気になってるよな?」
「リーダーやり過ぎだよ! 可愛そうだと思わなかったのか!」
「そうよ。さすがにやり過ぎだと思いますよリーダーさん」
そうやってこの後、三分間ほどリーダーを攻め続けた。
「でだ、とりあえずラスボスさんの所へは俺が送るとして、明ちゃんの話だと叔父さんはどんなサイズのものでも一瞬で吸収できるらしいぜ! 何とかなるか心冶?」
リーダーがまともな事を言う。珍しい。
「打つ手あると思うかリーダー」
「俺は思いつかん! 断言できる」
自信満々に言い放つ。というかそこで自信を持つな。
「大丈夫なの? 作戦の一つも無いで倒せる相手だとは思わないけど」
「俺としてはとりあえず明にヤマタノオロチを出してもらって火責めしたいんだけど。俺なら不意打ちで何とかなるかもしれないし」
「とりあえず試してみましょう。それでだめだった時はどうするの?」
「リーダーと俺で何とかする。それなりに策はあるしな」
「策って何だ? なんか必要なものでもあるのか?」
「潤が居れば問題ない。それで、叔父さんは何してる? 雑魚が全員リーダーにやられて……そういえばどこにやったんだ?」
柊の話は聞いたが、約五十人のヤクザの方は聞いてなかった。
「北海道で一面のヤクザ畑になってるよ! 頭だけ出して!」
「「何 やってんの!?」」
また明との同時突っ込みだった。
また変なことしちゃってんじゃん!
「リーダーもう少し穏便にすまなかったのかよ!」
「出来るだけ穏便にしたよ! 怪我ひとつない体で埋まってる!」
「そういうもんだいじゃねえ! 哀れすぎるだろ! 知らない場所で首だけ出して埋められるんだぞ!」
その光景は想像するだけでシュールだ。
「さすがこの集団の『リーダー』ね……」
明も呆れ果てている。あれ? でもさりげなく俺もバカにされなかった?
「とりあえず渡井の叔父さんをどうするか考えましょうよ! 横道にそれすぎ!」
確かにそれ過ぎてるな……。でもいつもこんな感じなんだよなぁ。俺達が話し合うと。
「情報をまとめると。叔父さんは左腕ですべての物を一瞬で吸い込む能力者で、右手は吸い込んだ物を取りだすことができる能力だ」
「そういえば明、その叔父さん格闘技の経験は?」
「たしか無かったけど、他人から奪っててもおかしくないわ」
「そんなことまでできるのかよ! まさか能力とかもか?」
「能力は奪い取れるけど一回使ったら終わりね。自分自身に能力を発現させるだけのトラウマが無いんだからね」
「じゃあ何回も乱発はできないか」
「そうね」
じゃあ行きますかっと言おうとした時、遠くに部屋で何かが崩れるような音を聞いた。
「もしかして潤達が戦ってるのか! リーダー早くいくぞ!」
奇襲作戦なんてやってる暇は無い。
リーダーは重い物を飛ばそうとすると時間がかかるからな。
「オッケー!」
こうして俺達は叔父さんのもとにむかった。




