もう嫌だ…… なんで逃げらんないんだろう?
~朱音視点~
あたしは今恵と一緒に能力者のところに来ていた。
……来ていたんだけどな。
「朱音さん。誰もいませんよね?」
リーダーはレーダーを見てこの部屋には誰かいて、しかもそれが能力者で、なおかつあたしと恵の敵だったはずなんだけどな?
「ほんとに誰もいないな。リーダーが言うには誰かいるらしいんだけどな」
周りを見渡すと本当に広い。たぶんダンスパーティーでもやる場所なんだろうな。
「今だけ広くて物が無ければ普通に隠れると子も無いのになあ」
「朱音さんみたいに逃げたりする能力じゃないんですか?」
「何のために明の叔父さんが雇うんだよそんな能力者」
「ですよね~」
恵がうなずく。だよなー。
そう思った時にあたしの能力が発動する。
危険と能力が判断するとそれを回避できるだけの身体能力が手に入るという能力。
その能力が発動してって事は、やっぱ敵さんはこの部屋のなかに居るんだろうね。
「ほいっと!」
「はえ?」
恵を抱きかかえて前に飛ぶ。
あたしの能力で攻撃を感知したからよけただけだけどな。
恵は変な声を出していたが怪我はないようだ。
「で、あんたはなんなんだ? あたしの敵さん」
あたしは敵にむかって話しかける。返事は無かったけどな。
「やっぱ敵いたんですか~」
「みたいだな。たぶん隠れる能力とかそんな感じだろ。たぶん」
「はっきりしないですねえ。でもおかしいと思いませんか~? 例え隠れる系の能力でも、なんでこの部屋こんなに家具が少ないんですか?」
言われて気づく。この部屋には家具が少なすぎる。
ダンスパーティーの会場だとしても机もイスも一つも無いっていうのはおかしい。
「これで朱音さんも気づきましたね~。相手の能力は透明化の能力で、周りのものも透明化することができる。それと足音も消せると。なかなか厄介ですね~」
「んじゃどうしたらいいかね? 恵は案とかあるんだろ?」
とりあえずあたしはこういう時何も作戦は思いつけないのでタッグを組む時は相手方に任せている。
「とりあえず、この部屋から出ましょうよ~。ここにいたら敵の思うつぼですから~」
「それもそうだな。とりあえず罠があるかもしれないから気をつけとくよ」
そう言って出口まで歩きだす。
あたし達が出口までたどり着くとそこには見えない壁みたいなのがあって行く手を阻んでいる。
入ってきたところも見てみたがそっちも塞がれてるようだ。
「恵~どうするんだ? 閉じ込められたっぽいぞ」
「どうしましょうかね~?」
そういったところでまた能力が発動して攻撃の方向が分かる。
「恵! 後ろから攻撃が来るから加速するぞ!」
「はう!」
また恵は変な声を出しているけど攻撃はかわせた。
「やっぱ朱音さんの能力苦手ですよ~。いきなり加速とか怖すぎますよ~。ジェットコースターより怖いです~」
「とりあえず逃げ道が無くて敵は見えなくて、攻撃の手段もない。どうしたらいいんだよ恵」
あたしは恵の言葉をスルーする。だってどうしようもないしな。
「私が聞きたいですよ~」
あたしもたまには作戦を考えようとしたけど全く思いつかない。
そして思いつかないまままた攻撃が来る。
「あ、、一つだけ思いついたんで、わたしは力ため始めるんで朱音さん逃げてくださいね。その間おんぶしてください~」
「それが作戦か? ならいいけどさ」
あたしは恵を背負う。……こいつあたしより軽いんじゃないか? 身長は同じくらいなのに。
たたき落としたくなってきた。
まあ身長の差だと信じる事にした。
たわいもない事を考えていたら攻撃が来る。カウンターも狙ってみようとしたが、全然当たらない。
攻撃の方向を叩いても効果は無い。
もしかして透明化じゃないのか? でもそれは無いか。歩いているとたまに透明化した机とかにぶつかるし、罠があって能力が発動したりする。
「恵まだか?」
「まだです――うわ!」
恵が話してる最中に攻撃が来る。それをかわすたびに恵の奇声が聞こえる。
「あーもうむしゃくしゃする! なんなんだ一体!」
そこまで話たところで能力が発動する。
だけど今までと違う点は敵の攻撃の規模がバカでかくなっていて能力による身体能力強化がすごい強力なものになったくらいか。
それをかわすと部屋中に振動が響き渡る。
壁がきしんでひびが入り、おそらく透明化していたであろうものがガラクタとなって壁際にい出現する。
「なあ恵。これ透明化の能力だと思うか?」
「これ見たらさすがに透明化なんて思いませんよ~。おそらく衝撃波とかを出す類の能力じゃんないんですか~」
「でもさっきまでの物の透明化とか、敵が見えないのはなんでだ?」
衝撃波の能力なら透明化なんかできないしな。
「ああ今ので理解できましたよ」
「このトリック? 待ってましたよワトスン君」
「トリックを解くのはワトスンさんじゃないけどね~。敵は二人います」
敵は二人いたのか。あれ? なんかおかしいぞ?
「あ、そうだじゃあなんでリーダーの能力で引っかかんなかったんだ? おかしいだろ」
「透明化の能力で何とかなったんでしょうね~。まあわたしも攻撃開始と行きますか~」
そこでもう一度衝撃波が来る。さっきみたいなバカでかい奴。
だけどあたしがかわせない能力なんてないんだ。
衝撃波をかわしきる。それと同時に恵の声が聞こえてくる。
「『全てを治してください。『状態回帰』」
その声とともにこの部屋の全てが淡い光に包まれ、景色が変わる。
壁際に飛んで行った机やイスは元の場所に戻り、壁のひびが修復され、そして見えなかった二人いや三人が姿を現す。
全員顔が似た作りをしている。三つ子かな?
「兄貴! 見つかっちまったぞ!」
「どうするんだよ兄貴!」
「あ……あわてるな! これでもくらえ!」
一番上の兄貴らしき人が衝撃波を放つ。
それであたしの身体能力強化は発動する。
だから強化された体で衝撃波を交わし、三人の前に踏み込んで一人一発ずつ殴る。
三人とも吹っ飛んで気絶したようだ。
「ねえ朱音さん。わたしが言うのもなんですけど~。緊張感なく戦いすぎでしょ?」
「だって攻撃が当たんないんじゃなあ……」
「それもそうですね」
こうしてあたしと恵のノルマは終わった。
普通の相手だと山も落ちもなく戦いなんて終わっちまうんだよな。攻撃食らわないのにどうやって緊張しろって言うのさ。
そこでもう一つ声が聞こえる。
「おいおい。なんかオレ敵がかわいそうに見えてきたよ」
潤か。もう終わったらしいな。
「オレは一回触るだけで終わるからな。元々の能力使えばすぐ終わる相手だった。体も鍛えないで薬だけ作る能力」
「じゃあ今日の潤君の敵は麻薬作ってた人なんだ~」
「そうだよ。また一人クズ野郎が減ったぜー」
「お前はホントに麻薬が嫌いだな。無理も無いけどな」
潤は麻薬がトラウマで能力手に入れた人間だからな。
「恵には本当に感謝してんだぜ? 麻薬のジャンキー状態だったオレを助けてくれたんだしな。なんか困ってる事があったら言ってくれよ? 解決してやるからさ」
今行ったとおり潤は恵に中毒症状を治してもらって以来、恵に頭が上がらなくなっている。
見てて少しうざったいくらいにな。
「別に無いですよ~。まあ相手の方も自業自得ですしね~」
「ホントだよな。元々オレの幻覚の能力は麻薬ばらまいてるような奴に復習するためにあるんだしな」
そんな会話を聞いて潤と恵がこの孤児院にきた時の事を思い出す。
潤は自分で麻薬を始めたわけではない。
あえて言うなら生まれてきた環境が悪い。両親はヤクザグループの幹部二人で、小さい頃はヤクザの本家で暮らしてたらしい。
でも両親が麻薬開発グループに潤を差し出して麻薬の実験台になってたらしい。
で、完璧に廃人同然まで言って親に捨てられる。それを姉さんが拾って入院させて孤児になる手続きして今潤は家にいるんだけどさ。
まあそれで潤は麻薬の作用で幻覚見てたらしくて蟲とかよく這いあがってくるのが見えたらしい。しかも這いあがってくる感覚まであってすごいトラウマになったらしくて今の能力を得たんだ。
それで潤は麻薬を配ってる奴におんなじ目にあわしてやりたいって思ったらしくて、麻薬を配った事がある奴に触ると、そいつに感触まであるような蟲の幻覚を見せる能力を手に入れたわけだ。
これでさっきは敵を倒して来たわけだな。
まあ今では自分の力で成長させてサーカスみたいな能力になって人を楽しませる能力になってるけど、楽しませる能力にするのはすごい努力だったよ。
復讐のための能力を今では楽しませる能力だぜ?
まあ能力を手に入れたころは普通に麻薬のせいで動くことすらできなかったから能力の意味は無かったんだけどな。
でもまあそんな状況だったから、潤は入院しても社会に出るのは絶望的だったんだよ。
そん時にみんなでお見舞いに行ったんだよ。
そしたら隣でわんわん泣いてる子がいたからあたしとリーダーで見に言ったら、母子家庭だった恵の母親ががんで亡くなった所らしい。
それを恵は何故か恵が自分のせいだと勘違いして、治す力があればって思って治す力を手に入れたんだっけか。
その時なんか知んないけど泣いてる子がいるからようすを見に来ただけのそんとき小一のガキのところに来て「お見舞いに来てるんだったら怪我してる子とかいますよね? 治してあげます」とか言って潤の部屋に来たんだよな~。懐かしい。恵もかなり錯乱してた状況だったな。
それで治療を開始してめでたく潤は喋れるくらいには日常生活送れるくらいまで回復して、病院の人から客を取るなって事でお説教。
恵は怒られてその時生きていたおじいさんに連行されて元の病室まで戻ってまた説教されてたな。
ホントに全部いきなりだったよ。いきなり乗り込んできて、その子がいきなり説教されて、いきなり退場して、いきなり潤が回復してんだぜ?
全部唐突過ぎるだろ。あたしもその時は唖然とするしか無かったね。
それで潤は自宅療養になって孤児院に来て暮らしてたんだ。
それでも潤は恩人を探したいって言って病院にその子の名前聞きに行って住所とかも聞いてたから何度かお礼しに言ってたんだ。
そんな時に恵のただ一人の肉親が老衰で死亡。恵は身寄りが無くなっちまったんだ。
それを知った潤は姉さんに「お金が無いならオレが出て行くからどうか恵ちゃんを引き取ってください」とか言って姉さんを説得。そして姉さんは潤も追い出さずに恵を引き取ってこの孤児院に来る事になったと。
それで恵は身寄りのない自分に家を提供してくれたきっかけの潤と姉さんを恩人だと思っている。
そして潤も恵を中毒から解放してくれた恩人だと思ってる。
そしてあたしが何を言いたいかと言うと――
「潤君もすごいよね~。能力者を一回触るだけで倒すって」
「あれは麻薬に関係してたからだよ。恵だってさっきの奴らの能力破ってたじゃん」
「でも潤君のがすごいよ~。さすが私の彼氏だね~」
「ありがとう恵。ほめてくれてうれしいよ~」
バカップル超うざい。
ホントにうざい。あたし居ないものとして扱われてんじゃん。
いちゃつくのもいいけどさ。場所考えようぜ?
なんか彼氏いない歴=年齢のあたしをからかってるとしか思えねえ。
「なあ、潤も恵もいちゃつくのは二人だけの時にしろよ。見てるこっちがはずい」
「ああ、忘れてました朱音さん! 潤君に会ったのがうれしくて」
「オレの方こそ恵に会えてうれしいよ~」
ああもうやだ。
ココ戦場だよね? 潤なんてトラウマに係わる奴倒してきて真面目モードだったじゃん。
何この緊張感の無さ。激しく帰りたくなってえ来た。
なんであたしの能力はこういう状況からは逃げれないんだよ……。
もう口癖になってる気がするよ。コレ。
~朱音視点終わり~




