何でも屋『MARS』
ゴール予定日まであと三日くらいです。
クリスマスにはハーメルンに載せてる『英雄の箱庭生活』とコラボする予定です。
そのあとは気が向いたら短編やって、気が向いたら続きでもやるって感じですね
「何をしてたら明は逃げたんだ? さっきまでなんも無かったんだろ?」
俺はさっき潤に明の様子を聞いている。聞いた話だと特に大きな問題はなかったとは思う。
朱音が少し考え込む。
しかし結論は出なかったようで頭をかきながら答える。
「あたしにもよく分かんねえ。普通に話したたらいきなり逃げだした」
「どんなこと話してたんだ?」
「あー…………そういや、今までの心冶に黙ってた事話したんだ。あたし達の事はばれないようにやってたけど状況説明しとこうかなと思ってね」
なんで俺の事話しただけで逃げだすんだ? よく分かんないな。
とりあえずだ情報が何もない。これじゃどうにもならない。
「なあどうすんの? 俺だってこの状況だと動くことすらできねえよ」
俺はそう言ってリビングにそろったわが家族を見渡す。右隣にリーダー、左隣に潤、前に朱音、斜め左に恵がいる。しかしどいつもこいつも目を合わせようとしない。
何も考えて無いか。
「「「「…………」」」」
四人が四人とも黙ってやがる。
「……とりあえずリーダーはレーダーで明の場所探せよ」
「心冶のがリーダーっぽい! あっ! それにリーダーとレーダーってダジャッ!」
「いいから早くやれ。それとダジャレじゃない」
この期に及んでふざけるリーダーをはたいて黙らせる。
「探したらどうしたいのか聞きに行く。でやりたい事が悪い事なら辞めさせて、俺達の眼鏡にかなうようなら助けてやる。それでいいか?」
みんなに聞いてみる。すると朱音が答えた。
「あたしは文句なし。明と親御さん助ければ金も入るしな」
朱音はオーケーか。心強いな。
「明の両親からの依頼だったのか。まあいいや恵は?」
「わたしもいいですよ~。というか結局怪我やらなんやら私が直すんじゃ無いんですか~。それだと結局参加することになりますし~」
恵も行くか。来ても来なくてもあんま変わんないけど。どうせ治療で来てもらうんだしな。
「まあな。頼むよ。潤は?」
「もち行くぜ! むしろオレが行かないで誰がいく!」
潤も行くか。まあ潤の戦闘力がないと少し厳しそうだしな。
「まあリーダー強制的に連れていく。んじゃ明が見つかり次第出発だな」
「俺の意思は無視? まあ行くけどな!」
これで人数確保っと。
「で、リーダー見つかったか?」
「先まで公園にいたんだけどなんか連れ去られたみたいだな!」
「はい? 何言ってんの?」
ちょっと意味のわからない言葉が聞こえたような気がするんだが。
「だからさ~。明ちゃん連れてかれちゃったみたいだぜ! …………お、ここは例の叔父さんの家か」
うん。とりあえずさそんなあっさり言うのやめない? なんかしっくりというか、なんというか……。
とりあえず煮え切らない感じになるからさ。
「マジかよ…………。あのおっさんちってヤクザグループとも交流あるから何人も私兵みたいなのが来るんだぞ。オレ達も何度襲われたことか」
そんなに戦ってたのかよ。それにしても守る対象が敵ってめんどくさいよな。
「どうやって明の叔父さん――というか呼びにくいから叔父さんでいいだろ? とりあえずどうやって忍び込む? リーダーも潤も朱音も俺に隠してたんだから作戦の一つや二つあるんだろ?」
そう言ってみた瞬間に全員目をそむけた。一人も目を合わせようとしない。
「なんで誰も考えて無いんだよ! 俺にバレてなかったらどうする気だったんだよ!」
「うまい事言って心冶に考えさせてた」
潤がそう言ってくる。
「あたりまえだけどアウト」
論外ですね。その時点でたぶん俺にバレてる。
「俺だったら全員で突撃! それで敵に会ったら俺に構わず先に行け! って奴で進む」
リーダーの案は何も考えて無いと。あと残ってるのは朱音と恵か。
「恵は? わたしは特になしですよ~」
うん。いつも通り。
「朱音はなんかある? 一応聞いとくけど」
「無いに決まってんじゃん」
即答かよ。
てことは俺が考えなきゃいけないのかよ。
「リーダー叔父さんの家の地図と能力者の数出して」
リーダーは能力で地図を出す。俺達はそろって身を乗り出すと。
「了解! 確か前情報では能力者数は五人だな。で、ヤクザさん達は……五十人くらいか」
じゃあ対雑魚ように一人。能力者は五人いるから俺と潤が二人ずつ。後一人か。
残りはリーダーと恵と朱音か。戦えるのは実質リーダーだけだしな。雑魚はリーダーに任せよう。
朱音と恵でもう一人の能力者と戦わせて俺は二人と。
「よし! 地図出たぞ! ……というかいつみてもお城だよな!」
そう言ってリーダーはレーダーをみんなにも見やすいように立体ホログラムのような形にする。
そこに写された叔父さんの家はどこからどう見ても城だった。
正面に門があり、庭園があり、塔のような場所があり、ヤクザらしき人がひしめき。
いや最後のは無いか。
ホントに城だよ。そうとしか言えねえよ。
周りを見るとみんなはもう見慣れているようだ。
「みんなはもう来た事あんのか?」
「朱音と心治以外来た事あるぜ? 前明ちゃん助けようとした時にな」
あれ? なんか引っかかるんだよな。なんで助けに行ったのにそのまま連れてこなかったんだろうな?
「なあ。なんで助けたその場で明の事捕まえなかったんだ?」
「あいつ逃げるのうまくてなー。リーダーが捕まえにいっても石にしちゃって逃げるし、オレはそもそも蛇のピット器官とかうまく使ってるんだろうけど会えもしないし、恵は追跡には向いてないし誰も捕まえられなかったんだよ」
さすが『蛇神』だな。人間も石に出来るし、ピット器官を使って敵の確認までするか。
「で、心冶は能力は昔の能力の名残でそういう自分に働きかける能力とか効きにくいから石にもならずに会えたうえに、その時オレ達みんなで蛇は取り除いたりしてたから無事会えたということだな」
潤は思いだすように言ってくる。
「そういえばリーダー石になったんじゃないのか?」
「恵が直してくれた! でも実際心冶以外倒せねえって! 昔の能力が使えれば心冶はものともしないで倒すんだろうけど今残ってるのって能力に対する耐性くらいで後は『絶対法律』に変わっちまったしな」
確かにあれなら倒せると思うよ。今使ったら『絶対法律』と合わさって死者も出さないで一瞬で相手殲滅出来る自信があるよ。屋敷ごとな。
「まあないもんの事言っても仕方ないだろ? 作戦立てるぞ」
「そういえば昔の能力名なんだっけ?」
「『英雄』だよ。まあ今は俺みたいなのがヒーローなんて言ったら本物のヒーローが迷惑だよ」
「でもまだヒーローが夢とかすげえよな! ちっちゃいころって周りにバカにされて変わっちゃうのにな! まあ俺もその内の一人だったけどな!」
リーダーもそうだったのか。フォローなのかは微妙だけどな。
「そうそう心冶君のおかげでみんな人のために依頼受けたり人助けしてるんですよ~。さっきは文句言えませんでしたけど、自分はヒーローじゃないとか言っちゃいけませんよ~。応援してるわたし達が馬鹿みたいじゃないですか~」
「恵の言った通りだよ。お前はもっと自信持ってヒーロー目指せよ。あたし達はその夢サポートしてやるからさ」
これは…………励まされてるのか?
「お前もくよくよしてんなよ。まだ元気出て無いぞ」
そう言われてはじめて気づいた。俺はいつの間にいつもより元気が無い事に気がついた。
気にしてたつもりはないんだけどな。
でもまあ。こんなに励まされちゃあ、くよくよしてらんないな。
俺には仲間がいるんだ。
正義のためなんて言う周りの奴らに言ったら馬鹿にされちまうような夢に一緒にむかって言ってくれる仲間が。
この悪事を働いた方が明らかに得する世界で。
正義なんて一文の得にもならない自己満足なだけの夢に。
なんでこんな奴らがいて敵の言葉なんかに騙されたりしたんだろうな。
「そうだよな。なんで悩んでたんだろうな」
「そうだよ人を救うために黙ってた事にすらキレるなんてな、ヒーローのやることじゃないぜ」
潤があきれたようにいつものへらへらした顔で言ってくる。
「お前が悩むのなんて作戦くらいでいいんだよ。いつもみたいに能天気に構えときゃいいんだよ」
ホントに励ましてんのか、けなしてんのか分かんないな朱音は。というかお前らもたまには作戦の一つぐらい考えろよ。
「そんくらい晴れやかな顔のがいいですよ~。心冶君は。気弱な顔見せるのはお化けが怖い時だけで十分ですよ~」
お化けに関してはほっとけよ恵…………。
「ま、心冶も復活したし明ちゃん助けにいくか!」
リーダーがみんなの指揮を取る。
「さあ、行くぞ! 作戦は今決めた!」
俺も吹っ切れた。やっぱ落ち込んでるのなんて俺らしくないしな!
「心冶もこの言葉胸に刻んで行けよ! 俺達でせっかくちっちゃいころ考えたんだしな!」
小さいころ決めた言葉。
俺達が依頼を取って働くことを決めた時に考えた信条。
俺がこの能力に目覚めた時に決めた俺達の正義の基準。
それをみんなを代表してリーダーが言う。
「自分の中の正義を信じろ」
これは俺たちの原点。
この世界じゃ正しいことなんてわからない。
だから騙されることもあるだろうけど、間違ったらみんなが正しい方向に戻してくれる。だから例え間違ったことをしても問題はない。
くさいセリフだけど気にするな。それが俺達は正しいと感じたんだから。
精一杯カッコつけて言う。
「さあ、『MARS』の出陣だ」




