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リーダー登場

 今回はいつもの倍くらいの量です!

 ~明視点~

 確かにパーティーで警備も少なかったとは言っても逃げだせたのは奇跡みたいだったとは思ってたけど、心冶の仲間達が関わってるとは思わなかったわ。

 逃げてた時に心冶に会えたのも偶然にしてはでき過ぎだし。疑おうと思えば疑えるところだらけだわね。

 利用する気は無いって事とかも何も知らなければ聞いても何も出てこないしね。

 それにしてもなんで心冶ってあんな事で怒ったのかしらね。仕事上で黙っといた方がいいってことはいっぱいあるだろうし。

 でも逆になんで朱音さん達は隠したのかしら。

 あんなに怒るってことはたぶん過去になんかあったんだろうし、潤さんが隠そうとしていたって事はその事情も知ってるんだろうし。

 夜ごはんの時も心冶から連絡があって今日は帰って来ないって言ってたみたいだし、そこまでするほど心冶にとって悪い事なんだろうし。

 私にあてがわれた朱音さん達の部屋にも夕日が差している。

 この孤児院の保護者であるまゆみさんも夕方からは自分の家にいるらしく今はこの孤児院にはいない。

 朱音さんも潤さんもリビングで話し合っているらしく私は居づらいのでリビングからこの部屋に避難してきたのだ。

 今夜は朝の心冶の話に出てきた天然の人もリーダーも帰ってくるようだ。

 うーん何があったんだろ。

 すると玄関の方から誰かが入ってくる音が聞こえた。

「ただいまー! 二日ぶりの我が家だー!」

「わたしも昨日はこの家に帰ってきてないから一日ぶりですよ~」

 いかにも元気が有り余ってそうな声とフワフワした感じの優しそうな声が聞こえた。その声に朱音さん達も反応したらしくリビングから出て玄関に行く音が聞こえる。 

「まあ。心冶以外そろったし、今回の被害者本人に事情の説明とでもいくか。オレももうそろそろこの空気限界だしね」

 潤さんの声も聞こえてくる。

「何? なんだ? 問題でもあったのか? 被害者って事は例の天草さんのとこのお嬢さんも来てるのか! どこにいるんだ?」

「リーダーってホントにいつも元気ですよね…………。二日も連続で働いてたのによくこんなに元気ありますよね…………。わたしなんてへとへとですよ」

「恵もリーダーも疲れてるだろうけど問題が起きたから寝んなよ? あたしと潤じゃどうにもいい案が浮かばなくてね。もうお手上げだよ」

 朱音さんの疲れた声が聞こえる。

 私も下に言った方がいいのかな? 挨拶はしとかなきゃいけないし。

 そう思って私は二階の今いる部屋から玄関にむかう。みんな私の足音に気付いてこっちを見てくる。

「おお! この子が天草 明ちゃんか? 美人だね!」

「はじめまして。天草 明です。明って呼んで下さい。名字で呼ばれるの好きじゃないの」

 私はリーダーに挨拶する。リーダーは背が高くて精悍な顔つきをしているけどよく見ると結構鍛えていそうな筋肉質な体をしていて。、おなじく背がたかくて、整った顔をしている潤さんより、頼りがいがありそうだ。

「はじめまして~。わたし斉藤(さいとう) (めぐみ)です~。あ、わたし心冶くんと同い年ですよ~。これからしばらく生活すると思うので~。仲良くしてくださいね~」

 そう言ったのは小柄で優しそうな雰囲気で、髪はロングでゆるくパーマがかかっていて不あわっとしている。一言で表すなら----

 ----THE可愛いタイプっぽいわね…………。何気に私より胸あるし!

  胸中を隠しながら精一杯の笑顔で答える。

「こちらこそよろしくお願いしますね。恵さんて読んでもいいかしら?」

「どうぞ~。わたしも斉藤よりは恵の方が可愛げがあっていいので~わたしも明さんって呼びますね?」

「それでお願いするわ。これからよろしくお願いします」

 恵さんは朗らかに笑いながら答えてくれる。そういえばここの女の人って基本的に胸大きい? ……………………食事の問題かしら?

 でも、いい人そうでよかったわね。最初のイメージがへたれって人よりは全然いいし。

「俺は波城(なみしろ) 涼司(りょうじ)だ! 俺だけここでは十八だな。一応『MARS』のリーダーやってる。だから呼ぶ時はリーダーでいいぜ。まあ涼司だとなれなくてな。あ、イケメンでもいいぜ!」

 親指をびしっ! と前に出しながら言ってくる。…………最後のはスルーでいいわよね?

「よろしくお願いします。リーダーさん」

「はははっ! リーダー誰にでもそれやってるけど、あたしが見た中でイケメンて一回でも呼んだのって恵だけだな」

「むしろ呼ばれた後罪悪感で無性に謝りたくなっちまったしな…………。純粋な目をしながら俺の事をイケメンて呼ぶんだぜ?」

「たしかリーダーそのあと恵に頭が床に着くほど謝ってた覚えがあるなぁ。まあその後朱音にしばかれて床に頭打ちつけてたっけな~。たしかあれでリーダー頭かばって

腕折れたんだっけ?」

 潤さんが懐かしそうに言ってるけど、普通あり得ないでしょ!? 腕折れたって! ツッコんでいいの? むしろつっこまなきゃいけないの!? 

「おい潤! ちょっと明ちゃん引いてんじゃん! 俺は大丈夫だから! そのあとすぐ直ったし!」

 すごい引く私に対してツッコミを入れる涼司さん。それより気になるところは…………。

「すぐ直ったって事は回復能力者なの涼司さん?」

 私が天草財閥の家庭教師に授業をしてもらった時に教えてもらったんだけど。

 回復能力者は世界でも貴重な能力者で需要に対して供給が少なすぎるらしく回復能力者は国や会社と契約してしまえば一生高待遇が決まっていて、契約する人は多いいらしい。しかしその分大きい病院や国の軍隊が独占してしまうから、重大な病気だったとしても一般市民がその恩恵を受けることは無いらしいわ。

 しかし涼司さんは違うようで首を振っている。

「俺は回復能力者じゃないぜ? 俺の能力はテレポートとレーダーくらいだ。まあレーダーがあるからどっかに攻撃仕掛ける時に指揮を執る役って事でリーダーになってるんだぜ」

「テレポートの能力も割とレアな能力ですよね? しかも大半は事故で足が無くなったとか生まれつき足が悪い人が持っている能力だとか。でも涼司さんて足ありますよね?」

「足はついてるぜ?」

 涼司さんがそう言って足を指し出してくる。そこには綺麗に揃った両足が付いていた。

「え? どういうことですか?」

 反射的に聞いてしまった。

「俺はさあ。親父しかいなかったんだけど、その親父がマグロの漁師でさ。一緒に俺も漁船に乗ってたんだよ。その時にバカでかい嵐が来ちゃってさ~、遭難したんだよ。それで船の燃料も無くなっちゃってな~。あの時は死ぬかと思ったぜ! ま、それで親父がオールでこぎ続けてたら何とか岸には着いたんだよ。でも親父はそれで体壊してぽっくり。で、瞬間移動出来たら、周りの漁船やらが見つけられたらって事でこの能力手に入れたんだ。だから俺には足があるんだぜ!」

 涼司さんは一気に話しだす。

 ……………………とりあえず、辛い話……………………なのよね? 能力を手に入れるくらいのトラウマなんだから。

 私が能力手に入れてからいきなり能力者がいっぱい増えたけど、基本的に能力者って死にたくなったり性格が大きく変わるレベルじゃないと発現しないみたいなこと心冶が言ってたのよね。

 なのにこんなあっさり言っちゃっていいの? 

「おっ! リーダー過去話するのか! ならあたしもしとくか。能力の説明もしやすいしな」

 何この流れ!? トラウマの話になってんの!?  

「え? そんな簡単に話しちゃっていいんですか!? すごいトラウマじゃないんですか!? リーダーさん!?」 

「はははっ! オレ達はもう吹っ切れてるんだよ~。オレはニュースに乗ったヤクザのとこ襲撃した時に吹っ切れたしな~。吹っ切れて無いのは心冶くらいだぜ? リーダーなんかテレビでも喋ってるしなぁ」

 潤さんは笑いながら話している。ホントに吹っ切れているようだ。

「そうだよ! あたしも驚いたぜ! テレビの人が聞いてもいないのに喋り出すんだからなあ」

「そうですよ~。あの時はいきなり喋るからびっくりしましたよ~。あっ! 明さんってわたし達がテレビ出演した事っ知ってますか~?」

「え、ええ。知っていますけど……………………。そんな簡単に言っていいんですか?」

「だから最初に潤が言ったじゃん! 心冶以外は吹っ切れてるんだって!」

 リーダーが親指を突き出しながら言ってくる。朱音さんも恵さんも潤さんも同意のようで親湯を突き出してる。

「あ、そうだ。あたしとか恵とかの能力の説明とかもしとくよ。こっちが一方的にそっちのトラウマ知ってんのって不公平だろ?」

「いい事言ったぜ朱音! 俺ももう話したしな! 恵、お茶とかの用意してくれよ! 疲れてるから甘いの食べたい!」

「リーダーお菓子食べたいだけじゃん! あ恵、オレは紅茶がいい!」

「お前もだろうが。あたしも紅茶で後ポテチ持ってきて」

「朱音も食べたいだけじゃんか。オレにツッコむ権利ないよね?」

「あたしはお前と違って一度も食べたいだけってのツッコンでないぞ」

「まあまあ。すぐ持ってくらからケンカしないでね~。そうだ明さんとリーダーは紅茶と日本茶どっちがいいですか?」

「俺洋菓子と紅茶で! 砂糖多めで!」

 一気にさっきまでの気まずい雰囲気が吹き飛ぶ。みんな楽しそうに思い思いの事を言いながらリビングにむかっている。

 リーダーと恵さんが帰ってきただけでこんなに雰囲気違うんだ……………………。懐かしいわね。お父様達がいた時はこんなこともあったっけ? もう思い出せないくらい昔なんだろうけどね。

「明さんはどっちがいいですか?」

「恵の紅茶はおいしいぞ~。あたしが保証する」

 昔の事を思い出して茫然としている時に、恵さんと朱音さんにもう一度聞かれる。

「あ、紅茶お願いしていいですか?」

 ふと思い出す。心冶が私を助けてくれたのはこんな『家族』と一緒に育ったからじゃないかしらね。

 そんなことを考えながら私も朱音さん達に続いてリビングに入って行った。




 恵さんがお茶をと洋菓子を用意してみんな一息つき始めるとすぐにリーダーは眠ってしまった。幸せそうによだれを垂らしながら寝ている。

「やっぱリーダー疲れてたのか。潤運んでやれよ」

「わかったぞ~。----っと!」

 潤さんが立ち上がろうとしているが椅子の足に躓いて転んでしまっていた。

「いて~。うわ! 手切れちゃってんじゃん!」

「どんぐらい切ったんだ? …………うわ! 見事に真っ赤だなぁ」

 潤さんの手は床に手をついたときに何か落ちたいたのか手の平が見事に真っ赤になっていた。床を見ると、さっき椅子から落ちた時にフォークも一緒に落ちていたのかフォークの上に手を置いてしまったらしい。 

「大丈夫ですか潤さん!」

「オレなら大丈夫だよ~。恵もいるしな~」

「あ、そうだ恵の能力見してやれよ。潤は明がよく見える位置に行っとけよ」 

「それもそうですね。わたしも見てもらった方が早いですし」

「あたしは床を拭けるもん持ってくる」

 そう言って朱音さんはリビングを出て行き、潤さんと恵さんは私の前まで来るとおもむろに恵さんは潤さんの手をとる。

「見ててくださいね明さん」

 そういうと恵さんは怪我の部分をそっとなでる。それだけで傷は無くなっていた。

「…………え? もう? 恵さんが回復能力者っていうのは薄々分かってはいたけど……………………まさかこんなにすごいとは思わなかったわ!」

「凄いでしょ~。これがわたしの能力ですよ。これくらいの傷なら触るだけで治せますよ~」

 凄すぎる。回復能力とは言っても時間がかかるものがほとんどで呪文を唱えながらとか魔法陣を書いてその後そこに入った人を直すとかいろいろあるらしい。(信慈に説明のときに軽く教えてもらった)

 なので時間がかかったり難しかったりする。さらに言うと大抵の回復能力者は漫画やゲームなどの媒体で回復能力を知るので派手なものが多いいとも聞いたけど恵さんのは実践的な回復能力だった。

「な? すげーだろうちの回復役この能力でうちの経営は成り立っているといっても過言ではない!! ……………………実際昔はそうだったしな」

 いつの間にか戻ってきていた朱音さんが言う。潤さんはリーダーを上に連れて行ったらしくいつの間にかいなくなっていた。恵さんは床を朱音さんが持ってきたタオルで床を拭いているところだった。

「? 経営って何ですか? 国からお金が出てるんじゃ?」

「あ~。…………この孤児院てさ。変な能力者多いと思わない? 潤しかり恵しかり心冶しかりリーダーしかり。このあたしだって普通じゃない」

「朱音さんの能力はまだ分かりませんけど…………。確かに多いいですね」

 朱音さんはよく分からないけど、一応動いてる影くらいは見えたからテレポートじゃない、超高速で動けるような能力

 潤さんは物質化できる幻覚能力。

 恵さんは超高速で治す回復能力。

 リーダーは、レーダーとテレポート。

 それと心冶は人体操作能力者。

 誰一人として普通の能力者はいない。朱音さんは身体強化という今の世界には割とありふれている能力としては段違いの性能を持っている。そもそも普通の孤児院とは大きく違うのが全員が心冶の言葉通りなら何かしら事件があったりしたのだろう。

「ま簡単に言うと、うちは他の孤児院とは違って問題のある孤児を抱えたところだったんだよ」

「だからみんな能力持ってるんですね」

「恵も聞いただけだろ? その時はまだこの孤児院に来てなかったし」

「そうですよ~。ここに来たのってまだ五年前ですからね~」

「てことはここに来たのって小学六年生ですか?」

「そうよ~。だから詳しい事情は知らないのよね~」

 恵さんは小学六年生でここに来たのか。その時になんか起こったのね。

「まあ、もとからここは問題児を集める孤児院だったんだけどさあ。その時に心冶が来て問題起こしちゃったんだよ。バカでかい問題」

 その頃からみんな能力は持ってたんだろうし問題も起こしやすかったと。

「それが今から八年くらい前だったっけ。君達にとっては明日の事だろう」

「……………………朱音さん。エル○ャダイはネタはもう古いですよ」

「冗談は置いといて。そんとき心冶は小三でさ、まだヒーローとかにあこがれてたんだよ」

 朱音さんがあきれるように言ってくる。

 そんくらいの年齢なら悪いことではない気もするけど…………。

「ヒーローにあこがれる事が何か悪かったんですか?」

「心冶の場合は駄目だったんだよ。まあ、あいつはまだ親亡くした時のこと引きずってるから話さないけど、その時のトラウマとヒーローに対するあこがれが混ざって能力になっちゃってね、それが強いのなんの」

 心冶ってそんな強かったの? 前に助けてくれた時はそこまで強いとは思わなかったけど。

「強いのが問題なんですか?」

「ああ問題だ。今より断然強かったよ。あの時のあいつならドラゴンボ○ルの世界でもやっていける」

「あんな星爆発させたり瞬間移動するような人達と同じレベルですか!? あり得ないでしょ!?」 

「今とは能力が違うんだよ。これから話すけどその時に問題起こしてから能力が変わったんだよ」

「今の能力は聞きましたけど、昔の能力って何ですか?」

 興味本位で聞く。失礼かとも思ったけどさすがに抑えきれなかった。Z○士並みらしいし。

「まんま戦隊もののヒーローみたいなカッコになって、武器を出したり、乗り物出したり、合体ロボ作ったり出来る上に、身体能力強化に、能力に対して耐性がついた感じの最強って言っても過言じゃ無い能力だったよ」

「弱点ほとんど無さそうなんですけど!? 無敵じゃないですか!」

 反則じゃないのそんな能力! 合体ロボって個人で出すものじゃないでしょ! 

「ただ一つの救いがあいつの能力がヒーローへのあこがれから来たところくらいだよ。あいつが悪人だったら間違いなく世界滅んでた」

 …………………………………もう唖然とするしかない能力ね。

「で、心冶が実際に起こした問題なんだけどさあ。ヒーローにあこがれるようなのがこの孤児院にやってきた怪しい人間に反応しないと思うか?」

 机の上にほおづきつきながら言ってくる。

「…………」

「その怪しい人間は何だかんだで今の管理人さんから金をもらってるところを心冶は見たわけ」

「そしたらどうなったんですか?」

「心冶が暴れて能力使ってその怪しい人間をぼこぼこにしたんだよ」

 みんなで途中で止めたけどなと朱音さんは笑いながら話す。

「でもその怪しい人間て言うのが孤児院に間違って金を振り込み過ぎたのを取りに来たお偉いさんだったんだよ」

「お偉いさんに殴りかかったとしても子供のしたことじゃないですか。途中で止めたんですし」

「いやそいつ変にプライド高くてさ、うちの孤児院は危険だって言って解散させようとしたんだよね」

「…………ずいぶんと小さい人間なんですねそのお偉いさん」

 小三の子供にマジギレってどんだけちっちゃいのよ……。

「あたしもそう思うよ。でまあリーダーとかがその時に解散させたくないって言ってね、どうしたと思う?」

「今働いてるってことはそれで慰謝料でも払ったんですか? それくらいしか思いつかないんですけど」

 子供に出来ることなんて限られてるし。

「いや、今の姉さんが全員養子にしてくれた」

「えっ! 全員!」

「ふふふ。だから今ここにいる孤児って全員は正確に言うと孤児じゃないんですよ。わたしも朱音も潤君も心冶君もリーダーも」

 何人引き取ってんのよあの人。五人も引き取るなんて…………。

「それがさあ、姉さんあたし達能力者だから将来金持ちになれるだろうからその時金払えって言ってたんだよね。自分は借金までして」

「しかもその上わたしまで引き取るんですよ。『四人も五人も一緒だから』って。ホントに頭上がりませんよ~。姉さんには」

 朱音さんと恵さんは懐かしそうに言っている。いい思い出らしく二人とも笑いながら思い出しているようだ。

「それで朱音さん達は一緒にいられるんですか」

「「そうだよ(です)」」

 二人して声をそろえて言う。そこには管理人さんに対する尊敬が見てとれる。

「ちなみに少し方向性は変わったけど今でも心冶はヒーロー目指してる」

「心冶ってあの年でまだヒーロー好きなんだ」 

 意外だわね。あいつがヒーローって。似合わな過ぎでしょう。

「ま、からかってやるなよ? あたしはあいつのそういうところが割と好きだしな」

「でもヒーローなんてご都合主義じゃないですか。人殺しは悪だ! とか言いながら敵は普通に殺してるし」

「だからあいつの夢はすげーんだよ。考えてみろよあの能力」

 そう言われたので少し考え込む。

 あいつの能力って確かルールをあと得るんだったわよね?

「……………………あっ! 悪人すら殺さないで、なおかつ再発も防げるって事ね!」

「すげーだろ? 応援もしたくなるだろ。それが仕事黙ってたくらいであそこまでいじけるなんてな。帰ったら活入れてやる」

 そう言ったところでプルルルルルルルと電話の鳴る音が聞こえる。朱音さんの携帯のようだ。

「ちょっと待ってくれ。潤からの電話だ」

 朱音さんは携帯で話し始める。


「あ? 心冶と戦って来たって? ……………………うん。了解。遅くなんないうちに帰ってこいよ」


 そうして朱音さんは電話を切った。

 今心冶と戦ったって聞えたよね? すっごい軽く言われたけど違うでしょ?

「潤のやつあたしより先に心冶に活入れてきたらしい。いままで潤は心冶に勝ったことなんて無かったけど、今回初勝利らしいな」

「この短時間で何やってるんですか。あの二人!」

 そういえば何の話してたんだっけ?

 朱音さんもそう思ったらしく首をかしげている。

「あ、そうだ借金の話だよ。とりあえず、それであたし達は働いて金返してんだ。今は姉さんがした借金も半分くらいに減ったかな」

 そっちの方を続けるの!? 信治は基本的にスルーの方向!? 

 まあそんな気がしてたけど。

 まあ連絡取ってるくらいだし元気なんだろうな。あたしもスルーしよう。

「その借金って元はどんくらいあったんですか?」

「あたし達がテレビでたの知ってるだろ? それが一年前だっけ? その後からは依頼が来たからいいんだけどそれから返せてきたけどな…………」

 朱音さんが言い淀む。ついさっきまで話していたがさばさばしている性格で朱音さんはめったに言い淀むことなんてない。

「何円あったんですか? 言い淀まれると逆に気になりますよ」

「わたしも途中からはいたので分かるんですが……………………凄いですよ?」 

「聞いて驚くなよ? 二億以上あったんだよ。借金」

 ……………………二億ってそんなに?

「ちょっと待てください! 七年間ですよね!? 孤児院じゃなくなったの!?」

「そうだよ? まあこの中には買い取らなきゃいけなくなったこの家の代金とかお偉いさんの慰謝料とか日々の生活費とか、学校とかに使う金とかが入ってたからな」

 ああ、確かに家は買わなきゃいけないし、慰謝料も必要だわね。でもほとんど他人だった子供達に二億を借金に出来る管理人さんて……………………凄すぎるわよ。

「凄いですよね~姉さん。わたしも将来あんな人になりたいですよ~」 

「あ、そうそう本題から大分それてたな。とりあえずあたしの能力は…………なんて言ったらいいんだ恵?」 

 そこで朱音さんは思い出したように本題に戻した。

 でも、能力を説明しようとしてるけど、どうにも説明しにくいようね。

「う~ん。あんな特殊な能力他に無いですからね~。能力を手に入れる時のトラウマもわたし漫画か! ってつっこみそうでしたよ~」

 漫画って何気にひどくないですか恵さん。死にたくなるくらいのトラウマですよね?

 さすがにこの発言には朱音さんも傷ついたようで少しショックを受けていた。

「そっそれはさすがにひどいぞ恵! 漫画みたいって…………。お前まさかそんなこと考えてたのかよ!」

「いや思いますよ~。そもそもタ○チしかり幽○白書しかりあるじゃないですか~」

 朱音さんと恵さんの口論が始まる。普段の態度からみても朱音さんが会話の主導権握ってそうなのになぁ。

 なんか喧嘩しそうな雰囲気になってきたし、止めなきゃいけないわね。

「まあまあ喧嘩はやめてくださいよ恵さんも朱音さんも」

「いや仮にも能力手に入れたトラウマを漫画みたいっていくら親しくても言っていいことと悪い事があるだろ!」

 朱音さんはまだ不満のようだ。……まあ気持ちは分かるけど。

「ではわたしは上の部屋で寝てきまーす。御休みなさーい」

恵さんは逃げたのか眠いのかは分からないけどうえに行った。

「逃げやがったか。…………まあいいや。でだ、明ちゃんはどうするよ? あたしの話聞くか?」

 朱音さんのなかでは恵さんは逃げた事になっているらしい。

「朱音さんが話したくないならいいですよ。無理して聞くものじゃないですし」

「いやあ、話すのがいやなんじゃなくて恵みたいに馬鹿にされるのが嫌なだけだ」

 さっきのもはやトラウマになってるらしいわね。

「もちろん馬鹿になんてしませんよ。あたりまえじゃないですか」

「……………………なんかフラグっぽい感じがするんだが。まあいいや話すよ」

 警戒しているらしいわね。無理もないか。

「あたしが能力手に入れたのは小一の時だな。母親はあたしを生んだ時死んじゃってたけど、その時は父親とよく散歩してたんだよ。まあ金もなかったみたいだし時間もおなかったからな」

 朱音さんは懐かしそうに話す。その時の事をかみしめているように。

「で、あたしは父親が好きだったからそれだけでも十分楽しくてな~。散歩中に食べるポテチのうまいことといったらなかったよ」

「…………それでポテチが好きなんですか?」

 こんな背景があるのにそれを馬鹿にするなんて----

「いや、その前から好きだったけど?」

 びっくりしたわね。まさかブラフとは。というかびっくりしたわよ…………。

「でまあ、あたしは舞い上がってスキップだか何だかしてたんだなぁ。で、そしたら横断歩道で車が来てな、そこを父親に助けてもらってあたしは生きてると」

「そんな軽く言っていいんですか!?」

 朱音さんははあーとため息をつきながら言った。

「だから言っただろ? 吹っ切れて無いのは心冶だけだって。……………まあさすがに漫画みたいって言われたのはショックだったけどね」

「なんで朱音さんは吹っ切れたんですか? 小さいころなら自分のせいで死んじゃったとか追いつめちゃうんじゃないですか?」

 私は最後のだけは触れちゃいけない気がして触れなかった。

「…………ここに来たときはあたしはもちろんグジグジしてたよ。その時リーダーに言われたんだよ」

「あの凄いいつも元気そうな人よね? なんて言ったんですか?」

「『ウジウジすんなよ! お前のお父さんだってそんなウジウジさせるために助けたんじゃないだろ! 助けてもらった上に助けられる能力があるなら自分がそいつらを助けてやれるだろ! 神様っだってそんな事するために能力渡したわけじゃないだろ!』ってさ、くさいセリフだけど本人も二年前に親亡くして能力手に入れてるんだぜ? しかも本人まだ小二だぜ? そんな奴が言った言葉なんだ。説得力あるだろ」

 朱音さんは少し恥ずかしそうにリーダーが言ったらしい言葉を言ってくる。

「リーダーってそんなことまでしてたんですか?」

「ああ大体の奴のトラウマ払しょくしたのはリーダーだよ。恵もあたしも潤も、リーダー自身も自分でトラウマ取っ払ったしな。依頼人のトラウマを取っ払ったのなんて一度や二度じゃない」

 リーダーってそういうことやってたから『リーダー』なのねぇ。そんな善良な人間なんて一度も会った事無いわよ。財閥なんかは裏の方なんて真っ黒だし、まだ優しかった時の叔父さんに聞いた政治の世界もいかに自分が得をするかしか考えて無くて国をよくしようなんて考えちゃいないって聞かされてたしね。

「すごいんですねリーダー。だからみんな優しいのかなぁ」

 すると朱音さんは顔を真っ赤にして気まずそうに顔をそむけながらぼそぼそと喋り出す。

「……本人目の前にして優しいとかは恥ずかしいからやめてくれよ」

 朱音さんはそのあとに、あたしの能力でこういうのからも避けれたらいいのに、とつぶやいていた。

「そういえば朱音さんの能力って何ですか?」

「う~ん。…………簡単に言うなら身体能力強化なんだけどなぁ」

 困ったように悩み始める朱音さん。相当に説明しにくいようだ。

「条件付きの身体強化なんだけどな~。速度に限度が無いんだ」

「それってすごいじゃないですか! 光の速さで動くこともできるんですか?」

「出来るけどたぶんそんな条件満たすのなんて対能力者戦でも今までほとんど無いよ」

「ほとんどって事は実際にあったんですか?」

 そう聞くと実にあっさり答えが返ってくる。そうホントあっさりと光の速さで動いたことがある発言を。

「昔の能力の時の心冶と戦った時」

「いったいどんな条件なんですか? 光の速さになれるくらいの条件なら厳しいんじゃないですか?」

 もちろんどんなに対価が軽くなっても対価が存在する事には変わりは無いのですごい対価が必要になる。

「いや、条件は単純なんだ。『自分と自分の見える範囲にいる人間が危険を感じた時それを助けられるだけの身体能力を与える』ってのが基本的な条件で能力なんだ」

「てことはどんな攻撃も朱音さんが避けようとすれば避けられるって事ですか?」

「そうだよ。で、プラスで避ける為に攻撃の感知が必要だから目に見える人の危険は全て感知できるし、実際空気摩擦とかすごいから全部カットしてくれる」

「確かに感知できなければ避けられませんし、空気摩擦があったら燃え尽きちゃいますからね」

「そのほかにもいろいろ人を助けるためのオプションが何個かついてる。人を助けた時に衝撃でダメージ与えないように調整できるし、あとこれは発動しないこともできる」

 確かに強い能力だわね。どんな攻撃でも避けられるって。でもそんだけの能力なら対価もすごいんじゃないのかな?

「対価ってどうなってるんですか?」

「あたしが動いてるときに発生する摩擦とかだな。たぶんだけど。というか説明割と簡単だったな。だったら考える必要もなかったじゃん」

「確かにそうでしたね」

 そう言って明と朱音は楽しく談笑しながらゆったりした夕方を過ごした。


 ~明視点終わり~


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