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翌日からテンとの二人暮しだった家に騒がしい同居人が増えた。まあ、専ら彼は眠っているのだが。
「アヤ、おはよう」
「おはよう、テン。セキはどうしてる?」
部屋はテンの希望でテンと同じ部屋ということになった。なんでもセキが私と一緒だと落ち着かないんだって。ずっとトカゲの姿なのに何を心配しているんだろう。
「セキなら、人間の姿で朝食の支度をしてる」
「えぇっ?」
「アレでも一応、火竜だからね。火の扱いは慣れたものさ」
感心していると、後ろから軽く頭を叩かれた。彼が手にしているものからするとオタマで叩かれたらしい。
「いちゃついてないで、さっさと支度しろ。飯がさめるだろ」
朝食の支度をしていたというセキは黒いシャツに黒いズボンで、上から私の赤いエプロンをつけていた。一応フリルつきではないが、なんだか妙に似合いすぎて。
「よく似合っているだろう?」
「っ、笑ってないで、さっさとしろっ!」
怒った彼が足音荒く去っていく。その背中に声をかける。
「おはよう、セキ。お玉はちゃんと洗ってから使ってね」
振り返った彼は空いた手で中指を立てて返してきた。
笑いながら、支度し、席に着いた私は二人にもう一度言う。
「ねえ、テン、セキ」
なんだとそれぞれに返してくる二人を笑って。
「ありがとう」
一緒にいてくれて、ありがとうと、笑った私に二人はそれぞれに照れた様子で返してきたのだった。
最初はファンタジーらしい話が書きたくて。扉を開ける王様の話を書こうとしていたんですが、風呂に入って、一晩寝たらこんな話になってました。
何がおきても変わらない絆が描きたかったのかなぁ。
書き始めた段階で訃報があり、書くのをやめようかと考えたのですが、書いているほうが気が紛れるので書き上げることにしました。
少しでも心に残る話になっていればいいなと思います。
(2008/11/13)
続きが書きたくなったので、投稿してみました。
アヤとテンのシリアスなのがいいかなぁ。
(2012/03/03)




