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色彩  作者: 帝王星
朱雀の羽
8/12

8色

「あれが…朱雀…」

眼前には七色の羽、白銀の眼、黄金の嘴を持つ巨鳥がいた。遠いはずなのに近い…いや大きすぎてそう見えるのだ。

「汝等、何用でここへ参った…?」

朱雀は俺らを見るなり、口から問いと炎を吐き出す。視ているだけで目が灼けそうだ。

「朱雀の羽根を手にした者は本当に不老長寿になるのか、確かめにきた」

「…汝等は我の羽根を所望すと?」

朱雀の目が細くなると同時に、威圧感が恐ろしく増す。立つのも困難なほどだ。

「その様子を見たところ、本当のようだな」

…この野郎、何四神にタメで話してんだよ。恐れ多いぞコラ。

「…」

朱雀が洸雅を検分するように眺める。

「…成る程…汝は我の遠い子孫か」

…一瞬耳を疑った。そして理解した。俺の耳は早急に手術すべきだと。

「…は?」

「その赤髪に碧眼…我の血を引く証…」

…そういやコイツ、朱雀族だった。てか本当に朱雀の血を引いてたのかよ。ろくでもねぇ野郎だ。

「…だったらなんだよ」

洸雅は意味が全く理解できない様子で、いかにも不機嫌だ。

「…よかろう。我の羽根をやる」

「なっ…!」

あっさり依頼の品が手に入った。もっとこう…激しい戦闘とかなかったのかよ。

「銀、帰るぞ。依頼の品は手に入ったんだ」

そういう洸雅の背後、朱雀は目を細めた。

「ただ、汝の肉体は頂くぞ」

途端、洸雅の腹部に『狭間口』に似た空間の裂け目ができる。裂け目を確認したのはほんの一瞬だった。 朱雀が霧状になり、洸雅の腹部の裂け目に吸い込まれる。

「なっ…!?」

洸雅の中に入っていってるのか…?!

「洸雅っ!大丈夫か!?」

洸雅はただ目を見開き、その場に立ち尽くしている。そうしている間にも朱雀は洸雅の中に入っていく。

そして、朱雀が完全に洸雅の中に収まる。同時に洸雅が前のめりに倒れる。なんとか地面につく前に受け止めたが…顔色が優れない。

「…熱…ぃ…」

絞り出したようなか細い声。やはり朱雀が中に入ったのか!?

「おいっ!しっかりしろ!」

呼び掛けるも、洸雅はぐったりとしたままだ。まずは外に運び出すしかない。

「仕方ない…」

俺はとりあえず、洸雅を担いだ。刹那、出口の方から緑の猛火が襲ってくる。

「くっ…!」

洸雅を担いだ態勢では、避けるので精一杯だ。

「チッ、お目覚めが早かったか…」

眼前には黄金に輝く龍。先ほど止めを刺さずに通過した甘さが、こんな形で返ってくるとは。

どうする…?どうすればいい…?今明らかに不利なのは俺だ。今俺がとれる最善の行動は…?

「…こんな状態をあっという間に打開できる必殺技とかあったらな…」


日本、京都。

「侵入者だ!」

「なんだと!?すぐに撃退せよ!」

平等院鳳凰堂の前、中に安置された宝物を守る衛兵たちはざわめき出す。

「狙いは…やはり『千桜』か…?」

衛兵たちを指揮している男の額に汗がにじむ。

「この刀を外の世界に出すわけにはいかない…」

平等院鳳凰堂の中、怪しい光を放つ刀は、鎖で幾重にも縛られていた。

「隊長!侵入者は第6ゾーンから侵入した模様であります!」

衛兵の一人が厳しい顔で、戦況を伝えに来る。

「敵の居場所は掴めたのか?」

「いえ…探知機に写らないんです…」

衛兵の顔が苦々しいものになる。

「『黄の眷属色』でもか…?」

「はい…」

隊長と呼ばれた男は、静かに戦闘態勢をとる。

「総員に次ぐ!直ちに戦闘態勢をとれ!」

スピーカーから男の声が木霊する。そして、周囲の衛兵たちも戦闘態勢をとる。

「隊長!敵の所在は掴めないままです!どうやって倒せというんですか!」

報告してきた隊員がもっともな意見を述べる。すると隊長と呼ばれた男は不適に笑う。

「相手の狙いが『千桜』なら、いやでも視界に入らなければならない。つまり、待ち伏せだ」

隊長の声は自信に満ち溢れていた。が…

「『千桜』確保しました。案外簡単でしたね」

後ろから声がする。どういうことだ?振り替えると、刀が宙に浮いていた。

「人間さんがたくさんいるけど、普通に光学迷彩術で隠せましたし」

その場にいた衛兵たちは、誰も動けなかった。

「獲物も手に入れたし、もうここには用はありませんね。とっとと帰りましょう」

ソプラノ声がそう言うと、刀は独りでに動き出した。

「…総員、刀に攻撃せよ!」

隊長は怯みながらも、衛兵たちに指示を出す。衛兵たちも、言われた通りに刀に向けて攻撃する。

「あれ?なんだか人間さんが騒がしいです」

ソプラノ声が緊張感の欠片もないようにいい放つ。

「千ー、人間さんが銃向けてきますー。代わりに何とかしてくださいー」

すると、突然衛兵たちが後ろに吹き飛ぶ。

「くっ…! 怯むな!」

隊長の指示で、衛兵たちが一斉に刀に向けて攻撃する。

だが次の瞬間、その場にいた誰もが息を飲んだ。なぜなら、すべての攻撃が空中で制止していたからだ。

「演舞・斬雨」

先ほどとは違う、アルト声が聞こえるのと同時に、その場にいた衛兵は切り刻まれる。隊長が最期に見たものは、何もないところから現れた少年と少女だった。

「…このくらい自分でやって。面倒くさいか ら」

少年が怠そうに言うと、少女はやや不満そうな顔をする。

「ケチ」

「ケチで結構」

少女の不満も、少年は一言で切り捨てた。

「それより、早く魔界に戻って主人のとこへ行く方が先。不満は主人にたくさん言えばいい」

そう言い、少年と少女は姿を消した。


「熱っ…!」

俺の右足を緑焔が捕らえる。

「くそっ…どうすりゃいいんだよ…!起きろっ…!起きろよアホ朱雀!」

俺はとりあえず、洸雅の頬を思い切り叩く。

「ぅっ…」

「気が付いたか?!」

洸雅の口から小さな呻きが聞こえる。

同時に金龍は俺たちの方に向き直ると、息を大きく吸い込み始めた。

「この状況でそれかよっ…!」

あの追尾タイプの光線だ。例の盾では俺たち2人の安全は確保できない。

「あぁもうっ!寝てんじゃねぇよクソ朱雀!」

金龍の口元に円式が現れたのと同時に、光線が放たれる。

「万事休すかっ…!」

視界が光に包まれる。


痛みはなかった。

「ぅっ…」

ゆっくり目を開ける。視界に飛び込んできたのは…洸雅…?

「…我に攻撃を向けるとは…堕ちたな、龍族よ」

…は?洸雅…? …いや、こいつは洸雅じゃ…!

「還るがいい」

洸雅が全方に手を出した。そして、何かを掴み捕るように降り下ろす。刹那、前方が紅に染まる。金龍も何もかも呑み込まれた。

「…」

洸雅はただ無機質な目で前を見据えているだけだ。

「ふむ…人間の身体というものは中々動きやすいな」

…間違いない、こいつは朱雀だ。

「朱雀…か…?」

「左様…だが全力は出せないようだ」

朱雀は金龍がいた方を向く。

「金龍は…どうなったんだ…?」

俺の問いかけに対する答えは返ってこなかった。目の前の光景も朱のままだ。突然焔が霧散したように消える。洸雅も同時に、力の抜けたように倒れた。

「洸雅っ…!?」

前方にいたはずの金龍は…跡形もなくなっていた。これが…世界を作ったとされる四神の一角、朱雀の力…

「洸雅、しっかりしろ」

「ぅっ…」

俺は再び、洸雅の頬を叩く。

「…なんだ、銀か…」

洸雅は目を開くなり、呟く。

「うるせっ、とっとと帰るぞ!」

…腹立つけど、ちょっとは心配したんだからな。


オランダのとある空港…

「到着♪」

飛行機から跳ねるように降りてきたのは、舜だ。

「舜、急ぎすぎ。慌てすぎると時に命を落とすぞ」

「僕がそんな簡単に死ぬわけないしぃ?」

美影の正しい忠告をあっさりと流す舜。美影の後ろから桃色の髪の影が出てくる。

「この間部屋で、毒の調合中に爆発起こしてたじゃん?で、舜が『死ぬかと思った』って言ってたの、ちゃんと見てたぜ?」

桃色の髪の影が嘲笑混じりに言う。

「うわ、輝に見られてたとか最悪」

舜の顔から表情が消える。

「その辺にしろ、騒いでいたら目立つ」

「はいはい、分かったよ」

輝と呼ばれた少年は気だるそうに応える。

「…この馬鹿力野郎」

舜は誰にも聞こえないようにそう呟いた。

「オランダの有名観光スポットは…」

彼だけは、持ってきた観光名所の一覧を必死に確認していた。

「…まこっちゃん、なに読んでんの?」

「世界観光名所一覧」

明らかに顔に不快の色を示す真。対照的に舜は屈託ない笑顔だ。

「うわぁ、漢字だけで返されたよ」

「というか、そのまこっちゃんというあだ名をやめてくれ」

真は呆れたように言いつつも、視線は本から外れない。

「え?まこっちゃん以外に呼び方ないでしょ?」

舜がそう言うと、真は目頭を押さえて言った。

「いい加減人の名前を覚えろ…」


…何か聞こえた。誰…?助けに来たのか?それとも…また俺の力を悪用しようとする研究者か…?

もう痛いのは嫌だ。体を切り開かれる激痛…俺を調べないでくれ…何も出てきはしない…

足音、近付いてくる…!?来るなっ…!俺に構わないでくれ…!動けっ…動けよ!俺の体だろ?!

「旦那、当たりだ。ここみたいだぜ」

光が差し込んできたのと同時に、若い男の声が聞こえた。

「…にしても、趣味悪いな…この臭い…こん中の絶対血だろ」

…黙れ。

「あぁ、だが…血液成分の中に遺伝子が存在していない…」

後から入ってきた男が、俺をライトのようなもので照らす。

「…は?どういうことだよそりゃ」

「分からぬ」

…いいからとっととここから出ていけよ…

「…ふぅん、でも割って調べりゃいいだけのことだろ」

青年は腰から短刀を抜く。

「中の神の化身まで両断!なんてことにならないようにしろよ」

…ここには人族しか入れない…人族の分際で…俺を調べるだと…?

「はいはい、分ーってますって」

青年はひらひらと手を振る。そして、刃の切っ先を俺の方へと向けた。…人族ごときが…

《散れ》

刹那、天秤宮から2つの影が弾き出された。



情報屋のコメント


…戦いというものを君たちに教えてあげよう。

君たちは、戦いと言われたらまず何を思い浮かべる?

…そう、力だ。そもそも力がなけりゃ戦いなんて成り立たない。

この世界には複数の種類の力が溢れている。

まずは色箱。見た目は色付きのキューブでね、これは時に武器となり、時に非生命体の核になる。純色の橙なんて、死んだ命を元通りにすることだってできる。

次に血系能力。所謂遺伝情報で受け継がれていく力だ。戦闘民族がこれに代表される。

三つ目に人外の者共。主に妖と魔、その他の巨大術力生物とに分けられる。中には人間との混血とかもいるらしいけどね。

四つ目に魔器と妖刀。こいつは使うものが一般人だとしても、とんでもない力を放つ。あ、でもそういうときには使用者の精神が耐えられないけどね。五つ目は宝珠。これ自体には封印能力しかないけど、使いこなせば一番強いかもね。

最後は式術。これは誰もが生まれながらに持っている術力を使う。四系統全十段階にわかれた技を駆使する。ただ、これはちゃんと考えて使わないと、時に自分を滅ぼしかねない。

…とまぁ、力の話はここまで。ちなみに、血系能力の持ち主で最強って誰かわかる?

答えはね…神さ。実際神の血を引くものや神の化身は存在する。神を見たって人もいるね。

…僕が本当に神と認めたのは三人しかいないけど。

最後に言っておくことは…うん、そうだ。この世には『皇帝』『帝王』『大帝』の最強能力があるらし いよ。

…教えろって?無理な話だね。そもそも『影椿』と謳われる僕だって知らないんだから。

それじゃ、退屈な僕の話はここでおしまい。

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