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色彩  作者: 帝王星
朱雀の羽
3/12

3色

「…そこの果物屋の屋台の下に子供がいる」俺は言われたとおりに、屋台の下を見る。するとそこには、まだ7歳くらいの少年がいた。

「洸雅ー、寝てるガキを1人発見ー」

「情報を取る。起こせ」

こんな可愛い顔して寝てる子供を起こすのか?!罪悪感半端ねーよ。

「…おーい」

小さな声で呼びかけてみる。無反応だ。

「起きなさー い!朝ごはん無くなっちゃうわよー!」

ふざけて母親の真似をする。やはり起きない。

「何をモタモタしている、水でもぶっ掛けてやれば済む話だろうが」

「罪悪感半端無いからヤダ。やるなら洸雅がやれよ」

すると洸雅は、灰色みがかった色箱を開箱する。

「薄青、マシンガン」

洸雅がそう言うと、現れた薄青色の髪の青年 がマシンガンに変形する。『薄青』は『灰の眷属色』の中でも、銃タイプに分類される。つまり銃火器なら、この色箱1つでいくらでも代用が 利くと言う事だ。

「え?目覚ましにそんなゴツいもん使うの?」

「これなら1発で起きるだろう?」

洸雅は地面に向けて、マシンガンをぶっ放した。 うるさい破裂音が響く。

「うぁあああ!」

すると、少年 が跳ね起きる。

「え、ウソ!起きちゃったよ!」

洸雅の持っていたマシンガンが、泡のように弾けて消える。

「お兄ちゃん達…誰?この村の人じゃないよね…?」

少年の目には恐怖。俺達を異常に警戒していた。

「いや、俺達は怪しい者とかじゃなくて…」

俺はそういい少年を見る。いつの間にか少年は目の前から消えていた。

「…生体反応が消えた…『女郎花』でも捉えられない…」

「いきなり消えた…のか?」

洸雅は顎を引いて肯定する。


「ハァハァ…」

「何やってるんだい!その布は肌身離さず、常時被っておきなさいと言っただろう!?」

少年が逃げ込んだ所は、暗い地下基地の中だった。そこには老若男女、沢山の人々が身を潜めていた。

「誰かにここを知られ、龍にばらされたら私達は全滅だ…村の者と以外は絶対に話すんじゃないよ!?」

「はい母さん…」

少年は入ってきた出入り口を見る。

うっすらと光が差し込んでいる。

もうすぐ日が暮れる…夜になったらまた『奴ら』が来る…

少年は出入り口の小さい戸を閉め、奥に隠れる。


「あーあ、結局情報収集は失敗に終わりましたよー?」

俺は横目で洸雅を見る。相棒はただ目を閉じていた。


旅客機から降りてきたノッカと蒼は、大口を開けて立ち尽くしていた。

「ノッカ・シェル様に北龍蒼様ですね」

前にいた背広の男が、2人の前で一礼する。

「主人よりあなた方2人を呼ぶよう仰せ賜っております」

『主人』の言葉を聞いた途端、2人の顔に悲痛な笑みが浮かぶ。

「…嫌な予感がする、アイツのお守りだけは勘弁して欲しいな…」

蒼は誰にも聞こえないよう、小さな声でそう呟いた。


洸雅は相変わらず目を閉じたままだ。先ほどから何も進展がないまま、もう日が暮れようとしている。

不意に洸雅が目を開ける。

「…この波長…恐らく竜か」

洸雅が立ち上がる。

「距離約1200m、西南西の方角だ」

「チッ、 龍じゃなくて竜かよ…朱雀の事は知らないだろうな」

俺は苦い顔をしつつも、茶色みがかった色箱を開箱する。『茶の眷属色』の『銀朱』色の髪をした青年が現れる。

『銀朱(』は『茶の眷属色』の中でも槍タイプに分類される。槍術を使える俺にピッタリの色箱だ。

「『銀朱』長棒」

『銀朱』色の髪の青年が細長い棒になる。

「暗 くなってきたな…」

「俺は暗いところでも目がよく見えるんでね」

西南西の方角から爆音。洸雅は背中の愛剣『雀』を振り抜く。いつもは『櫨色』を使う洸雅だが、相手が竜のときは愛剣を使う。剣を使い分ける意味が分からないね。

「…来たか」

西南西の方角から灼熱の炎が噴射される。恐らく竜の息吹だろう。何故か相棒は笑っている。俺と洸雅は飛翔して回避。業火から逃れる。着地すると同時に、俺達の前に巨大な影が現れる。

「やけに炎の温度が 高いと思ったら…やはり火竜か」

眼前にいる竜は体長約20m、全身を鱗に覆われた赤茶色の竜だった。竜が咆哮する。

「…なら好都合」

「戦いに有利も不利もあるか。全て運と実力で決まるんだよ」

俺がそう言うと、洸雅の目が驚いたように見開かれる。

「銀が初めてまともな事を言ったな」

「いつだって俺はまともさ。洸雅がおかしいんだよ」

言いつつ開箱。『紅碧』の少年が現れる。洸雅も『黒の眷属色』の1つ、『暗黒色』を開箱する。色箱から現れた少女が霧状になり、洸雅の持つ大剣 『雀』を黒く染める。

「あの火竜の次に、お前も分子レベルにバラしてやる」

洸雅は大剣の切っ先を火竜へ向ける。俺も『銀朱』の槍を構える。火竜の口元に光。文字と数字で構成された円式が浮かび上がる。

「なっ…式術だと…!?」

俺がそう呟いた瞬間、背後の建物が緑の炎に包まれる。

「あれが『地獄の劫火』と呼ばれる緑焔か」

俺は咄嗟に、安全で確実にこの火竜を倒す方法を探す。洸雅が火竜の前足に向けて小刀を投擲する。小刀は頑丈な鱗で弾かれ、火竜に傷を付けることすら出来なかった。

「弾かれるなら『暗黒色』を纏っていても無意味だな…」

「超硬質の鱗…緑焔…火竜…式術…」

分かっている情報から推測し、最善策を探す。

「となると、弱点は電気と低温…」

俺は『黄緑の眷属色』の1つ『淡萌黄』を開箱する。体から小さく放電している女が現れる。

「…電気量は大丈夫なのか?純色と違って眷属色は力に制限かある。それにあの鱗を破るとなると、かなりの電力がいるぞ?」

「3ヶ月前の大嵐の時に蓄電しておいた。あれから全然使ってないから大丈夫だろう」

俺がそう言うと、洸雅は獰猛な笑みを浮かべた。『淡萌黄』色の髪の女が霧状になり、『銀朱』に纏わりつく。

「『紅碧』超低温!」

『紅碧』の右手が水平に振られ、左手が地面に触れる。すると周囲の温度が急速に下がり始める。

火竜は炎を吐く。当然活動できる範囲の気温も高い。つまり周囲の温度を下げれば行動が鈍る。

「今だ洸雅!とどめを 刺せ!」

俺の叫びに反応し、洸雅が大剣を翻し飛翔する。『黒の眷属色』の特性は『分解』…つまり『暗黒色』を纏った洸雅の大剣・通称『黒雀』は、刺さればどんな物でも分解する。

「雲流鶯斬!」

洸雅の大剣が空を斬る。斬激がまるで羽根のように残酷に舞う。だが火竜は口から炎を吐き、噴射の威力で逃れる。

「まだ火を吹く元気は残ってるようだな」

「…だったら神経回路を焼く」

俺は朧に光る『銀朱』の槍を構える。

「『淡萌黄』放電!」

俺の合図と共に、『銀朱』の先端から超高圧電流が放たれる。雷は火竜の前足に直撃。竜の体制を崩した。

「よし、神経を焼き切る!」

更に凄まじい電気が放たれ、先端に繋がっている竜が感電する。洸雅が飛翔。大剣を竜の顎に突き刺す。俺が槍を引き抜くと同時に、竜が洸雅の大剣によって分解されていく。

「…分解されるというより、消えてるっていった方が正しいと思うよ」

「ドルトンの原子説を知っているか?原子はそれ以上分解できないし、他の種類に変わることもない。消えたり新しくできたりもしない。つまり消えるのではく、分解される方が正しいといえる」

いきなり洸雅が反論してきた。それも長ったらしい解説付きで。俺はそう見えるって言っただけなんだが…


「嘘だろ?あの竜族を倒すなんて…!」

穴に隠れて見ていた村人の1人が、倒れている竜を見て言った。

「…誰だ」

洸雅は竜から大剣を引き抜き、切っ先を1つの空き家に向ける。俺も『淡萌黄』を閉箱し、槍の先を空き家に向ける。空き家からは物音1つしない。

「いるのは分かって る。さっさと出て来い」

洸雅の体からイライラしている証、別名怒気が溢れ出す。しばらく待っていると、空き家の中から数人が出てくる。

「…あっ!あの時の…!」

俺が指差す先には、夕方会ったあの少年もいた。

「…どう言う事だ…?」

「…隠していてすみません。実はこの村には毎晩、竜が現れるのです」

中年の女性が重々しく口を開く。

「毎晩村人が竜共に食われていきました」

その場にいた全員が唇を噛み締める。なるほど、だから隠れていたわけか。

「…色箱さえ欺く道具があっても…か?」

洸雅のその一言で、村人が全員固まる。

「そんな道具があるなら、竜などすぐに倒せたはずだ」

「…ここにある強力な道具は、金龍の鱗から作った物なんです…」

村人がおずおずと言う。確かに、龍の鱗から作っているなら竜族には効果がない。洸雅と俺が納得して頷くと、最初に会った少年が微笑みながら言う。

「今更だけど、何かお礼がしたいんだ。何か頼みごとはない?僕らができる範囲の事はするよ」

少年の突然の提案に、村人は目を丸くする。

「村長さんいいでしょ?」

話しかけられた老人はしばらく考えていたが、納得したように頷く。

「村を救ってもらったのに、何もお礼をしないというわけにもいくまい」

老人の言葉を合図に、俺と洸雅の周りを村人が囲む。

「や、お礼とかそんな…悪いですよ」

「ささ、こちらへどうぞ」

だが村人達は俺の言う事など無視し、俺達を先ほどの空き家に連れて行く。


俺の目の前には、どこかの城の食事くらいの量の料理が並んでいた。

「遠慮しないで食べてよ」

横では少年が微笑みながら言う。

「自己紹介をしてなかったね。僕は加羅って言うんだ」

そういう問題じゃないんだよ…俺は脳内でそう呟く。

「にしても…あっちの兄ちゃんよく食べるね…」

いやな予感がして、俺は反射的に洸雅の方を見る。既に空の皿が積み上げられている。その奥には、手を合わせて箸を置く洸雅の姿があった。いつも思うが、早食いにしても早すぎるだろ。

「加羅だったか?いくつか質問がある」

「知ってる事なら何でも言うよ」

加羅は洸雅に向かって微笑む。

「道具は金龍の鱗から作ったと言ったな」

「その金龍の能力を詳しく教えてくれ」

加羅は少し考えるそぶりをする。

「僕は見てないから知らないけど、 実際に戦った叔父さんが言ってたよ。一番恐いのは、あらゆる系統の術を使える事だって」

加羅は険しい表情になる。それと対称に、洸雅の表情は喜悦に満ちていた。



チャットルーム


千羽鶴)【あれれ、誰もいないなぁ…】

千尋)【私がいますよー♪】

千羽鶴)【Σびっくりした!もう驚かせないでよ千尋さん;】

千尋)【テヘッ☆】

千羽鶴)【…あっ!そうだ千尋さん、最近京都で辻斬りが出るって噂、知ってます!?】

千尋)【あぁ…着流し姿で、いつも刀を3・4本持ち歩いてる。普段は神社の屋根で笛を吹いてて、その神社に近付いた人を斬ってるって噂のですか?】

千羽鶴)【そうそう!運よく逃げ延びた人の話じゃ、正体はまだ20になってない青年らしいよ!しかも涙を流しながら斬りかかって来るんだって!】

千尋)【恐いなぁ…】

千羽鶴)【やべっ!そろそろ連れを迎えに行かなきゃ!じゃこれで失礼!】


―千羽鶴さんが退室しました―


千尋)【はぁ…女口調も疲れるな…】


―千尋さんが退室しました―

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