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色彩  作者: 帝王星
朱雀の羽
2/12

2色

暗い路地の中に2人はいた。1人は紺色の髪で、右頬に青い燐光の刺青をした長身の青年。もう1人は金髪で、手に大量の札を貼り付けた少年だ。青年が口を開く。

「さて、追跡は地中、地上、空中のどれがいい?」

手には水色の色箱が握られていた。

「選べと言われたら空だね」

札を貼られた両腕からは、常に紅いオーラのような物が滲み出ている。

「そもそも君の実力からすれば、ここから遠距離で攻撃できるでしょ?」

金髪の少年の言葉に青年は目を細める。

「普通に殺してしまっては意味がない。苦痛を与えて絶望を与え、精神を崩壊させて殺す」

青年は無表情でそう言う。だがその双眸には恨みと殺意の炎が宿っていた。

「あー、でも目玉だけは頂戴よ?宝珠作りに使うから」

金髪の少年の周囲に無数の宝珠が浮遊する。

「…ノッカ、まだ宝珠作りをやめていなかったのか?」

ノッカと呼ばれた金髪の少年はクスッと笑う。

「1万個作るのが僕の目標だからね。それには5000人分の目玉が要る」

青年は思った。自分が寝ている間に目が抜き取られるのではないだろうか、と。

「…聞きたくはないが、現時点で宝珠はいくつ作ったんだ?」

「んー、ざっと400。正確には396個」

青年の問いに清々しい顔で答えるノッカ。

「あと9604個♪あと4802人♪」

「…珠使士の考える事は相変わらず理解できない」

そう呟く青年の周りを、ノッカは無邪気に跳ね回っている。

「蒼もそんな事言ってるけどさぁ、内臓コレクションしてんじゃん」

ノッカがピタリと走るのをやめる。蒼と呼ばれた青年は苦い表情を浮かべる。

「…」

「あ、でも動かなくなったり、病気になったりしてるのは集めないんだよね」

ノッカの感情を表すかのように、396個の宝珠が周囲を旋回する。

まるで惑星の周りを回る衛星…いや、恒星の周りを回る惑星のように…


「中国到達!」

俺は大鷲の瀬から飛び降り、中国の大地を踏みしめる。現在の時刻はPM3:30。出発してから5時間30分経っていた。

「中国語で挨拶など必要ない。日本語は世界の共通語だろうが。早く依頼の品を探しに行くぞ」

俺の相棒(仮)は、大鷲の背で優雅に寛いでいた。そういうお前は寛いでるのかよ。

「あぁそうだな、洸雅もちゃーんと付いて来なよ?」

俺が指を鳴らすと、乗ってきた2頭の大鷲が泡のように弾けて消える。凭れかかっていた洸雅はバランスを崩し、大地に叩き付けられる。

「…」

「だってさぁ、探しに行こうって言い出したの洸雅じゃん?」

反射的に左に避けた俺のすぐ右側を銃弾が掠めて飛んでいく。相棒(仮)の洸雅の手元を見ると、鈍く光る二丁拳銃が握られていた。

「死ね、いや殺す」

「言い換えたつもりのようだけど、要点は大して変わってないよね?結局俺死ぬじゃん」

「だから死ね」

再び飛んで来た銃弾を、頭を後ろに反らして避ける。俺を捕らえられず後ろのコンクリ壁に着弾した弾は、凄まじい勢いで壁を溶解していく。

「このっ!焔弾使いやがって!殺す気か!」

「何故避ける」

「避けるのが普通だろ!聞いてんのかオイッ!」

洸雅は耳を塞ぎ、俺の話などまるで聞いていない。両手に握られていた二丁拳銃はいつの間にか消えていた。

「やはり俺が銀などのために手を汚す必要はない。勝手にのたれ死ぬのを待とう」

お願いしまーす、誰か今すぐコイツを処刑して下さーい。なるべく悲惨な殺し方でー。

「洸雅…俺はお前が嫌いだ」

「安心しろ、俺も銀が嫌いだ」

洸雅の肩に、全身が焔の鳥がとまる。

「お前を燃やすと、灰の代わりに酸化銀が残りそうだな」

俺は銀で出来てんのか?だったらある意味すげぇよ。

「ここで暇を潰しても仕方ない。近隣住民にでも話を聞きに行く、付いて来い」

洸雅はそう言うと焔の鳥を消し、人気のある内陸の方へ歩き出す。 コイツの言う事を聞くのはあまりいい気分ではなかったが、一応付いて行ってやろう。

「言い方が間違ってるよ洸雅。どうぞ付いて来て下さいませ、だろ?」

洸雅の顔に苦い表情が生まれた。


「うぁぁああ!また負けたぁ!」

「…行動パターンが直線的すぎる」

2人は旅客機の中で、ゲームをしていた。

最近は技術が発達し、病院や旅客機などでも赤外線通信が使える。

「だって僕初心者だもん」

「…」

ノッカは頬を膨らませる。

「手加減してよぅ…」

「命と命の取り合いの中で、手加減などという言葉は存在しない。よって手加減はしない」

ノッカがウル目を使うが、 蒼はあっさりと言い捨てた。

「色神銀は甘くない、かつて白虎族の『栢』をも倒したほどの実力者だ」

蒼の青い目が細くなる。彼も銀達に興味があるのだ。

「白使いの栢…やられてたんだね」

ノッカの周囲の白い宝珠が跳ね回る。

「『純色』を持つ相手を倒してるなんて…更に興味が出て来た…♪」

ノッカは喜悦の笑みを浮かべる。周囲を回っていた宝珠が消えたのと同時に、両手から溢れる紅い光が増した。

「…南雲洸雅には手を出すな。アイツは一族の敵…誰にも渡さない」

蒼の目に憎悪と殺意の炎が灯る。


中国のよく分からん村…そこに俺と洸雅はいた。

「あ゛づい~!何でわざわざ砂漠通るの!?」

「暑いか?俺にはこれが丁度いい」

あのー、今何度だと思ってるんですか?携帯にはどう見ても43度って表示されてますが…?

「…『紅碧』装備」

水色がかった色箱を取り出し、開箱する。現れた紅碧の髪の少年は、俺を包むように気化した。『水の眷属色』の特性『低温』を活かし、自分の周囲の温度を下げる。

あぁ、さっきよりは涼しくて快適だ。ふと横を見ると、洸雅は全く汗を掻いていない。朱雀族は高温に強い皮膚を持っていると言われるが、本当だったようだ。

「…何をジロジロ見ている。俺ではなく前を見ろ」

「や、相変わらず馬鹿面してんなーと思って見てただけ」

洸雅から凄まじい怒気が放たれる。無視だ無視。

「… そういうお前はアホ面だな」

「知ってる?アホって漢字で書くと『阿呆』になるんだよ?漢字で書けないなんて、やっぱり馬鹿だね」

破砕音。俺が屈んで避けた頭上を銃弾が掠め、後ろにあった岩を破壊する。

「何でも武力で解決しようとするんだ、わーいバーカ」

嵐のように飛んで来る銃弾をかわしながら、俺は近隣の村へと進む。危なっ、今足掠めたよ。

「…チビですばしっこい分、銃撃は当てづらいな」

洸雅のそんな呟きと共に、持っていた銃が泡のように弾けて消える。

「次は『薄青』ではなく、『櫨色』の太刀を叩き込んでやる」

「言葉の意味がよく分からないけど、とりあえず洸雅が死ぬべきだって事は分かった」

俺がそう返すと、洸雅は苦い表情を浮かべた。


「…村が見えてきたぞ」

砂漠の中に、うっすらと小さな集落が見えてくる。

「…思ったけどさぁ、わざわざ聞きに行かなくても良いじゃん」

洸雅の目に疑問の色が浮かぶ。

「『黄の眷属色』使って探知すればすぐ見つかるじゃん」

『黄の眷属色』の特性は『感知』… 敵の攻撃や相手の居場所などを探知できる。それを『朱雀の羽』の捜索に応用しようという事だ。

「何を言うかと思えばそんな事か」

何!?そんな事とはどう言う意味だ!と言いそうになったがやめる。

「無理だ」

「はぁ!?何で使えないんだよ!」

「『黄の眷属色』と言えども、感知できるのは生命反応と色箱だけだ。生き物でも色箱でもない羽は無理だな」

洸雅は俺を見て嗤う。畜生、俺を馬鹿にしやがって。

「…全然使えないね、暑さには強いくせに」

俺は皮肉を込めて言ってやる。反射的に右に避けた俺の左側の空間を、洸雅の大刀が切り裂く。

「避ける事はないだろう?安心して死ね」

地面に刺さった大刀を振り抜き、俺に襲い掛かる洸雅。俺の屈んだ頭上を刃が薙ぐ。

「櫨色…双剣」

洸雅の手の大刀が2本に分かれ、1対の双剣に変形する。俺は『卯の花』を開箱し、背中に翼を生み出す。

「さて…争ってる場合でもないし、お先に失礼♪」

俺は翼で飛空して向かっていた村へと逃げる。洸雅の双剣は俺の銀の翼の先を虚しく掠めた。

「…逃げ足だけは速いな」

洸雅は持っていた双剣を色箱に戻し、赤い色箱を取り出す。『赤の眷属色』で最高の力を持つ『純色』だ。

「『赤』…装備」

色箱から現れた赤い髪の女が、 洸雅を包むように気化する。俺には奴が何をするかが分かっ た。

「…大方ジェット噴射して飛んでくるだろーな…」

俺がそう呟いた瞬間、洸雅が足から炎を出して飛んでくる。予想大当たりだ。俺は銀の翼をはためかせ、時速120kmで飛ぶ。洸雅より速度が遅いなんて絶対嫌だ。

「…始めからコレを使えばよかったな、銀などに頼る必要が減っていたはずだ」

んだとコラ!?


村についたが全く人気がない。市街地にも人影は全くなく、風の音だけが響く。

「…誰か見つかったか?」

「いや、まだ俺と銀以外の生体反応はない」

俺達の前を、黄色みがかった髪の女が歩く。『黄の眷属色』の『女郎花』の色箱だ。

「誰もいないなら情報を聞く当てもないな」

俺がため息をつくと、洸雅の口元が動く。

「…見つけた」



チャットルーム


―高麗さんが入室しました―

―レンさんが入室しました―


レン)【おや?新入りさんですか?】

高麗)【はい、高麗と言います。インターネットには不慣れですが、宜しくお願いしますね】

レン)【いやいや、そんなに畏まっちゃわなくていいよ?ここは憩いの場だからねww】

高麗)【え、いやその…一応礼儀と言うものを心得ておこうと思いまして…;】

レン)【…まぁいいや。そう言えば最近中国の辺りで龍が現れる事件があってるの知ってる?】

高麗)【新聞映像で読みました。確かその龍、中国の小さな村をいくつも襲っているそうですね】

レン)【最近の世界って不吉だよねー、高麗も気をつけなよ?】

高麗)【…あったばかりの私を心配してくれるなんて…レンさんはいい人ですね】

レン)【そんな事ないですよwwこう見えても魂使士なんです♪】

高麗)【Σ本当ですか!?魂使士ってほとんど狂ってる人のイメージがあるんですけど…】

レン)【…姉は狂ってますけどww】

高麗)【あ、えと…ごめんなさい;】

レン)【まぁ狂ってると思われるのは仕方ないよ、魂使士になれるのは『人外の者共』の血を引く者だけだからね】

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