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色彩  作者: 帝王星
朱雀の羽
1/12

1色

「いてっ!」

これで人にぶつかった回数は38回目…100m 先の店からここまで来る間にだ。

…自己紹介が遅れたな、俺の名前は色神銀。周りからは銀と呼ばれている。

「…おかしいな、この辺りのはずなんだけど…さっき手に入れたばっかりなにのな…」

俺は先ほどこの辺りで落とした赤の眷属『浅蘇芳』を探している。

「おっ、あったあった…」

慌てて俺は色箱に手を伸ばす。だが俺の手は『浅蘇芳』を掴めなかった。

「お?何だこの箱…」

突如現れた男が『浅蘇芳』を拾い上げる。

「…すいません、それ俺のなんで返してもらえます?」

俺は丁寧にそう言って、色箱の返却を求めた。

「…あ?何だガキ?」

男はそう言って俺を睨む。おいおい…そんだけで怒んなよ。

「はぁ…誰がガキだと…?」

男の後ろに回りこみ、首に小刀を突きつける。一瞬の出来事に、男は反応できない。男は力なくその場に膝を付いた。

俺はその男の手から『浅蘇芳』を取り上げて携帯を開いた。アイツの事だ、どうせ今頃賞金首狩りでもしているだろう。

「…やっぱりねぇ…」

携帯の画面には…『6丁目の廃工場第2倉庫で待ってろ。10時には来る』…主語が無くてもわかる。

「…しょうがないか」

後で文句言ってやる。俺はため息をついて、その場を後にした。

「色神銀か…面白そうだね」

建物の影から紅い双眼が覗き、俺の姿を捉えていた。


「…相変わらず臭い…」

赤髪の青年は、真っ赤な液体の滴る袋を担ぎ、近くにあった廃墟に入っていく。彼の手は袋を掴んでいた所為か、真っ赤に染まっていた。

「…いるんだろジーク」

赤髪の青年は暗闇に向かって話しかけた。それと同時に、闇の中から足音が聞こえる。

「また狩って来たのかい?相変わらず君はある意味すごい…」

闇の中から出て来たのは、色白で黒髪の青年だった。恐らく赤髪の青年と同じくらいの年齢だろう。

「こんな汚い仕事を平気でやれるなんて」

「いいから早く換金してくれ。臭いから」

赤髪の青年は目を細めながら鼻をつまむ。

「分かったよ洸雅」

ジークは面倒くさそうに袋を摘む。

「また首だけかい?いい加減切り落とすのやめてよね。本当君はどうかしてる」

ジークは頭を押さえる。

「体も一緒だと重たいだろ?」

洸雅と呼ばれた赤髪の青年は、そんな事を言いながら携帯でゲームをする。

「…」

ジークはそんな彼を横目で見てため息をつくと、首を持って暗闇に消えた。

「ため息つくと幸せ逃げるらしいが…」

「誰のせいだよ」

暗闇の奥からジークの声が聞こえる。

「あまり腹を立てると、血圧上がるぞ」

洸雅の口からそんな言葉が飛ぶが、彼の顔色は全く変わらない。暗闇の向こうからは、物音一つしない。

「早くしてくれ…俺も仕事がある」

すると、闇から何か飛んでくる。

「早くしてあげたよ?」

洸雅に向かって飛んで来たのは、中に現金の詰まったアタッシュケースだった。洸雅はそれを掴むと、後ろを向いて歩き出す。

「また首を獲ったら来る、次は投げるなよ?」

くるりと首だけを回してジークを見据える。

「どうせ来るんなら君じゃなくて銀が来てくれると嬉しいんだけ」

ジークの言葉は、向かって来た大剣によって遮られた。大剣を振るったのは、洸雅…

「…ケンカなら買うが?」

それだけ言って、大剣を鞘に収める。

「わぉ、戦闘民族ってのは恐いねぇ」

わざとらしく言うジーク。洸雅の肩が僅かに動く。だがその直後、何もなかったように闇に消えて行った。


「…はぁ」

待ち合わせ場所に着いた途端、ため息を吐く。裏世界の俺は『何でも屋』を相棒と共に営んでいる。情報提供や殺しの依頼から、子守やおつかいなどの依頼まで…今日もそんな依頼を請けに来た所だ。

「…もしもし、こちら『何でも屋』です」俺は依頼主の番号に電話をかける。

「はい、こちら鈴木です」

依頼主の男が電話に出る。声からして20代半ばだろう。

「探して欲しいと言われていた物についてですが…詳細をお教え下さい」

うぉ、自分でも驚くほどの敬語だ。

「あぁその話か」

それ以外に何があるってんだよ。口から漏れそうになる言葉を必死に飲み込む。

「大昔、中国の地に降り立った朱雀の羽です」

「…朱雀…?」

朱雀なんているのか?俺は半信半疑で、今の説明をメモにとる。

「その羽を持つだけで、不老長寿が手に入るという伝説があります」

わぉ、任務じゃなかったら絶対的に欲しいね、ソレ。

「了解しました、すぐに探してきます」

俺はそれだけ言って、携帯の通話を切る。はっきり言うと物捜しの仕事は面倒だ。

「…俺『黄の眷属色』持ってないしな…」

ふと腕のデジタル時計に目を落とす。表示は9:58…後2分か。

「どこかで死んでたらいいな♪いいな♪いいのにな♪」

爽快なリズムに乗せて、そんな事を呟く。

「なるべく陰湿な所で♪驚くほどの奇病で♪」

あ、何か楽しくなってきた。

「そのゴミのような遺伝子を♪未来に残さないで♪」

「誰がゴミだ」

不意に後ろから声がする。腕時計を確かめる と、10:00ジャストだった。

「何でもないよ洸雅♪」

「…『櫨色』…抜と「ごめんなさい」フン…」

畜生、この俺に頭を下げさせるとはいい度胸だ。

「で、依頼内容は」

何もなかったような顔で、洸雅が俺に尋ねる。少し腹が立つ。

「中国の『朱雀の羽』って代物を持ち帰ってくるだけだとさ」

俺の言葉に反応したのか、洸雅の眉が少し引き攣る。…そう言えば洸雅は戦闘民族『朱雀族』の末裔だったな。てか早く滅んでくれ、そんな民族。

「で、飛行機にする?徒歩にする?俺に頼る?」

その途端、横から恐ろしいほどの殺気が。スリル満点だよコレ。

「お前に頼る事だけは避けておく」

さり気に失礼な事言いやがったよコイツ。

「どうすんの?洸雅『白の眷属色』持ってないじゃん」

あ、何か落ち込んじゃったよ。可愛いなオイ。

「銀、お前はどうやって行くんだ?」

腐れ朱雀が、俺をチラ見しながら聞いてくる。普通にこっち向けよ。

「俺は…卯の花で行くね」

「よし、よこせ」

…そう言われてハイって言う奴いないと思うよ?

「何で?」

「中国に行くから」

いや、これないと俺も行けないんですけど。

「仕事先は中国なんだろ?」

そんな事は分かりきってんだよ。俺は腰から青みがかった『色箱』を出し、開箱した。卯の花色の髪の少年が現れる。

「俺はよこせと言ったはずだ が?」

知るか。 卯の花が空気に手を翳すと、2体の大鷲が現れた。俺はその大鷲の背に飛び乗る。

「これで中国までひとっ飛びだぜ?」

すると、洸雅も渋々大鷲の背に飛び乗った。

「結局俺を頼るかたちになったな」

その途端、俺の屈めた上を銃弾が掠める。横を見ると、銃口から煙を出している二丁拳銃を持った洸雅がいた。確信犯だねコイツ。

「うわーんパパー、洸雅たんが虐めてくるぅー」

また銃弾が飛んでくる。俺は屈んでかわす。

「…死にたいのか?」

洸雅がそう言うと、二丁拳銃が泡のように弾けて消えた。

「すみませんでした」

畜生、また俺に頭を下げさせやがって。


「あの赤髪…間違いない、『朱雀族』の末裔か…」

凍て付くような蒼い瞳が、空を舞う俺と洸雅の姿を捉えていた。

「…徹底的に潰す」

無表情の青年の右目を跨ぐ青い炎の刺青が、不気味に燃え上がる。彼の双眸には憤怒の炎が灯っていた。


「…銀」

「何?」

「…いや、何でもない」

洸雅が一瞬不審そうな表情をするが、すぐに元の無表情な顔に戻る。

「…追手か?」

「…違う」

洸雅の翠の瞳が、俺の背後を見つめていた。俺もつられて後ろを振り返る。

「…何もないじゃん、やっぱ洸雅の頭は空っぽなんだね」

「頭の中に何もない真空が広がっている銀に言われたくない」

「洸雅こそ、その空っぽの頭に鳥でも飼ったら?」

あーあ、またいつものように口喧嘩が始まる。

「銀こそ、その宇宙空間の頭内に星を生み出して有効活用すればいいだろう?」

「んー、洸雅と言う名前の粗大ゴミは何曜日に捨てるのかな?」

俺がそう言うと、また頭の上を銃弾が掠める。洸雅の手にはマシンガンが。

「チッ…」

うわぁ…相棒にマシンガンぶっ放した上に、舌打ちまでしたよこの人。洸雅の手に握られていたマシンガンが弾けて消える。

「次は殺すだけでは済まない」

洸雅はポケットから携帯を出し、ゲームをし始める。俺もポケットから携帯を取り出す。 いつものように、インターネットでよく行くサイトにアクセスする。

「おぉ!みんな揃ってるじゃん!」

俺がふとそう言うと、洸雅がこちらを見た。

「…みんな?俺とお前以外誰がいる」

洸雅は俺の一言を真に受けているらしい。違ぇよ、俺が言ってんのは『裏世界』(ネット上)の事だよ。

「何でちゅか~?洸雅たんには話してないでちゅよ ~?」

「…」

おぞましいほどの殺気を放つ洸雅。本当に気が短いなぁ洸雅たんは。

まだ中国に着くには5時間以上かかる。最近の携帯は電池持続時間が長くなって、満タンなら1週間は持つ。科学って凄いね。

「さて、チャットに入ろうっと」

ここには洸雅も来ない。俺の憩いの場だ。



チャットルーム


―Agさんが入室しました―


Ag)【こんちわー】

ネイビー)【久しぶりだね~♪】

日洋)【いやいや、昨日もチャットで話したよね?】

Ag)【まぁいいではないか。いつものように笑いあり、泣きありだよ日洋殿】

日洋)【Σ時代劇!?】


―奏さんが入室しました―


ネイビー)【あっ!奏さんだ!ヤッホー!】

奏)【こんにちは】

Ag)【相変わらずテンション高いねネイビーさん;元気でなにより】

日洋)【…ただの馬鹿だと思うけど?】

ネイビー)【Σちょっ!酷っ!僕これでも博士号持ってるよ!?】

奏)【凄いですね。私色使士なんで、勉強する暇ないんですよ;】

ネイビー)【…僕も一応色使士です;】

日洋)【うっそ!?マジで?!】

Ag)【リアルじゃ超真面目だったりしてww】 奏)【…もしかして、皆さんも色使士ですか?】

日洋)【ご名答】

Ag)【うん、まぁね】

ネイビー)【見たか日洋!僕は馬鹿じゃない!むしろ天才だ!】

Ag)【それを自分で言うのもどうかと思うけど…】

奏)【あっ、私これから仕事なんで、これで失礼します;】

日洋)【Σヤバッ!もうこんな時間だ!】


―奏さんが退室しました―

―日洋さんが退室しました―


Ag)【仕事頑張って下さいねー】

ネイビー)【そう言えばAgさんは仕事ないんですか?】

Ag)【今仕事で中国に向かってまーす】

ネイビー)【へぇー、何の仕事で?】

Ag)【『朱雀の羽』ってのを探しに行くんです】

ネイビー)【…朱雀の羽、かぁ…じゃあ1つ言っておくよ】

ネイビー)【もし見つけたら、絶対に素手で触っちゃダメ】

ネイビー)【皮膚を焼かれるから、熱に強い手袋をした方がいいよ】

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