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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第9章 かわる

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【第9章 かわる 第76話 どこにでもある話】

――プ、プ、プ、プルルル、プルルル

「はい、チェンさんね?何かあったの?」

 チェンがあこがれ続けている美咲の声。チェンは勇気を振り絞るように尋ねた。


「美咲さん。アリシアというAIは美咲さんが作ったものですか?」


「そうよ」

 驚くほどすんなりと答える美咲。


「……そんな簡単に」


「でも私が作ったというより、私と悠太君が作り、それを買い取ったエリシオン社っていう悠太君と悠太君のお父さんが働く会社が仕上げたって感じだけどね」


 膝がガクガク震えているチェン。


「プロテオブロックはアリシアと富岳が設計したのですか?」


「それは私のことではないから、私が話してよいことではないわね。なぜ?」


「……実は私が来日した本当の目的は、プロテオブロックの設計者を探すことです。それを作ったのがアリシアだとすると、結果としてアリシアを作った美咲さんに、ご迷惑がかかるかもしれない状況を迎えてしまいました。美咲さんにご迷惑をかけることは絶対に避けたいけれど……私はどうしたら良いのですか?」


「チェンさん。状況がつかめなさすぎるけれど、事実を捻じ曲げることはできないわ?私が言えるのはアリシアを作ったのは私と悠太君。これは曲げられない事実。アリシアとプロテオブロックの関係については私は何も言えない。だって私のことではないのだから。それをそのまま受け止めるしか方法は無いんじゃない?」


「真理雄さんって、どんな方ですか?鎌倉で美咲さんと別れてから、まるで私の全てを知っているような口ぶりで、私の未来を言い当てるようなことを言っていました。それは予言のように、その後真理雄さんが言ったことが、いくつも私の目の前で起こりました」


「ははは。真理雄君は少し不思議よね。でも信頼も信用もできる人よ。それは確かね。ねえ、チェンさん。あなたの状況が私には全く見えないけれど、結果はコントロールできないの。だから事実をそのまま受け止める。あなたはあなたが知ったことをそのまま持ち帰る。難しいことは何もない」


「でもそれでは美咲さんに迷惑がかかるかもしれない」


「なぜそうなるのかが私にはよくわからないけれど、そうだったとしても事実は変える事が出来ないのよ。チェンさんが私に何かするの?」


「そんなわけないじゃないですか!」


「じゃあチェンさんの仲間が私に何かするの?」


「……」


「チェンさんの仲間はそんなに信用できない人たちなの?」


「……いえ」


「じゃあ正直に伝えなさい。あなたがなぜプロテオブロックの設計者を探しているのかはわからないけれど、アリシアを作ったのは私達であることは間違いない。それを知ったということを、仲間に伝える場所まで進まなければ、次の一歩は踏み出せないのよ」

 気が付くとチェンは、手が震えるくらい強くスマホを握り締めていた。


 美咲との会話を終えた15分後には、共産主義国までの航空機チケットを手配して、ホテルの清算をして羽田空港に向かったチェン。タクシーの中でワンにメールを打った。

「ワン警護官。大至急お目にかかってお話ししたいことが出来ました。いま羽田空港に向かっています。何時でも構いませんので、必ず今日中にお時間を頂けるように、よろしくお願いします」


 チェンは共産主義国に着くと、大きなキャスターバッグを引いたままで中南海に向かった。



 中央警護局がある紫光閣の第七接見室に着いたチェンは、ワンに接見を求めると勤政殿でワンが待っていると言われた。チェンの表情に緊張が走った。


 勤政殿が見えてくると、いつの日かのように入り口でワンが待っていた。

「チェン、ご苦労様。何かあったのか?」


「ここではちょっと……」


「わかった。付いてきなさい」

 ワンは勤政殿の中に入っていった。


 エレベーターの中でワンはチェンとは目線を合わせずに言った。

「チェン。何かあったのであろうことはお前の様子からうかがえるが、主席も同席したほうが良い内容ではないのか?」


 チェンは慌てて首を左右に振った。

「と、とんでもないです。とにかく、まずワン警護官だけにお伝えしたいです」

 ワンは小さくうなずくと、エレベーターを降りて『主席警護官室』のドアを開けた。


 ワンはソファーを指した。チェンは座らずに言った。

「どこからお話してよいのか分かりませんが、何一つ確定情報がありません。私が一番初めにお伝えしたい事は、主席の暗殺計画があるという情報を得たことです」


 ワンは落ち着いた表情で返す。

「チェン。主席の暗殺計画が無かった瞬間など一度もない。国内外問わず、常に主席の命は狙われている。何をそんなに慌てているんだ?相当な信頼置ける情報筋ということなのか?」


 チェンは何かを言いかけて、そのままソファーに座った。


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