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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第8章 はじまり

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【第8章 はじまり 第72話 4回目の神奈川県川崎市遠藤町の交差点】

「よし。安田悠太の身柄はFSBが保護。安田翔子は神奈川県警が吉住小学校で保護。残すは安田美咲」


 光也とCCCに詰めていたメンバーとの音声チャットを聞き、見たことがないくらい慌てた様子でNSS介入班のチームルームのドアを壊す勢いで飛び込んできた冴子が、神奈川県警とFSBに翔子と美咲、悠太の保護を依頼し終わりつぶやいた。


 冴子は再度スマホで電話を始めた。


「もしもし。どうしました?」

 電話の向こうから、少し緊張した美咲の声。できるだけ落ち着いて冴子は言葉を発した。


「美咲ちゃん。国外脅威対象勢力があなたたちを狙っている。いま警察が向かっている。これは私の指示による保護。悪いけれど指示に従って警察に保護されて」


 美咲は珍しくかなり強い口調で言った。

「悠太君は?翔子は?」


「悠太君は厚労省サーバールームで既に保護済み。翔子ちゃんの小学校にも、美咲ちゃんと同じように警察がサイレン鳴らして向かって保護済みよ。悪いけどなりふり構っていられない」


「そこはいいです。なりふりとか。でも、ありがとう」


「私の仕事だから」


 その時、隣にいた光也が叫んだ。

「冴ちゃん!警察から小学校でターゲットを乗せたパトカーが、武装集団に襲撃を受けたと報告。交戦中!インコンタクト!」


 天を仰いだ冴子が言った。

「……美咲ちゃん、ゴメン。翔子ちゃんを乗せたパトカーが襲われてる。詳細はまだ不明。甘かったかもしれない」


 冴子のスマホの向こうから『ドサッ』という大きな衝撃音が響いた。


 その瞬間に音声チャットに真理雄の声が響いた。

「現在インコンタクト。僕の指示で2台分乗で僕を含め7名が応戦中。初めにパトカーを襲ったワンボックスの5名は退けましたが、バックアップ隊らしきワンボックス3台、おそらく20名程度が参戦でヤバい状況です。応援を乞う。応援を乞う」


 驚いた表情の冴子が怒鳴った。

「どういうこと?!なんで真理雄がそんなところにいるの?!」


「詳細は後程。僕がつながっている共産主義国のスパイからの情報で、共産主義国の情報が洩れて、別勢力がアリシアの設計者である美咲ちゃんや悠太君を狙っていると情報をつかみました。一番ヤバそうな、翔子ちゃんの保護に向かった神奈川県警のバックアップに独断で入りました。案の定仕掛けられましたが、僕の読みよりずっと重武装です。一刻も早い応援を!」


 冴子はすぐにスマホから警察庁に連絡をして、現状を伝え応援を依頼。CCCに詰めていた各部署のメンバーも、それぞれのチームに対して、至急行動を開始するように伝達を実行していた。


 場所は神奈川県川崎市、国道1号線の遠藤町の交差点。パトカーの右隣の反対車線に今は無人となっている黒のワンボックスカーが止まり、左隣には真理雄が乗っていた白のセダン。その後ろには介入班の4名が乗っていた紺色のセダンが止まっている。


 白のセダンの後ろ座席には、翔子を挟むように響子と介入班の三橋が座り、手にはスミスアンドウエッソン社のM360リボルバー拳銃が握られている。


 三橋がイラついた様子で言った。

「響子。自動小銃相手に5発しか入らないリボルバーで戦いになるわけねえだろうが」


 響子も返す。

「あたしに言われても困る。男なんだから、身を挺して女子どもを守りなさいよね」


「お前の方が戦闘力は上だろうが!クソ女が!!」

 翔子が乗った白いセダンを取り囲むように、真理雄と介入班の3名の合計4名が、同じ拳銃を手に持ち周囲を警護。介入班の1名は、パトカー内で銃撃を受けた警察官を手当てしている状況だ。


「全員、脅威対象の第二波が来る前にここから離脱する。猶予は無い!僕が白セダンを運転。1名はパトカーへ移動し後に続け。残りの者は我々が出車後にもう一台に乗り込んでバックアップに入れ。行動開始!」


 真理雄は大きな声で叫び、すぐに白いセダンの運転席に乗り込んだ。パトカーの運転席にも一人が乗り込んだのを確認し、白いセダンが動き出した瞬間に、少し離れたところに停車していた、別の黒いワンボックスカーが白いセダンに向かって体当たりを試みた。


 それを察知したパトカーは割り込むように黒いワンボックスにぶつかり、翔子が乗った白いセダンを守った。


 真理雄はすぐに大回りをして交差点に進入しアクセルを踏み込んだ。次の瞬間、また別の黒いワンボックスから、数名の兵士が自動小銃による銃撃を白いセダンに向けて行った。


 介入班の他のメンバーが乗る、紺色のセダンが白いセダンの後ろにつけて、銃撃から翔子たちが乗る白いセダンを守った。


 真理雄はアクセルを強く踏み込みながらチラッと振り向き翔子に言った。

「怖がらせてゴメンね、翔子ちゃん。必ず守るからね」

 響子は隣で腕にしがみつく翔子を、両手で強く抱きしめた。


 次の瞬間、目の前にドローンが現れ、翔子が乗った白いセダンのフロントガラスにぶつかったかと思いきや、ガラスは真っ黒なペンキのようなもので塗りつぶされて、視界が奪われた。


 真理雄はすぐにワイパーを動かすが、その目隠しのようなペンキははがれない。

「くっそ!ドローンまであったのかよ」


 後部座席の右側に座った三橋は窓を開けて身体を乗り出した。

「真理雄さん、そのまままっすぐ。指示をする、従え!!」


「頼んだ!」


 真理雄は叫び返した。


 次の瞬間、窓を開けた後部座席右側の窓からもう一台のドローンが飛び込んできた。ドローンが視界を奪う強い光を発するのと同時に、催涙ガスがセダンの中に充満した。


――ドカーン

 激しい衝撃とともに、車は急停止した。横から突っ込んできた黒いワンボックスが、翔子を乗せた白いセダンを押しやり、ガードレールへと激突させたのだ。


 響子はすぐさま翔子を抱え、車外へと飛び出した。しかし、目の前には自動小銃を構えた複数の兵士。


 響子は即座にM360を地面に放り投げ、両手を上げて動きを止めるしかなかった。


 兵士の一人が響子の側頭部を銃床で殴りつけ、彼女はその場に崩れ落ちた。翔子はそのまま担ぎ上げられ、黒いワンボックスに乗せられた。


 響子もまた、背中を蹴られ無理やり意識を取り戻させられて、髪の毛を掴まれ別の車両へと引きずりこまれた。


 二台の黒いワンボックスは、まるで何事もなかったかのように静かに走り去っていく。


 静寂を取り戻した現場には、まるで大きな交通事故でも起こったような壊れた数台のセダンやワンボックスカーやパトカーと、銃撃を受けた介入班のメンバーと警察官だけが取り残されていた。


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