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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第8章 はじまり

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【第8章 はじまり 第71話 解らないを怖がるのが人間】

「気持ち悪いわね。絶滅したチリのヤーガン語で話しかけられて、理解できちゃった感じよ。科学者である医者が口にしちゃダメな気がするけれどね。人類の存亡危機のきっかけが起こった時点で、ブラックホールに世界を複製して、人類の存亡が迫って来たらそっちの世界でやり直すってやつでしょ?医者って科学者なのよ?まったくもう」


「さすが美咲ちゃん。正確に言えば『ブラックホールに世界を複製』というより、僕たちが複製した別宇宙が人間にはブラックホールとして観測される感じなんだけれどね。まあ、いいや。とにかくね、ReTakeを実行する事になりそうだから。伝えに来た」


「どこかの宇宙の私が、人間である私に知らせるように望んだからよね。覚えていないけれど、わかっているわ。で?世界を襲っているGSOウイルスが人類を滅ぼすの?」


「そうなんだ。人間が作った変異しないはずのウイルスが、自然という強大な流れに飲み込まれて変異してしまった。だから人間では対処できない。GSO-1の元ネタになったウイルスの休眠ゲノムが、共鳴し合う休眠ゲノムを持ったウイルスと接触してしまったんだね。まさかのスイッチが入ってしまってモンスターになった。人間をターゲットに作られているから、他の動物では発症しないけれど感染はする。半年で9割の人類が死んで、1年で残りの1割も死に絶えるってところかな」


「つまりやり直してGSOウイルスを発生させないようにするってこと?どうやって?」


「さすが美咲ちゃん。言い難いんだけれどね、悠太君がとある団体にアリシアの姉妹を渡してしまったんだ。このアリシアの姉妹がGSOを設計した。だからこれを止めようと思う」


「え?ちょっと待って?聞き捨てならないわね。私の悠太君が人類を滅亡に追い込んだって言うの?」


「悠太君がっていうより、エキドナという団体が正しくない形で手に入れた、アリシアの姉妹がだね」


「翔子が誘拐された時ね……でもアリシアが原因ってことならば、私がってなるじゃない。私があのAIを作らなければ悠太君が仕上げる事もなかったんだから」


「そういう言い方もできるけれど……」


「どこでどんな風にその流れを変えるつもりなの?」


「翔子ちゃんが誘拐されるのを防ぐよ。だから今回のReTakeは割と簡単だと思っている。人類の滅亡ってね、どうしようもない大きな流れの時もあるんだけれど、え?そんな事がきっかけなの?っていうくらい小さなことである時もたくさんあるんだよね」


「例えば?」


「そうだなぁ……割と最近だと、ノルウェーからオーロラ観測用のロケットを打ち上げた時に、偶然ロシアから見た時にアメリカのノースダコタ基地からのミサイル軌跡と重なってしまった。報告を受けたエリツィン大統領が核攻撃命令を下しちゃったとか。キューバ危機の時はいろいろあったんだけれど、本国との通信ができなくなっていたソ連の潜水艦が、核魚雷の発射を実行して世界戦争につながったとか。あ、もっと最近間違えて50年前の凶悪インフルエンザ株が、間違えて世界中の4000近い研究所に送られちゃって、人類の7割が死んじゃったとかね。これらは割と簡単に滅亡を防ぐ事ができたんだ」


 真理雄は過去に見たテレビ映画でも思い出すように言った。


「確かに私が知っている過去は、エリツィンは観測員が核攻撃ではないと結論付けて発射命令は出さなかったし、潜水艦の指揮官の一人だったアルヒーポフがモスクワの許可がない核攻撃は認められないと反対したり、インフルエンザは開封される事なく回収されたのよね。つまり真理雄君がやり直して出させなくしたっていうこと?」


「僕ではないんだけれどね。その時にアニマの意識を持ちながら人間をやっていた、いわば当番みたいなアニマがそれぞれ工夫して流れを変えたんだ」


「当番とか簡単に言ったけれど、真理雄君のように、人間をやりながらもアニマの意識を持ち、人間を滅亡から遠ざける働きをする存在っていうのは、一人なの?」


「おや、一人ってわけではないんだけれど、僕たちは一が全で全が一だからね。肉体は複数だけれど意識は一つだね」


「……世界中にそんな笑顔を絶やさない、悠太君の親友がたくさんいるって、なんか気持ち悪いわね」


「酷い言い草だなぁ。まあ人間は、わからないを怖がる性質で生き延びて進化してきたからね。よしとしておこう」


「まあとにかく、どうせ私は何もできないんだから、頑張ってね」


「うん。また相談に来たらアドバイスちょうだいね」









 


「で、真理雄君。何の用なのよ?」

 美咲は黒田病院の職員専用休憩室で、腕時計で時間を確認しながら眉間にしわを寄せた。


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