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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第7章 つなぐ

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【第7章 つなぐ 第63話 ワン元主席警護官が書いた詩】

 その三日後、残務整理もあともう一息まで片づけていたワンが、朝いつもの時間に紫光閣に到着すると、第七接見室の入り口には、黒いスーツを着た男が5人立っていた。

「ワン同士。我々は中央規律検査委員会の者です。ワン同士には主席暗殺計画の嫌疑がかけられております。ご同行願います」


 その言葉と共に、スーツの男がワンに近寄り両腕をつかんだ。

「従うよ。逆らいはせぬ」


 ワンはスーツの男に抱えられるように、紫光閣の外に止めてあった、黒張りのセダンの後部座席に乗り込んだ。車の中で手錠をかけられたワン。


 車は中南海の石塀を離れると、十数分で匂いの違う街へ入った。平安里西街。ブロック塀の上に古い監視カメラ、門標は消えかけた金色の文字。裏門のスロープを下ると、空気は一段冷える。


 地下の受領室。受付のような場所だ。蛍光灯は無音で、机の上にはノーカーボン複写の身柄受領簿、封緘用の赤い糊とボールペンが無造作に置いてある。係員は名前を名乗ることもない。

「身柄と私物の受領承諾の手続きです」

 ワンは署名し、手首の金属が小さく音を立てた。


 係員が引き出しから出して押した、ハンコの乾く匂いだけが残る。二十分後、ワンは別の車に移された。窓は内側から遮光フィルムが張られており、街の様子は見ることができない。

 1時間以上車に揺られて、北京郊外にある『監査調査留置場』に到着した。


 早速その日から取り調べが始まった。

 ワンは自分の身に何が降りかかっているのかを把握する為に、自分で語ることを極力控え、相手が語るストーリーに耳を傾けていた。


 どうやら相手が持っているストーリーの全貌は、主席がアリシアを超えるAIの作成を指示した。もしこのようなAIが完成してしまうと、ワンは自分の立場が危うくなると危惧した。


 そこで人民解放軍出身であるワンは、あくまでも人間が主導できる国家づくりを目指すべく、軍の権力を大きくするべきだと考え主席に伝えたが、軍の時代ではないと一蹴された。


 このままではAIに国を乗っ取られてしまうと考えたワンは、軍主導の暫定体制を確立する為に、主席の暗殺を企てた。


 ワンはこの企てを、以前自分の同僚であった軍人の何人かに相談をしていたが、そのうちの一人がとんでもない企てだと危惧して、中央国家安全委員会の高官に極秘裏に通報した。


 ワンはこのストーリを細かく切った質問を受け、それに対して答え、都度弁明書の提出を求められた。


 ワンは主席警護官という立場上、規律委員会の査問下に置かれた自分の書いた弁明書が、各部門の副部長クラス以上に共有されることは知っていた。


 ある時ワンは、その弁明書の終わりに自分の気持ちを表すような詩を書いた。


 ソンを危険な目に合わせる可能性に戸惑ったが、この国に起こっている重大で悪質な状況を鑑み、ソンにだけ伝わるようなメッセージを書いた。


――


リウ主席は先代主席より、この国の人民に平和をもたらすために託されたが、大変に苦しんでいたし、時に強権を見せて恐れられることも辞さない覚悟を持っていた。

>青き燕は先代赤き燕より春への路を託されし、もがき苦しみ恐れられるもの。


私はリウ主席の部下の中でも、最も近くにいる長兄のような存在。リウ主席の行方をいうなれば兄弟のような存在である、ソンやチェンに探してほしい。

>我は青き燕の子。長兄から伝えられし青き燕の行方を、我もまた妹に伝える。


ソンやチェンは極秘裏に動く必要があるし、早く状況を調査する必要がある。

>青き燕の子らは、静かに早く空を舞い飛ぶ必要がある。


リウ主席はすでに暗殺されていると考えている。

>青き燕は西の天に既に沈んだ残り陽に、吸い込まれるかの如く消えていった。


リウ主席がサインをするときに使うインクの色とは違うインクが使われている。

>青き燕の意思を表すはずの足跡は、青き燕が愛すべき色とは違う足跡の色となった。


リウ主席は海外の署名であっても共産主義国産のインクを使う。国を愛しているから。

>愛すべき色は青き燕が愛すべき者たち以外に紡ぎ出せない。


動画でリウ主席のメッセージが流されたが、おかしいと感じるところがあった。

>青き燕を真似るように同じ声で鳴く燕の動きは、目を凝らせばそれは燕ですらない。


おそらくデジタル技術で作られた、フェイク動画である。

>鳥でもなければ生き物でもない、現実か模倣かの境界線が曖昧となる。


閃電白虎に調査させたが、この動画にはおかしいと感じるところがあった。

>森奥深く住む白き虎たちは、電撃の閃光でそれを見抜いた。


リウ主席は共産主義国産の食べ物以外は口にしない。

>青き燕は世界を渡るが、生まれた地のありふれたものしか口にせず。


主席が贅沢をすれば、人民の心が離れていくことを知っていたからである。

>渡り先の特別なものを口にすれば、生まれた地の風と相容れなくなることを恐れ禁忌とした。


しかしある時から、主席の食事の禁忌リストが更新され、高価なものばかりを望むようになっている。

>禁忌を破りし今となれば、それはもはや青き燕かと疑うばかり。


私はこれらを知り、主席の行方を探そうと考えてはいたが、規律委員会の査問下におかれそれができない状態である。

>青き燕の子らは青き燕を探す旅路を覚悟してはみたものの、深い森から飛び出せずにいる。


ソン、チェン。お前たちを危険な目に合わせることになるが、主席はどうなったのか?この国に何が起きているのか?を探ってほしい。

>強き雨風吹き荒れる中、危険を承知で誰にその旅を委ねようぞ


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