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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第6章 ひらく

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【第6章 ひらく 第51話 誰かが火を点けた導火線】

 セーフハウスに戻る警察官が運転する覆面パトカーの車内で、悠太と二人きりになった翔子が悠太の顔をじっと見つめて言った。


「いまはまだ、おとうさんやおかあさんのじんせいにかかわるようなことは、がまんしてね。わたしはおとうさんとおかあさん、どっちかをえらぶことは、いまはできないからね」


 異常事態のただなかであったとはいえ、翔子が見える範囲で自分がとった行動が間違いであったことはわかっていた。軽率という言葉を使いたくはなかったが、自分の行動を振り返って反省をせざるを得ないと悠太は感じていた。


 セーフハウスで待っていた美咲は、悠太と翔子の顔を見るや否や子どものように泣き出した。


 美咲は二人を抱きしめて泣いた。悠太が美咲に何かを告げようとした時に、美咲が悠太を抱きしめている腕の力が強くなった。

「何も言わないで。悠太君はベストを尽くした。私は悠太君の味方で妻だから。あなたの全てを肯定するから」


 少しずつ現実に戻る悠太の感情は揺れていた。


 翌日約束通り、必要な情報を小隊長の電子メールに送った悠太。この件について響子は冴子や光也に一切の報告はしていなかった。


 報告すれば、当然これに対して妨害が入ることを知っていたが、悠太があれだけの勇気で自分の命を救ってくれた事実に対して、響子ができる数少ない協力だと考えていた。


 そうなると、当然NSSではなぜ三人全員を殺害せずに解放したのか?という話になったが、元々のエキドナが、凶悪なテロ組織ではないからではないか?という流れで納得する様相を見せていた。


**


 エキドナでは、悠太からの情報を基にアリシアの土台を完成させていた。その後数週間で様々な情報をアリシアに与えた。


 彼らはこれに『ブラックアリシア』と悪ふざけのようなネーミングを施し、『BA』と呼ぶことに決めた。


 デジタル技術に関しては、世界でも頭一つ抜けた能力を持つ集団であるエキドナ。美咲や悠太が自宅に戻る事になった1か月後には、すでにアリシアの姉妹と言えるグレードまで実能力を高めていた。


 GAFAのトッププログラマーであっても、CIAであっても介入できない、特別な暗号通信網を使い、エキドナのデジタル幹部会議が行われていた。


 現在のリーダーである、『Cigs』と名乗る男が口火を切った。

「さて、我々の実戦部隊ともいえる『シカゴグリーン』による、制作者拉致によるアリシアの原型奪取。みんなの協力によって、1ヶ月足らずで利用可能な高性能AIに育てることが出来た訳だが、まずは我々の新しい仲間であるBAからご挨拶願おうか」


「はい、Cigs。私はこれから皆様の情報共有プラットフォームとして、この地球上のあらゆる不正や腐敗の根絶を目指して協力させていただきます」


「BA。我々はコウシナカモトという存在が、世界の欺瞞や腐敗、隠匿を暴いて人間に自分の意志と判断で行動を起こさせる、本当の自由を伝えるために活動してきた。だが人間の利己的な思考は止めることが出来ず、嘘が嘘を呼んでいる事に変化はない。コウシナカモトが去った今、人類に本当の自由をもたらすために、暴くという行動から方向を変えて、政府をコントロールする行動をとっていくことにした。まず初めに一つの国から嘘や欺瞞を取り払うことから始める決意をした。我々の意思は理解してもらえるか?」


「はい、Cigs。あなた達が行ってきた行動と、これから行おうとしている行動は、最終的に地球に住むすべての人類に自由をもたらすものだと理解しています」


 Cigsがパチンと両手を叩いて言った。

「ではBA。民兵組織であるシカゴグリーンもせいぜい兵数は1600程度。エキドナとの関係性を隠すために、一般的なPMCとして通常業務についている兵数が300程度だとして、実質1300程度の兵数となる。武力だけで国に戦争を仕掛けるのは難しい。我々としてはコントロールしやすいという観点と、その後世界全ての政府をコントロールするという狙いから、共産主義国を手中に収めたいと考えている。あの国は共産主義と言っても、実質的には主席という王が納める王国だ。それに一次産業、二次産業共に、もはやあの国が無ければ地球は成り立たない実力を保持している国だ。どのようなプロシージャ―で、あの国を我々の手中に収めるオペレーションを実行するべきか、意見を聞きたい」

※PMCとは民間軍事会社のこと


「はい、Cigs。このために用意してあるともいえる、ツァイ・シェンを使いましょう。彼は思考力が高くなく、自尊心は高い。さらに親が政治的な力を持っているという稀なカードです。いざという時に切り捨てても、エキドナには何もデメリットがない存在でもあります。彼に2枚のカードを渡します。一枚目のカードは、主席が強く欲していた私というカード。そしてもう一枚のカードは、主席が信頼しているワン警護官の裏切りというカードです。この二枚のカードを切る相手は、直接主席にではなく、ツァイ・シェンの父親を介して、現政府高官に極秘裏に切ります。高官は自身の利益、保身のために、ワンに知られぬように主席に取り入るでしょう。ワン警護官の裏切りというカードが、我々が捏造したものとも知らずに。閃電白虎にも偽情報を流しておきましょう。ツァイ・シェンは主席の相手をさせるには力不足ですが、彼と父親のセットカードであれば、現高官を動かすには十分かと予測します。そしてすでに高官という立場にある誰かに、首席を動かさせる。ワン警護官がいなくなれば、主席という存在は丸裸同然であると、皆様から提供されたデーターが語っています。エキドナの能力で中南海の警備システムをダウンさせることは容易いと考えますので、一時的にでもワン警護官を主席の元から引きはがせれば、首席を亡き者とするのは、シカゴグリーンの精鋭20名いれば十分ではないでしょうか?それ以降も主席には人目に触れない主席として存命を演じてもらい、ツァイ・シェンという新たな警護官兼特別秘書官が、首席からの指示を伝える係として活躍してもらいます。これでエキドナが実質的に共産主義国を手中に収める状態に持ち込めます。今回主席以外の血を流さずに、平和的な革命を成功させるため、ツァイ・シェンには、今しばらく自身が世界の王であると思ってもらうのが、最適解であると提示します」


 会議に参加している数名から、冷淡で冷酷ともいえるこの作戦に笑い声が漏れていた。


「ありがとう、BA。さて、みんなから何かしらのアンチテーゼが出なければ、この作戦を実行に移す事になるが、いかがか?」


 Cigsの声に、反対意見が述べられることは無かった。


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