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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第6章 ひらく

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【第6章 ひらく 第48話 魂に刻まれた原罪の目撃者】

 工事現場の事務所のような、外階段が付いているプレハブ2階建ての建物が4つある。


 そのうちの一つの2階に連れていかれた悠太と響子。その中には、太くて黒い金属棒で作られた、まるで動物園の檻のような小さなスペースがあった。


 悠太と響子はその檻の中に入れられ、その外には翔子が会議用の折り畳み長机に向けられた、パイプ椅子に座らされていた。


 翔子は、事前に何かを言われたのか、はたまた状況を鑑みた結果か、チラチラと檻の中の悠太を気にしてはいるものの、檻に近付くことはせず、悠太に声をかける事もしていない。


 翔子が時折悠太と響子に視線を向けた後、天井に設置されている複数の監視カメラに視線を向ける。

 翔子は二人に、この部屋は監視されていることを伝えたがっているような、そんなそぶりをみせつつ、右手の人差し指を自分の唇に触れさせる。声も聞かれていることを伝えたがっているように。


「翔子。痛い事はされていない?」


 悠太が翔子に声をかけると、翔子は悠太を見て笑顔を作った。

「もんだいないわ、だれだとおもっているの?みんなやさしくしてくれているからだいじょうぶよ」


 そう言う以外ないのかもしれないが、それでも悠太は翔子の言葉に救われる気持ちになる。

 それと同時に自分の隣で全裸のまま床に寝そべっている響子を見ると、どうしようもなくいたたまれない気持ちになる。


――僕のせいだ。僕がこんな行動に出なければ、この人がこんな目にあうことは無かったのに……でも、翔子に会えた。僕は……自分勝手で人のことを考えない人間だ……


 苦しみが悠太を襲う。


 身体を動かさず、小さな声で響子が言った。

「私は兵士でこれは仕事。あなたはあなたのベストを尽くしている。私も同じ。冴子さんがきっと見つけて助けてくれるから」

 それだけ言うと、響子はまた静かに目を閉じた。


 しばらくすると、スーツを着た白人男性と、黒い戦闘服を着た、車の中で悠太の隣に座っていた小隊長が部屋に入ってきた。


 翔子の表情は緊張したが、それまで通り静かに椅子に座っていた。


 小隊長が言った。

「安田さん。娘さんはとても物分かりのよい子で助かっています。さて、この方からお願いがあるそうです」


 白人が翔子の頭を優しくなでながら、視線を悠太に向けた。

「Your daughter has shown remarkable composure and cooperation—we truly appreciate that.As for you, Mr. Yasuda, the reason you’ve been brought here is straightforward: we would like you to reconstruct Alicia, here and now.Please inform us of any technical requirements—we will see to it that all necessary equipment is made available.Once the task is complete, both you and your daughter will be free to leave.Until then, I must be clear: there is no alternative path.」


 言い終えると、小隊長が日本語で悠太に言った。

「娘さんにも協力してもらい、遠路あなたにご足労頂いたのは、アリシアをこの場で作ってほしいからです。必要な機材は言っていただければ用意しますので、アリシアを作ってください。それが終わればお二方ともお帰りになって結構です。逆に言えば、それ以外お二人がお帰りになる方法は無いのですが」


 悠太は立ち上がって、檻を両手で握って言った。

「いや、それは無理だ。アリシアは、十年以上の歳月をかけて今のアリシアになっているんです。僕がベースを作ったのは事実ですが、ここですぐに作れるものではないのです。嘘ではないです。AIに詳しい人に確認してもらえれば、僕が嘘を言っている訳ではないことは分かります」


 悠太は必死に訴えた。

 小隊長は小声で悠太の発言を、翔子の頭を撫でている白人に伝えると、白人は小隊長に小声で何かを伝えた。


 小隊長は悠太に言った。

「彼は世界でも群を抜いているサイバー戦の猛者の集団の幹部メンバーです。AIについても当然よく理解しています。彼が欲しているものは3つ。言語モデルの初期構造である、モデルアーキテクチャと初期重み。そして価値観フレームワーク。最後に学習カリキュラムと指導アルゴリズム。この三点の制作を依頼したいと申しています」


 小隊長が言い終えると、白人は小声で何かを伝えた。小隊長は再度悠太に言った。

「彼はこう申しております。我々はアリシアの記憶も感情も欲していません。欲しいのはその器です。あなたが作った、あの異常なほど自然な対話能力を持つ人工知能の器を。その中に魂を入れるのは我々自身の役目です」


 悠太は小隊長に向かって言った。

「僕がそれを作ったとして、いや、作れたとして、一体何に使うのですか?あなたたちは、どこの誰で、何を目的にこんなことをしているのですか?」


 小隊長が悠太の言葉を白人の男に伝えると、二人は小声でしばらく会話をしていた。まるで言い争いをしているような雰囲気になってきた。白人が小隊長に「ファック」という言葉を使うのも聞こえた。


 その後白人は、小隊長を人差し指で指しながら言った。

「Your job is to follow your employer’s instructions. Now take the child outside—immediately. And send in the Dennis unit.」


「But—」


「Don’t make me repeat myself.」

 小隊長は翔子に声をかけて、翔子を連れて部屋を出た。


 部屋に残った白人は、スマホに向かって英語で話しかけ、翻訳アプリを使って悠太に向かってそのテキストをみせた。彼のスマホの画面には日本語が浮かんでいた。

「あなたはまだ、自分の立場というものがわかっていない」


 その直後、数人の足音が階段を上がってきた。

 悠太が乗っていた車の運転手と助手席に乗っていた兵士、後ろの席に座っていた兵士の合計3人。


 白人は小声で何かを言うと、3人はニヤッと笑い悠太がいる檻に向かってきた。

 開錠して扉を開けると、床に寝ていた響子を引きずり出した。


 白人が悠太に言った。

「Look carefully.」


 兵士たちは響子を先ほどまで翔子が座っていた長テーブルの上に乱暴に放り投げると、ズボンのチャックを下ろして、次々に響子を犯し始めた。


 響子が反抗しようとすると、髪の毛をつかみ、殴り、時に首を絞め、犯した。


 悠太がどれだけ叫んでも何の意味もなく、悠太が目をつぶると、白人が檻に入ってきて、悠太を羽交い絞めにして、響子が犯されているテーブルまで連れてきて、悠太の顔を響子の顔に押し付けた。


 泣きながらやめてくれと懇願する悠太を見ながら、響子を犯し続ける兵士が笑う。


 どのくらい時間がたったのだろう。永遠のように感じた時間が過ぎて、悠太の涙や鼻水、響子の涙や唾液、兵士たちの汗や精液まみれになった二人を、乱暴に檻の中に戻して兵士たちは部屋を笑いながら出た。


 入れ替わる様に翔子を連れて戻った小隊長に、部屋に残った白人が何かを告げて出て行った。


 小隊長は悠太に言った。

「安田さん。彼らは本気です。あなたが彼らの指示に従わない限り、数時間おきにこのようなことが繰り返されます。彼らの思考がマヒしていき、彼らの行動がエスカレートしないように、あなたも本気で取り組んでください。……女兵士のみならず、あなたの娘さんに被害が及ぶ前に」


 小隊長は苦々しい表情で部屋を出て行った。


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