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縁の理(えにしのことわり)中巻~ReTake.ZERO~悪(あく)のいない世界の片隅で、なぜ銃は火を噴いたのか?  作者: 平瀬川神木
第5章 あざむく

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【第5章 あざむく 第39話 動き出した特異集団】

 ツァイは目一杯の虚勢を張ってわざとらしく声を張り上げた。

「あんた、名前は?この国の生まれなのか?」

 日焼けした肌にしては深みのある黒さ、だが黒人ほど濃すぎない絶妙な色合いの皮膚を持つ男。そのオールバックの髪と鋭い目つきを、ツァイは値踏みするようにじろじろと眺めた。


 男は何の感情も感じられない、無機質な口調で言葉を返した。

「わたくしなど、あなたのようなリーダーに名乗る名はありません。『お前』とでも呼んでいただければ十分でございます。私の父は共産主義国人ですが、母はアフリカ系アメリカ人、生まれはアメリカの掃き溜めでございます。共産主義国人のような知能も持てず、アフリカ系アメリカ人のような強靭な肉体も持つことができなかった、中途半端な存在でございます」


 ツァイはブラックが発する言葉通りに意味を取り、自分がこの男より上位の存在であるという錯覚を強め、堪え切れずにニヤッと笑った。

「で、お前は俺に協力してくれると言った記憶が残っているが、その言葉に偽りはないのか?」

 

 ツァイは世界の征服者然としてきた口調で言った。

「もちろんでございます。ツァイ様。あなたの為であれば、私の全てをなげうって協力させていただきます。それがこの地球の為でございます」


 ツァイはますます調子に乗って、ソファーに深くもたれ脚を組んだ。

「この国の主席から、俺が直々に人間を超えるAIの作成を依頼されたんだが。さすがの俺でも一人でことを成すのは難儀なんだ。その協力者を探しているんだが……」


 征服者然とした言葉の持ち合わせが足りていないツァイは、たどたどしい口調で言った。

「昨夜ツァイ様にお渡しした時計でございますが、実は特注品でございまして。その時計のボタンを押してしゃべるか、スマホに文字を打ったり、紙のメモに文字を書いてその時計の12時を示す王冠のマークの部分に仕込まれているカメラで撮影していただければ、すぐさまあなたのお力になる者たちが行動を開始します。ツァイ様は今夜から、この世界の王たる力を手にお入れになられました。その腕時計を巻くという事は、ツァイ様がこの世界の王であるという宣言ということになります。ですが一度宣言をしたからには、途中で王の座を降りる事は許されません。ツァイ様。今夜この場でお決めください。この世界の王となられるか、それとも今までのように、理解されぬ道を歩まれるか」


 じっとツァイの目を見る、オールバックの男の迫力にツァイは押された。


 ツァイはどうにも表現できない、どうしようもない恐怖に襲われていた。

「ツァイ様におかれましては、お悩みになる必要もないと思いますが……」


 ツァイは無意識のうちに腕時計を外すように右手を当てていたが、あわててその手を引いた。

「もちろん、俺がこの世界を導くことを選ぶ……」


 オールバックの男は表情を変えずに立ち上がった。それと同時に奥の部屋から身体のラインをはっきりと映し出し、長いスリットからビロードのような白い肌を見せる、黒いワンピースドレスを着た、映画女優と言えるような美しい女性が入ってきた。


「どうぞツァイ様。この世界の王としての一歩目に、日ごろのお疲れを癒してくださいませ」

 そういうと、オールバックの男は部屋から出て行き、美しくセクシーな女性がツァイの太ももに手を置きながら隣に座った。



 その翌朝ツァイが目覚めると、昨夜を共にした美しい女性の姿は見えず、いつも通り仕事に向かったものの、誰にでもできるような面倒な仕事をこなすのがバカバカしく感じているツァイがいた。

「俺は世界を導く王になれる器の男なのに、こんなどうでも良い作業をやらせやがって……」


 昨夜の美しい女性の肉体美を思い出しては見たものの、自分がこれから何をして良いのかわからずにいたツァイ。

 王としての道を進むために、また昨夜のような女性と昨夜のような時間を過ごすために、人間を超えるAIを作り、首席に認められるにはどうしたらよいのか?その手順がわからないツァイ。


 ツァイはさんざん考えた挙句、自分のスマホに「日本のアリシアというAIを手に入れろ」と入力して、それを腕時計で撮影した。


**


 その日の午後から、日本の首相官邸の地下空間にあるCCCでは、今までとは明らかに毛色が違うサイバー攻撃に対応していた。

 それはあまりに巧妙で、あまりの物量での攻撃であり、攻撃を防ぎきれなかったNSSでは、結果として強制的にアリシアをダウンさせた。

 

 時間にして、ものの15分程度の攻撃であったが、なす術もなくアリシアのダウンを選択せざるを得ない状況に追い込まれた。


 光也がシベリアを食べる事も忘れて疲れ果てた表情で言った。

「いやいやいや。とっておきのファイティングアリシアをもってしても、強制ダウンしかなかっただなんてさぁ……」

 言葉すら出てこない。


 音声チャットでつながっていた紗耶香。

「これって光也さん。閃電白虎ではないですよね……」


 灰のようになっている光也を見て、笑いながら冴子が言った。

「紗耶香ちゃん。光也もダウンしているんだけれど、こんな光也を見るのは、ちょっとないわね……」


 光也がじろっと冴子に視線を向けて言った。

「エキドナの登場っぽい」

 

 休む間もなく、光也の端末にアラートがかかった。

「冴ちゃん、ヤバい!防衛相の衛星通信経路がハッキング仕掛けられている!紗耶香ちゃん!」


 紗耶香は一勝負終えたばかりのエンジニアに檄を飛ばした。

「みんな!シャレで済まされない攻撃よ!シグナルレッド!エマージェンシーレベルの警報発令!」


 NSS全体が揺れ始めた瞬間だった。光也が叫ぶ。

「紗耶香ちゃん!防衛相の経路は僕たちだって介入できないよ!防衛相に緊急!アリシア!防衛相に緊急通告を打って!!」


「光也さん。防衛相には緊急通告済みです。防衛相の緊急プロトコルが作動」


「冴ちゃん。自衛隊の別班の介入レベルだよ!課長に言って、課長権限で別班に緊急通知するべき案件」


 冴子はすぐにスマホで通話を始めた。

「課長、緊急よ。多分世界一のエキドナが本気になって日本を狙っている。今は防衛相がターゲット。さっきまではアリシアがターゲット。アリシアはアリシア自身が強制ダウンさせた。防衛相の自衛隊の別班に伝達。NSSもオーバーライドレベルかもしれないわ」


「落ち着け冴子。すぐに動く。オーバーライドレベルは承認。お前が発動しろ!」


「光也、オーバーライドレベルの警報を出して。課長の承認済み」


「了解」

 次の瞬間、NSSとCCCの室内は、薄暗くなり警告灯が赤く点滅を始めた。

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