~第4幕~
お互いにソファーに腰掛けて向き合う。
一人は大手芸能プロダクションの社長。一人は大手テレビ局の幹部だ。
奇しくも2人は同い年。賢治は島根生まれで谷村は鳥取生まれだが。
「それで話っていうのは?」
「今晩、いや、今日の夕方に中峯仁和のスクープが報道されます」
「おぉ~スタンプの。でも、彼は独身。不倫騒動ではないのかな」
「性加害疑惑です」
「あら」
賢治は真顔になってみせた。
性加害疑惑と言えば、そのスキャンダルで命を絶った男がいた。
伊達賢治と縁の深いあの男。
「また一人の犠牲がでるのですか?」
「それは分からない。ですが、この件が本当だとしたらフジサンテレビは大打撃を受けます」
「どういうことですか? 彼がとんでもない暴力を働いたとでも?」
谷村は目をしばらく閉じて唸る。どうやら深刻な出来事らしい。彼はABCDテレビの職員。フジサンテレビの事など他人事だ。むしろ敵の事だから喜ぶべき。
「ここまで来たのだから。話さないで帰るってことはないよな?」
賢治はウィスキーを一口つけると敬語を外した。彼がテレビ進出した時に谷村にはとてもお世話になったもので。賢治が躍進できたのは彼のサポートがあったからに他ならなかった。そんな恩義もあって賢治はいつだって敬語で向き合ってきた。でも、この件について只ならぬモノを感じて止まない。この谷村とは何があっても可笑しくない。ここで殴り合いになってもイイぐらいの覚悟を決める。
数分の沈黙が流れて谷村は重い口を開いた。
彼から話されたその内容は伊達賢治ですら驚く内容そのもので――
話し終えた谷村は「この先は伊達さんがどう動かれたって、僕はアナタを支持します。ただ、出来るなら立場がどうあれ僕にできることはさせてください」と深く頭を下げて社長室をでた。
風呂場から蔵馬がスッとでてくる。
「とんでもないネタが入ったね」
「………………」
「どうするの?」
賢治は机の上にウィスキーを置いたまま両手に顎をのせる。
そして考える。自分がどうする事が正解なのかを――
その報道は谷村の言うとおり、週刊誌の電子版よりSNSを通じてあっという間に世間に広まった。今はもう既に解散した国民的アイドルグループ・スタンプの中峰仁和氏がフジサンテレビの新人女性アナウンサーと強制的に肉体関係を迫ったというもの。新人女性アナウンサーの渡来波歌は行方知れずとなっていたようだが、明日に記者会見を開くので姿を現すらしい。
テレビの報道をじっと眺める賢治と蔵馬。賢治のスマホがずっと鳴りやまない。彼は社長室にあるタブレットを手に取る。谷村の話した事が本当ならドロップアウトの第2シーズン開始なんか吹き飛ばされるニュースになるだろう。
次々と続報が飛ぶ。中峰仁和氏は急激に芸能界引退を表明。そのまま空港へと向かったところで警察に取り押さえられたと速報が。
「おいおい。やばいじゃないか」
賢治も蔵馬もニュースに圧倒されるばかり。だけど彼はこう言った。
「蔵馬さん、ドロップアウトの第2シーズンの台本を書き換えられるか?」
「どのくらい?」
「この報道がどこまで広がるかをみて」
「ふふっ、つっこむ気だね? アンタ」
「問題あるか?」
「そういうところが大好きだ♡」
「じゃ。決定で」
そこで賢治はクリスタルエデン幹部に電話を入れる事にした――
∀・)はい。あの衝撃的な芸能ニュースをモデルに今回の話を作りました。読者の皆様にどう映るのか何かドキドキするところがありますが、ひとまず30日まで付き合ってください。次号。