~第7幕~
巷で「ホワイトパーティー」なる都市伝説が囁かれ始めたのはいつの事か?
芸能界や政界に経済界の大物が白い正装でバチッとキマってないと会場に入ることが出来ないとされるパーティー。それも深夜に開かれると言われる。
ただ、これには落とし穴がある。提供される飲み物に睡眠薬が混入しており、眠らされた参加者はその状態で辱めの写真を撮られてしまうのだ。噂によっては薬物犯罪の温床にもなっているとされるこのパーティーで弱みを握られた者らは主催者の恐喝を受けて毎月秘匿金をその主催者が運営する闇組織に払うのだと。
平成の世にまことしやかにオカルト雑誌でとりあげられた噂話。
だが令和の世にそれを実行しようとしていた男が。
もっとも、これはホワイトパーティーなんてものではない。
白い正装ではなくて白い服ならば何でもOKという条件。
ただし秘匿性はあって。あくまで招待生に他ならない。
元ヴィベックスのビッキーこと疋田天王は喉を痛めてしまって歌手活動を休止せざるを得なかった。そのなかで賭博などの誘惑があったという。元々反社会的組織との繋がりがあった彼はその繋がりで裏カジノを取り仕切ることをはじめる。その禁断の遊びに有名人から有名人の卵までありとあらゆる人間を誘っては参加させる。そしてそこで負けてしまい借金を背負わせる。ここまでは序の口で人によっては都市伝説のホワイトパーティーさながらの事をやっていたとまでされる。
その会場へ拳銃を所持して向かう男が1人。
会場の手前で彼らは呼び止められる。
「華崎さん!?」
そこに腕を組んで立っていたのは彼にとって親も同然の恩人である華崎鮎美。
「ヤクザの息子はヤクザの息子でしかないのかしらね……」
彼女はゆっくりと彼に近づく。
「だしなさい。時代遅れな真似をするな」
「いたっ!?」
彼女は片手で彼の片腕を掴み、もう片手で拳銃を取りだして投げた。
「ガアアァァァアアァァアッ!? はなっ!! 離して!!」
彼女は力強く握った手を離さない。
「こんなことをしなくてもね。私がもう手を打っている」
「華崎さん……腕が! 腕が!! 腕が千切れるよ!?」
しりもちをつくようにして彼は倒れた。そして彼女の顔を見上げる。
その目に映る華崎鮎美は彼の知らない華崎鮎美だ。
目には毒が写っているかのよう。そして彼女はいやらしく微笑みを浮かべる。
「何もなかったことにしてあげるから。何もなかったように帰りなさい」
「え……でも……」
「帰れと言っているだろう。聴こえなかったのか」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
彼は抜きとられた拳銃を残して走り去る。
華崎は銃を拾う。
「どこでこんな物を手に入れたのか。まぁ現場に来て良かったわ。後は宜しく」
彼女は振り向かないまま後ろにいる覆面の男に拾った拳銃を手渡す。
その地下で開催された違法なパーティーには厭らしい匂いが充満していた。
「おい、例のヤクザのアイドルが来るんじゃなかったか?」
会場の奥にある上座に堂々座っているのは人相がまるっきり変わった疋田天王。その顏には禍々しい刺青を入れている。
「感づかれてしまったのかもしれません」
「馬鹿野郎! 女遊びに耽る馬鹿だぞ! いくらでも呼びこめることは出来たに決まっているだろうが!」
取り巻きであるチンピラの頭を彼は強く叩く。いや殴ったと言った方がいいか。
その時に会場中へ銃声が鳴り響く。
1発。2発。何発も。
会場からは悲鳴があがって逃げだす人々にごった返した。
発砲は誰かを狙っているものではない。そう思った疋田だったが、彼がそんな事実に気づいた時はもう既に遅しだった。
覆面を被った黒ずくめの連中に彼は囲まれていた。
そして有無も言わせず太ももに銃弾が撃ちこまれる。
「グアアアァァァアアァァアッ!?」
転んで悶える彼に為す術はない。
「何だ!? 何だよ!? テメェら! 俺を殺しにきたのか!? 殺すなら!! とっとと殺しやがれ!! クソッタレ!!!」
彼はその異様な状況から自分にはもう先がないと覚悟をすることができた。
でも、そんな彼を見下ろす覆面の男は思わぬ言葉を告げる。
『これから君をネバーランドに連れてゆく』
疋田の顔に黒いビニール袋が被せられる。
その声は変声期をつかったものだからか、とてつもなく低い低音だ。それから口元が緩く歪んでいるのも一瞬にして見えたのだが――
「はっ!?」
ハロー世界征服のリョウジはポンズの家で目を覚ます。
「起きた?」
そこにいるのは優しく微笑むポンズ。
「あれ……おれ……どうして……」
「なんか酔いつぶれたようにやってきたよ? リョウ君、お酒弱いのにまた適当な女の子に飲まされて金を盗られたのでしょ?」
「いや……そんなのじゃ……」
ここでリョウジはテレビでとあるニュースが流れ続けていることに気づく。
『警察は本日、芸能事務所ヴィベックスの元所属タレント2名を薬物取締法から恐喝に詐欺そして違法賭博運営の容疑で逮捕にいたりました。主犯格とみられる疋田天王容疑者は行方をくらましており、警察は全国指名手配に指定しました。繰り返します。本日歌舞伎町にてですが』
ポンズは「今日はずっとこのニュースばっかりよ」とため息をついてテレビを消す。そして顎に手を当てて兄を見つめる。
「ベンくん、やめるって」
「えっ?」
「だからベンくんがハロセカをやめるって今日言ってきたの」
「そうなのか……」
「地元に帰るって。最近ほったらかしにしていたからね。無理ないよ。リョウ君はどうする? 中州に帰る?」
「いや……おれは……」
「私は続けるよ?」
「ポン……」
「だってたくさんの人たちがこんな私にも期待してくれているから。だけどさ、ケンニィの片割れでもあったベンくんがいないのに続けるのは嫌だな」
「それって」
「ハロセカは解散。私はヴィベックスに残るけどさ。リョウ君がどうするのかを聞いてみたいだけ」
「俺も続けるよ」
「へぇ」
「驚かないのな」
「うん。どっちでもおかしくないなって」
「この野郎……でも、さっき変な夢をみてさ……」
「夢? どんなの?」
「ヤクザから拳銃を買ってさぁ。おれたちの芸能人生を踏みにじろうとしている野郎にケジメをつけてやろうとした。つけてやろうとして……」
「何ソレ? 何ていう漫画? 何ていう映画?」
「漫画でも映画でもない。おれの夢さ。おれもポンみたいに役者やってみようか」
「いいねぇ。何事もチャレンジだねぇ。夢はいくらでもみてなんぼだよねぇ~!」
リョウジのみえないところに華崎がいた。
でも、彼がステージのうえに戻ると聞いて彼女は静かにその家をでる。
そっと微笑みながら。
本章におけるハロセカ編は一件落着かな?
まだ出てきますけど(#^.^#)
この話の真相は誰にも分かりません。当事者にしか。でも「夢」で済むならいいのです。
「夢」で済むならね。
次号(#^.^#)m9




