~第3幕~
ドロップアウトの渡米班が日本に帰国しだした頃。母国の芸能界は大変な事に見舞われだす。大手新鋭事務所のムーンライトがさらに事業を拡大したいとして上場企業の申請にのりだしたのだ。国民的女優として名高い蒼月しずくを筆頭に業界の大御所タレントの輩出、さらに音楽業界でも「Nasty guy」等の大ヒット曲でよく知られる奥沢芽生や喋れない女優で有名な宇良霧時世等も所属している。ギャロップ傘下の会社でありながら、将来的にはギャロップを超える有望株と期待される事務所だ。
所属タレントのクリーンさも他事務所にないほどのもの。
厳しいとされる株式上場もギャロップグループの力を借りて為す事ができた。
それから間もなく伊達賢治が声明をだしたのだ。
『クリスタルエデンのさらなる事業拡大を願ってムーンライトを買うよ』
ウィスキー片手に微笑んでプライベートジェットに乗りこむ彼はいつもの彼だ。冗談ではないのだろう。しかし、だからこそ誰もが反応するしかなかった。
この声明から間もなくしてムーンライト所属タレントが一斉に賢治を批判するコメントを連発。
『私は役者ですから。頂いた仕事に誠意を以て応えるだけです。だけど、今回のことは相手方の誠意がとても欠ける言動だと思います。私や私たちはただ推移を見守ることしかできないけど……少なくとも彼と関わることは金輪際やめます』
――ドロップアウトのご出演を辞退されるのですか!?
『うん。そうなるよね? じゃ。これで』
ムーンライト本社に入ってゆく蒼月しずくが突撃取材にそう答える。続けざまに奥沢芽生がSNSで「F※※※! Kenji Date!!」と禍々しい赤文字といっしょに中指をたてる写真をアップ。さらに首が斬られて生首になった賢治の写真までもあげた。おそらくAI生成したものであると思われるが、世間にそのインパクトを与えるのに充分なもの。
数日後、ヨウチューブのムーンライト公式チャンネルより社長の闇岡牛仁郎が社としての声明を発表した。
『このたびは世間を騒がせてしまったことをお詫び致します。クリスタルエデン社長様から敵対的買収で我が社を傘下におきたいとのことですが、おれ……いや、私も到底納得できるものでありません。身内でしっかりと相談させて貰った上で判断をすることになりましたが、上場を撤回します。だけど、弊社所属タレントである蒼月が言ったように伊達賢治氏とは金輪際関わる事を社員一同絶対に致しません……ふざけんじゃねぇよ!! クソッタレ!!! あ、すいません…………』
彼が表舞台に立つのはこれが初めてだったように思える。
スーツの着こなしがだらしなく好青年にまるでみえない。
そんな彼が表舞台で素の人間性をだすのに世間では嘲笑する者もいれば、バカ笑いをする者もいた。しかしてムーンライトの上場はなくなった。同時に同社がクリスタルエデンと関わることもなくなることを示した。
「丸くまとまったのか? コレ?」
高級ソファーに腰掛けながら葉巻を咥えてスマホを眺める藤崎武来庵。
彼は苦笑いを浮かべるが、彼にとってこのニュースには甘みすらあるようだ。
ドロップアウト第4章の撮影もはじまった。
そしてそれが始まって間もなくことは生じた。
主演の林萌香役である綺羅めくると本章で準主役であるPONZこと本田恩逗が撮影終了後に張り手し合ったと言うのだ。
事のはじまりは早朝からのロケ、現地入りするなり誰にも挨拶しないポンズが異様な雰囲気を放っていた。人から話しかけられても無視して模擬刀をブンブン振り回し遊んでいるのだ。
こういったドラマや映画のロケでめくるはズバズバと言うクセがありつつも、周囲のコミュニケーションを図りやすくするムードメイキングにも長けていた。その彼女が周りに「ありゃあ、ほっといていいよ。見て見ぬフリして」とまでも言うぐらいポンズに対して嫌悪感や難色を示していたと言う。
そんなめくるだったが、撮影終了後すぐにポンズの近くへいった。
「おい」
「………………」
「無視するなよ」
「………………」
「聞いているのか、お前。何なのよ? その態度は。さっき、私を殴っただろ? 誰が本気で殴れと言ったの? ココ、赤くなったじゃねぇか!!」
「…………うっせぇよ」
「うっせぇよじゃねぇよ!!! ごめんなさいだろうが!!!」
めくるはポンズの頬を思いきりぶった。すると、すぐさま彼女も同じようにめくるの頬へやり返した。
現場は騒然となったが、すぐに現場に居合わせた傑たちが仲裁に入ってことは何とか鎮静する。ただ、めくるとポンズの罵声は嫌に関係者の耳へ残る――
いやぁ……どうなるんでしょうね。これ。
ドロップアウトはキャスト変更してやっていくのか?
温かい目で彼らを見守ってあげてください(#^.^#)次号(#^.^#)m9




