~第1幕~
人気ドラマ「ドロップアウト」のそのニュースは世を湧かさない筈がなかった。
米国の新進系映像製作会社ID24との共同製作。
それは第2部のドラマが始まる頃に発表された。
ドレイクでの配信がやたら話題になっていたが、その背景にこんなサプライズなんかがあるとは誰も思っていなかったことだろう。
ID24はネット動画に映画製作と世界的な話題に強い。近年でいえばホラー映画「ビギン・ウィンター」が世界的ヒットを記録し、監督を務めていたイアン・ディクソンはその年のハリウッド大賞・監督賞を手に。
元々彼はコメディアンで俳優もやっていたクリエイターだ。しかし長年パッとしないキャリアから何か新しく挑戦をせねばならないと奮起。
ヨウチューブで世界的セレブのモノマネをする芸人達を揃えて人気楽曲PVのパロディをしてみせる動画を投稿。これがブレイクのキッカケとなる。
彼がお得意としていたブラックジョークの効いたコメディやホラーのショート動画も爆発的な再生数を年中誇り続けるように。やがてネットタレントとしての揺ぎない地位すら盤石なものにする。
遂に映画製作まで手掛けるように。映画「マッドネス・ファミリア」はイアン監督作品の1作目であったが、あまりにも過激な暴力シーンをみせる事で賛否を呼んでもいた。国によっては上映拒否すらも。だが、結果的にこれが大ヒット。米国から世界へ彼が執行役員にもなっているID24と共に彼の名を轟かせてくことに繋がる。
そんなID24が日本のドラマ製作に尚且つ日本の芸能事務所兼映像製作会社であるクリスタルエデンとコラボレーションするとはあまりにも目を見張ってしまう。
世間はそのニュースが広まると同時にクリスタルエデンが豊富なる資金を以てID24に持ちかけたのだと憶測を広めた。しかし後の伊達賢治のインタビューでID24のほうから話を持ち掛けられたことが明言される。
まさかの展開に業界は唾を飲みこむ。
全米の新進系メディア会社が日本の同業者に注目をしてくれたのだ。
でも、思えば伊達賢治もイアン・ディクソンもコメディアンが出自。そこから動画ビジネスに映画製作と同じような成功の道をそれぞれの国で成功させている。日本のソレと米国のソレでは全く違う規模な気もするが……
『元々日本には興味があったのさ。黒崎旭監督の手掛けられた「六人の侍」など若い時に何度も繰り返し観たもので。いつか自分がビッグネームになったのなら、日本を舞台とした映画を作るか日本の優秀なクリエイターと一緒に映画を作るかしたい。そうなった時にケンジ・ダテを知ったのさ。あまりにも経歴が僕と同じような感じで興味を持つのに時間をかけなかった。実際に会ってみると、通訳を入れずに英語ペラペラで驚いたもので。すごくアグレシッブさに富んでいたよ。僕は色んなプロジェクトの提案を持っていたけど、テレビドラマ(いまはネットドラマが主流だけどね)をやったほうがいいし、やりたいって彼から逆に提案をされて。今まで会ってきた日本人でもとりわけ気持ちのいい日本人だった』
真っすぐな瞳を輝かせて矢継ぎ早に熱く語る彼に嘘など1つもないだろう。
伊達賢治の野望は海すらも超えていった――
※黒崎旭(黒澤明監督をモデルとした日本の監督)
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