真実のはじまりーⅤ
アタッカーを操る人間? 敵、なのか?
でも、アマノさんを知っているようだし…。
謎の人物はアマノさんの正面まで歩み寄ると、バイザーを上げた。
「久しぶりですね。アマノさん」
そう言った人物は、僕と同年代くらいの少女だった。
アマノさんは厳しい顔で少女を見据えながら言った。
「ミホ…、やはりあなただったのね」
「あら、覚えていてくれたのね。もう遠い昔のことだから、忘れられたかと思ってた」
ミホと呼ばれた少女は、少しおどけたような口調で言った。
それを聞くと、アマノさんは、なぜか一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに毅然とした表情に戻り言った。
「手出しをしても無駄よ! 彼は私が絶対に守る。ブルーライフルもね」
「そう、でもアマノさんに何ができるのかしら? 私がいる限り、手も足も出ないんじゃないの? まだMコードは開発途中でしょうしね」
少女の嘲笑するような言葉に、アマノさんは何も反応しなかった。その代わり、素早く少女との間に距離を取り、防御スーツに装着されている小型発煙弾を発射した。
床に散らばった発煙弾がすぐに辺り一面を白煙で覆う。アマノさんはブルーライフルのケースを持ち、もう一方の手で僕の手を握ると、かろうじて開いている病室の入り口に駆け寄った。
「逃げられないわよ!」
少女の声が聞こえて、後ろを振り向くと、アタッカーの巨大なアームが追いかけてきた。
すると、アマノさんは僕とアームの間に素早く入り込み、低い体勢から回し蹴りを繰り出した。鈍い音がして、アームは3メートルほど横に弾き飛ばされた。
「早く、今のうちに!」
アマノさんはそう言うやいなや、僕を引っ張って階段を駆け下り雨が降りしきる建物の外に出た。ミホと名乗る少女もすぐ後ろを追いかけてくる。
振り返ってそれを見たアマノさんは、装着していたインカムに向けて「安全距離確認。発射!」と叫んだ。
数十秒後、大音響と共に複数の飛翔体がアタッカーに着弾、周囲にオレンジ色の炎が上がる。
これは、島の防衛基地から発射された中距離多目的誘導弾だ。タンデム弾頭を備えているため、電磁装甲を装備したアタッカーでも多少のダメージは与えられるかもしれない。
そう思って僕がアタッカーを見上げた瞬間、アタッカーから逸れた砲弾が病院の建物に着弾し、爆発を起こした。
「伏せて!」
アマノさんは叫びながら僕に覆いかぶさった。
限られた視界から爆風でこちらに瓦礫が飛んでくるのが見えた。そして、その瓦礫の一つが建物に背を向けていた少女の身体に接触した。思わず目をつむる。
「ミホ!」
アマノさんの悲鳴のような声が聞こえて、身体が軽くなった。アマノさんは「攻撃中止、攻撃中止!」とインカムに叫びながら少女のもとへ駆け寄っていった。