真実のはじまりーⅣ
「早く、立って!」
突然聞こえた声の方を見ると、アマノさんが立っていた。緊急時用の炭素繊維強化プラスチック製の防御スーツを着て、84ミリ無反動砲を構えていた。
僕は恐怖で震える脚でなんとか立ち上がり、ふらつきながらアマノさんの元へ近寄る。
「大丈夫? 怪我はない?」
「…うん、なんとか」
僕がそう言うとアマノさんは、微笑みながら、「良かった」と言って僕の頬に触れる。
厚いグローブをしているにも関わらず、その手はとても温かく感じた。
「わたしの後ろに回って!」
アマノさんがそう叫んだ瞬間、再度建物全体が揺れた。アタッカーが僕らと対峙するように目の前に起き上がったのだ。
胸の損傷部分からはまだ白煙が上がっている。そして、先程とは違い、アタッカーの躯体全体が発熱しているようで、数百メートル離れているこの場所でも熱を感じる。
「電磁装甲モードになったみたいね。HEAT弾も無力化されるか…」
アマノさんが独り言のように言う。
まずい状況なのは僕にもわかった。逃げるにしてもアタッカーとの距離が近すぎる。またもパニックになりかけた僕の目に、ベッドの傍らに置かれている銀色のケースが映った。
ブルーライフル?
なぜここにあるのか一瞬疑問に思ったが、今はそんなことを考えている時間はない。
「アマノさん! ブルーライフルがある!」
大声で叫んだ僕の声は、確実に聞こえたはずなのに、アマノさんは僕を見ずに無言でアタッカーに顔を向けていた。
「アマノさん!」
もう一度更に大きな声で叫ぶが反応がない。
なぜだ?
「ブルーライフル、彼に使わせないの? アマノさん」
急に誰かの声が周囲に響いた。まさか、アタッカーが?
僕はアタッカーを見た。躯体を打つ激しい雨が、電磁装甲による高熱ですぐに水蒸気となり、周囲は霧に包まれている。
その霧が一瞬揺らいだかと思うと、猛烈な空気の流れにかき回されるように流れた。そして、渦巻くような霧の中から、ジェットボードに乗った人影が飛び出してきて、僕たちの目の前に降り立ったのだ。
遮光ヘルメットを装着しているため、顔はわからなかったが、グレーの防御スーツのシルエットと声から女性だということはわかる。その人物は僕たちの至近距離まで歩み寄る。アタッカーは僕らを見下ろし静止していた。