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6 影の功労者

小さな俺の呟きにノアールが気づいて


「ああ」と頷く。



「子爵様は、クロイ辺境伯家をはじめ激戦地である辺境の領地に自領の特産物である牛や豚肉を無償で支援し続けてくれていた。それがなければ勇者が魔王を討つ前に、辺境はとっくに魔王軍に蹂躙されていただろう。」


さらっと告げられた驚愕の事実に驚きの声が上る。


「えええ!!!どういうこと!?何で俺知らないの!!ってか支援って、そもそもうちそんな事が出来る余裕なかったよね!?」


「逆だ!支援していたから余裕がなかった 」


ノアールは嘘も冗談もいわない。だから、それは本当の事なんだろう。


あまりの衝撃に言葉に詰まる


「…………、………そう……、…なのか…、…知らなかった………。」



クロイ辺境伯や辺境の領主へエイナー産の牛肉や豚肉が大量に出荷されていたのは知っていた。

クロイ辺境伯と父さんは学生時代の友人だから、その縁で買ってくれているんだと思っていた。


大量に積まれた荷馬車を見て『さすが辺境伯ともなるとお金持ちなんだなぁ〜凄いなぁ〜』 

なんて思っていたのに、まさかアレが全て辺境に当てた支援だったなんて……。


父さんとはほぼ毎日同じ時間を過ごしていた。


畜産は24時間体制だ。牛や豚が出産するのに備えて時には牛舎や豚舎に寝泊まりする事だってある。


朝から晩まで四六時中一緒にいたのに…………。


「………別にお前だけに黙っていた訳じゃない。子爵様は俺にだって何も言っていない。俺が知っているのは………………親父から聞いていたからだ。」


落ち込む俺にイケメン眼鏡が慰めてくる。有能なこいつの事だ、きっと自分で気づいて自分から確かめたに違いない。


「泣きそうだから優しくしないで………。」


ふぅ~っと息を吐いて父さんの顔を思い浮かべ、心の中で手を合わせる。


『田舎の冴えないただのオッサンだと思ってました。ごめんなさい。』



何も知らなかった俺にノアールは説明してくれた。


「もちろん最初は王家に支援を要求した。闘う騎士達の為、民のため、何度も使者を送ったそうだ。

だが食料を懇願する使者に、王家は金だけを持たせ自分達で調達しろと命じた。

激戦地である辺境まで来てくれる商人などまったくいなかったのに。


他の貴族達も、いつどうなるか分からない戦況の中で自領の蓄えを優先し、他領に渡すことを拒否したそうだ。


そんな時、子爵様だけが手を挙げてくれたんだ。王家にも他貴族にも秘密で、何年も何年も豚肉や牛肉を届けてくれた。


子爵様の送ってくれる良質な肉は、辺境を守る騎士達の身体を支え続けた。


子爵様の支援がなければ、どれほど多くの騎士が死に、どれほど多くの子供たちが父親を失っていたか分からない。


だから辺境に住まう者たちは皆、王家よりも子爵様に強い尊敬と深い感謝の念を抱いている。


……………………俺も含めて。」


ポロリと涙がこぼれた。


勇者な姉に感謝してくれているだけではなかった。


長年辺境を支えた父さんの思いが、廻り廻っていま俺を助けてくれるのだと知る。



『ありがとう父さん。』

心の中で、もう一度手を合わせる。


不肖の息子のせいで、王都への販路が断たれても文句ひとつ言ってこない。

子爵領はほぼ自給自足だから影響は少ないと言っても、きっと大変な事だろう。


食糧はともかく、建材や医療品など他から仕入れなければならない物資だってある。

父さんに甘えて実家のことは何ひとつ手をつけてなかった事を思い申し訳なさでいっぱいになる。



「子爵領なら大丈夫だ。」

顔を上げると俺の考えなんてお見通しとでも言いたげなイケメン眼鏡。


「エイナー産の肉は高品質で王都ではめったに手に入らない幻のブランド高級肉として人気がある。

王都の貴族共はブランド名は知っていても、産地がどこなのかなんてまったく考えないし調べもしない。


だから辺境に友好的な領主に手を回して、そこからエイナー産である事を伏せて流通させれば問題なく販売出来るし、魔王が討ち取られ辺境への支援が必要なくなったいまなら収益はもっと上げられるだろう。


侯爵領に来る前に大まかな筋道はつけておいたから、子爵様なら上手く回しているだろう。


………王家の手前、困っているように見せかけてはいるだろうが。」



「イケメン眼鏡愛してる!!!!!」


感動がおさえきれなくなってノアール飛びついた。


本当になんて俺の周りにいるやつらは有能で立派なのだろうか!


「またお前は!!気持ち悪い!!!くっつくなやめろ!!!」


照れなのか珍しく僅かに表情を崩すノアールが面白くなってきてチューっとほっぺたに吸い付く真似をする。


「うわっ!本当にやめろ!!!!放せぇーーー!!!」


「嫌だね!愛してるよノアール〜」



ノアールを羽交い締めにしてチューしようとした瞬間、バタンと勢いよく扉が開いて


「……………何しているのこの愚弟が。」


鬼の形相でこめかみに青筋を立てる勇者な我が姉ヴァレリアと驚いたように揃えた両手を口に当てるフォルティナ姫が立っていた。




ごめんなさい………3徹と驚きの事実に、テンションがおかしくなってたんですよ…………。


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― 新着の感想 ―
想像以上に王家と中央な連中が浅慮なのがわかってドキドキですね…今後の展開はどうなってしまうのか!
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