異界の狭間で
おじいさんのありがた~い おはなし。
「おお!蔵太、それに長次郎さんも。」
部屋に入ってきた二人を見て、龍馬は大声を上げた。
「無事だったんか。よかったのー。」
「いや、わしらもう死んじょる。」
「なんとか地獄には落ちずに済みました。」
「あっ、そうか。ここはあの世か。」
遭難死した池内蔵太、切腹した近藤長次郎がそこにいた。
「そう、ここは霊界だから捜してきたのよ。これから異界へ向かうわ。」
「異界とはなんじゃ。」
「異界は、この霊界と現界との狭間の世界。」
「はざま?」
「正確には異界と現実世界の更に狭間で、現実世界の時間の流れに沿って移動している世界。」
「もう、よくわからんぞ。」
「まあいいわ。とりあえずあなたが死ぬ120年程前の時間で吉宗公が待ってるわ。」
「で、四人っていったよな。後二人は? 武智さんか?」
「お楽しみ。あとは、異界で待ってるわ。」
そういうと、ヴィーナスは姿を消し、それに続いて内蔵太、長次郎、そして龍馬の順に消えて行った。
「ん?なんか格好が変わっとるぞ。おお、ブーツを履いちょる。」
「この世界は、遠い未来の人たちが思うあなた方の姿が具現化されるわ。」
「遠い未来の世界?」
「ええ、あなたは……、そうね。歴史上の人物人気投票をやったら、No1だわ。」
「そ、そうなのか。」
「まあ、お札にはならないけどね。」
「お札?」
「未来のお金。そうね、土佐だと板垣さん、長州だと伊藤さん、公家だと岩倉さんあたりはお札になるわ。」
「伊藤って、あの桂の下にいた少年か……。わしはつくづく金に縁がないのう。」
「まあ、それが人気の秘訣かもね。その代わりあちらこちらにあなたの像が建ってるわよ。」
「ほう。」
「桂浜、丸山公園、風頭山かな。」
「高知、京、長崎か。」
「そして龍馬さんのブーツも有名、ブーツの銅像もあるわ。」
「そ、そうなのか。」
「で、ここにいるのが、歴史に残る『海援隊』」
そこには顔の長い男を中心にギターを持った男が二人の三人組が立っていた。
「の名前をとったフォークグループ。」
「ふぉーくぐるーぷ? 飯食うのか?」
「まあ楽隊ね。まあ、そのくらい有名になるの。で、こっちが本当の海援隊。」
そこには、赤白の海援隊旗を持った、揃いの紅白の羽織を着た若者たちが立っていた。
「おお、謙吉さんと……陽之助!ここにおったか、なら話が早い。あのな陸奥よ……。」
「無駄よ。ここにいる四人はあなたと共に後の歴史の想像上の5人よ。」
「想像上?」
「創作上と言ってもいいわ。『カミソリ陸奥』はまだ別人ね。」
「カミソリ?陸奥はそんな武器を持っちょったんか。」
「切れ者ってことよ。」
「そうか。で、わしらは何をするんじゃ。」
「あのね。こちらの世界では黒船来航の後にアメリカ、ロシア、イギリスに分割支配される未来が待っているの。」
「そりゃたまらんぜよ。」
「そう。900年程前の歴史を変えた結果らしいの。」
「それを戻すんか?」
「そうね。実は元寇の時にも支配される未来があったの。」
「日本はモンゴルになっとったんか?」
「いえ、高麗の属国という未来と、明の遷都先かしら。」
「明の?」
「滅ぼされた明皇帝が、属国の日本に首都を移したの。」
「そりゃ、たまらんのう。」
「それを解決したら、今度は黒船の後ってわけ。」
「その解決策か?」
「ええ、吉宗公の代でいろいろ対策を練っているわ。」
「120年くらい前じゃな。」
「そう、多分、田沼さんや平賀源内さんあたりが協力することになるわ。」
吉宗たち異界組と、外交、交易、幕府の今後について意見交換した後、龍馬たちは戻っていくことになった。
「のう。わしの世界の陸奥と連絡を取ることは出来んかのう。」
「そうね。誰か異界の存在で、現界で実体を持って、霊界と行き来することができるものがいればいいのね。そんなものいるかしら」
「陸奥や三岡らにはわしの姿が見えんのじゃ。」
「はーい、おひさ!」
「おまんは?」
「葛葉さん。今までどこにいってたの?」
久々の葛葉登場。
詳しくは、3,5,6、7,8,9章で